掌話 頂きを見上げて 六
第四位階中位
「良い見せ方をするな」
「アイゼンバーンさんは優秀な人材だからね」
ふふんと胸を張るミヨに、俺は頷く。
全カード6枚がレベル25以上、最大でマリオネットの29と、3段階目こそいないが何より装備とアイテムが細かく管理、強化されてる。
こう言うのをそつが無いとか抜け目が無いとか言うんだよな。
指揮官としても中々。初動の放置は足の早い奴等を死兵にする事も考慮の内に、戦力を計りに行ったか。
情報の無かった想定外への対応も素早かったし、自爆技に対して構わず攻める様に指示は、死んでも大丈夫だと分かっていても即座に降せる物じゃない。
他にも、特段指示を出した訳では無いが、ゴーレムとドールの壁としての試運転、その耐久力や攻撃力、優位性、もといこの塔攻略に注目している多くのプレイヤーへのデモンストレーションを見事にこなしてくれた。
「モンスターカード組は粒揃いだから、どんどん声を掛けた方が良いと思うな」
「そっちはミヨに一任する、出来ればテルマも連れて行ってくれ」
「任せてっ!」
アイゼンバーンも強いが、スピリトーゾも注目株の1人だ。
先見の明と言う点では小糠雨と一は大いに評価出来るし、それ等に実質遅れた小夜鳴鳥も一点強化して追随し、この攻略ではまさかの活躍を見せた。
ソライロタケに至っては、第二陣でありながら第一陣ミドルに匹敵する戦力になっている。
言ってしまえば彼等は、モンスターカード方面での最前線。
是非引き込みたい戦力だし、モンスターカード使いは召喚術や従魔術みたいな経験値問題も無い。素行も良好で利もあるとくれば、協力体制を築くのにそう苦労も無いだろう。
未だ未熟なテルマとミヨにはもってこいの交渉相手だ。
功労者を労ったりあれこれやりつつ動画を早回しで見ている内に、前線に追い付いた。
準備を完璧に整え、階段を登り始めたプレイヤーの後に付く。
レベル50程度のハイランカー、第一陣エキスパート組の12名。
重装6名のフルパに、バランス型の重装1名、軽装2名、準後衛3名のフルパーティー。おまけに、完全では無いがモンスターカードでゴーレムとドールもあるし、各々の補完をするモンスターカードもある上強力なフードバフ付き。
対するは、事前情報によるとゴーレム21体。4つの魔剣持つ巨兵と魔剣持つ兵士20体だ。
魔剣の種類は基本4属性だけで、使って来る魔術は各種属性付与、追跡能力の高いアロー系4本、威力の低い扇状範囲攻撃の3種。
事実上21の剣兵であり21の弓兵だ。
また、ボスは魔剣を打ち合わせて上位属性の魔法を放って来るらしい。
それぞれ、火と風で雷、火と水で雲、火と土で鋼、風と水で氷、風と土で錆、水と土で木。レーザーやら回復やら煙幕やらで、色々と厄介な効果を持つ様だ。
果たして、向かい合った巨兵は、人の3倍はある巨躯だった。
2階を見上げる様なそれに、やはり聞くと見るとでは全く違うなと頷く。
剣は人の身長を優に超える巨剣。
ただ振るうだけでもとんでもない威力であろうそれに、魔法が付随して更にとんでもない事になるのは明白。
見ただけで圧倒される気迫が、それにはあった。
「……」
無言で前に出たのは、寡黙な重装戦士。
大盾と戦鎚を持ち、大きな背中で味方を叱咤する。
本人にその積もりが無くとも、怯んだ様子を見せず進む事は、それに続く者達の導となり得る。
言外に作戦通りを伝えるリーダーに、メンバーは従い追随する。
サモンの声と同時に次々とモンスターが召喚され、戦列が形成されて行く。
6人の重装フルパーティーが中心でボスを抑え、レベル10やそこらのやや小さいゴーレムやそれを補助するドールが左右に壁を展開、残りの1パーティーが右、召喚される各々のモンスター達が左から攻める鶴翼の陣。
戦場を破壊出来るボスを抑え、回り込まれるのを防ぎつつ左側は申し訳程度の時間稼ぎ、本命の右を攻める1パーティーで早急に雑魚を殲滅してボスを囲む。
人数が少ない手前、どこも重要な役割だ。
例えばボスを受け持つパーティーがまともにボスのタゲ取りが出来なかったら? 右翼のパーティーが雑魚を殲滅する前に左翼が壊滅したら?
