掌話 頂きを見上げて 十一
曇天。光の枝葉を潜り抜け、英雄達は空を舞う。
「手早く終わらせますよ」
そう言って、マシロは空を蹴った。
真っ直ぐ飛翔する彼女に先んじて、矢と弾丸が放たれる。
無数に飛来する光の矢は、無数に降り注ぐ雷の尽くを打ち払い道を切り開く。
同時に弾丸は、サンダーバードにその迎撃を余儀なくさせ、演算を一部阻害した。
真っ先に辿り着いたマシロは、先ずは一振り、斬撃を放つ。
軽いジャブ。
飛来する斬撃を前に、サンダーバードも雷撃を放ち、それを迎撃。
立て続けに来る斬撃を次々迎撃する。
刹那、濃密な刃と雷の弾幕をすり抜けて、ミカの拳がサンダーバードを襲った。
しかし、そこは裏ボス。レベル150の雷操る魔獣の面目躍如か、即時に反応したサンダーバードの爪撃がミカの拳と衝突する。
一撃、二撃、十、二十——正しく雷鳴の如き騒音を響かせ、拳と爪が競り合う。
矢に弾、斬撃、拳、その全てを迎撃し続けるサンダーバードに、その影は迫る。
「ガラ空きぃ〜!」
「こっちです!」
背後より振るわれたのは、ナツナとシハルの槍の一撃。
敢えて声を掛け、翼の付け根を狙った一撃は、狙い通りの結果となった。
——閃光
轟音——
サンダーバードは全身から雷光を放ち、一条の光となってその場を離脱した。
雷撃を受けた4人は平然と宙に留まり、次の出番に備える。
遠く、敵のいない虚空に移動したサンダーバードは、即座に雷を振り撒いた。
現れたのは、雷で形成された鳥の魔物の群れ。
空を埋め尽くす勢いのそれらに加え、降り注ぐ雷の雨。
絨毯爆撃の様相を呈すそれは、しかし英雄達の足を止めるには至らない。
次々と降り注ぐ雷撃を、その魔力の流れを読んで矢と銃弾が迎撃する。
「雑兵狩りじゃー!」
「おー」
「お、おー」
「頑張ります!」
「皆、行くよー!」
飛び込んで来る雷の鳥、迎え撃たんと前に出たのは少女達。
ヒヨリが意気揚々と双短剣を掲げ、アキは弓に矢を番える。ノアは恐る恐る盾を構えながら鎚を掲げて見せた。
気楽、なげやり、臆病。そんな3人も今や、敵の脅威を認識ながらも気楽に構え、勝ちの道筋を見据えながらもぶっきらぼうに、恐れながらも武器を掲げる。
そこには確かな成長があった。
一方元から強かった者達はと言うと、ココネは一人気合いを入れ、リンカは飛べるピィコとテンテンと、飛べる様になった猿飛さんを召喚した。
こちらもまた変わらず。強敵を前にいつもの様に緊張し、またいつもの様に冷静だ。
「僕達も行くよ!」
「あれ、行かなきゃダメですかぁ?」
「何を面倒くさがっているんだ!」
「……新たな魔法を試す時」
遅れて少年率いるパーティーも前に出る。
セイトが先んじて空を蹴り、クリアは夥しい鳥の群れを前に口をへの字に結んだ。
マガネはサボる気満々のクリアの背を押して前に出て、マヤは怪しい笑みを浮かべながら杖を構える。
気負いも、気楽も無い、平静で安定したセイトとマガネに対し、めんどくさがりは相変わらずだが確かな見通しの目を持ってめんどうくさがるクリア、魔法大好きで研鑽を重ねるマヤ。
少年達もまた、飛躍的に成長していた。
複数の斬撃が、正確性を上げた矢が、魔法の矢が、次々と雷の鳥を撃ち落とし、接敵するまでにその2割を弾けさせた。
接近後も、レベル20はある速度型の魔物を、一振り十殺の勢いで殲滅する。
純後衛とてそれは例外で無く、複数張られたシールドで身を守りながら、単体攻撃魔法を無数に放ってそれを操り、鳥の群れを殲滅して行く。
大技を使わない省エネ戦法。格上足るボスとの戦場にあって、コレもまた修行。
「ふはは! 恐れ慄け烏合ども!」
遅参したメィミーも、シールドを無数に展開して防御を固め、魔眼を使って敵複数の動きを阻害する。
実力が上がって強者ムーブが板について来たが、未だ拙い念力による攻撃では鳥をちまちま処分するに留まり、戦果はあまり挙げられていない。
「さて……行くか」
「出撃ー!」
そんな声と共に鳥の群れを迂回する様に駆け出したのは、タクチームとアラン、そしてアヤチーム。
練度の高い彼等は、迫る少量の鳥を切り捨てながら、サンダーバードへ迫る。
高速で接近するそれ等へ、サンダーバードも雷を集中して降らせ——
「……やれるとでも?」
「愚かね」
——矢の激流によってその全てを防がれた。
牽制の斬撃が次々と降り注ぎ、大雑把な雷撃がそれ等を迎撃する。
僅か一瞬の撃ち合いの末、衝突。
サンダーバードは11人の初撃と次々撃ち合い、流石に敵わぬと見て雷撃となって離脱する。
次の瞬間、炎が弾けた。
「読み通りだね! へへん」
「はしゃがない」
キリカとクンの狙撃。
それはサンダーバードの雷身から漏れ出る雷に迎撃されるも、その身を炙って確かなダメージを与えた。
事実上の格上。
彼等の高い技量を持ってしても、サンダーバードの演算とエネルギー量、肉体強度を凌げる者は一人とていない。
一対一では決して勝てない相手だが……それでも刃が立つ程度には強い。
然しものサンダーバードも、そんな刃を突き立てて来る群れを前にしては防戦一方。
迸る雷の使徒と、嵐に舞う英雄達の戦いは、始まったばかり。