事前の情報から策定した作戦も、一つの量り間違いで全てが瓦解しかねない。
開戦。
敵が次々と剣を振り、魔法の矢が降り注ぐ。
飛来するそれは、ゴーレム達の構えた木の大盾に阻まれる。
所詮木とは言え、大きな盾だ。壊れ切るまでに接近出来るだろうし、壊れてもゴーレム自体が盾となる。
一方巨像の振るった刃からは、火や水、風に石礫と広範囲の攻撃が放たれ、重装兵達を襲う。
流石にこの程度では大したダメージにはならないが、接近までに削れるだけ削るのが敵の狙い。
対抗策として手製の手投げの魔法爆弾の類いを投げ込んでいるが、敵もゴーレムとあっては大したダメージにも妨害にもならない。
接近する頃には、重装兵は追加体力ゲージの2割、ゴーレム達は盾が半壊する程度のダメージとなっていた。
——衝突。
初撃の敵兵20の斬撃で全24体ものゴーレム部隊の内きっかり20体の木盾が両断。ゴーレムの棍棒が敵兵の拳と衝突し、僅かにダメージを与えた。同時にドールの槍が突き込まれ、剣を抑えにかかる。
しかし、返す刃でドールが押し返され、その隙とも言えない隙に振るわれたゴーレムの棍棒が剣と衝突、今度は互角に鍔迫り合いを始めた。
長くは保たない。
膂力が同じでも、技のキレや頑丈さ、武器の質で劣っているが故に。
一方巨像との戦闘はと言うと、2本の横薙ぎに振るわれた斬撃を2人の重装兵が受けて押し返され、振り下ろされた2本の斬撃を他2人が受けて押し込まれる。
剣戟は衝突時にそれぞれの属性魔法を発動させ、重装兵達は武技を使って受けたにも関わらずHPを2割程も削られた。
防御特化の重装兵達が防御武技を使ってこの威力。軽装がまともに受けたら7割くらいは一気にとられるだろう。
一応MPは減っている筈だが、ほぼ通常攻撃と言っていい物がこれだ。上位属性攻撃が来れば、重装兵とて大ダメージは免れ得ないだろう……対策は勿論ある訳だが。
重装兵やゴーレム達が奮戦する中、右手側から攻めかかったプレイヤー達は出し惜しみなく武技を放つ。
重武装の大槍持ちが突出して敵1体をぶっ飛ばし、それに追い付いた軽装2人が敵2体と斬り結ぶ。
準後衛の3名も、普段はアイテム投げたりモンスターの指示を出したり魔法で援護したりとやっている様だが、あまりやらない接近戦に繰り出し、前衛と鍔迫り合いしている2体へ攻撃を仕掛ける。
プレイヤーが雑魚と戦っている内に、相対する敵の数が減ったゴーレム達は、流石高知能AIと言った様子で、プレイヤー達を守る様に戦列を変えて行く。
指示を出さなくてもある程度欲しい動きをしてくれるから良いな。
余計な動きを殆ど全くしないのは、作戦を理解しているからだろう。
右翼が安定して戦いを進めている間、左翼は青い粒子の舞う激戦区となっていた。
壁役のゴーレム達は、他のモンスターの活躍でどうにか壁を維持している。
モンスター達はその殆どがレベル10代であり、数は24。
大半が広いフィールドにおける遊撃性能や補助能力を買われており、種類は鷲や鴉、犬、猫にマリネットやドール、後は猫に似たニージャと鷲に似たウォンクル等くらい。
殆どが小型であり、背の低い者も飛んでいる者も、見事なまでに一刀で斬り捨てられている。
誰かがやられたりゴーレムとの戦いの中で剣を振った隙に喰らいつき、どうにか時間稼ぎが出来ている訳だ。
ボス討伐に向けて強力な専用武技を温存し、MP消費を抑えている現状、戦局はどこも長く保たないだろうな。




