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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十六節 エルダ帝国の攻略

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掌話 頂きを見上げて 三

第四位階下位

 



「これで間違いないな」



 そう言って微笑みながら、大剣士は槍を差し出した。


 手に持つその重量に、1日も経っていないのに懐かしさを感じた。

 もう戻って来ないものだと思っていただけに、涙が滲んだ。



「コウキさん、ありがとうございます」

「おう、俺ってか黒霧さんだし有料だけどな」

「それでもです」



 目元を拭いながら、頭を下げる。


 コウキさんは肩を竦め、礼は黒霧さんになと言って立ち去った。





 皆にばしばしと背中を叩かれ、色々と声を掛けて貰いながら、喫茶店を後にする。


 今日に備えて臨時で組んだパーティーとは言え、本当に良い人達ばかりだ。



 塔の迷宮がある広場に着くと、そこには沢山の人で溢れていた。


 元々ボスラッシュで、事実上他のダンジョンをクリアしてから挑む様なダンジョンな為、人気は少なかったんだけど、そこに屯する多くは大剣士の派閥所属者で、他にもイベント時には指揮下に入ると言う人やら別に指揮下には入らないけど攻略状況が見たいと言う人もいるんだろう。


 ライブ映像では第3フロアの鮫とプレイヤーの戦いの様子が流れており、出番がもう直ぐである事を示していた。


 迷宮入り口へ近付くと、声援が聞こえて来る。


 振り返ると、そこには見知った顔や装備の人達。

 それを皮切りにあちこちから声援が響く。



「頑張れー!」

「第4フロア、ファイトー!」

「俺達の分も頑張れ!」



 つい、そんなエールに応えたくなって、武器を持ち上げると、声援がより大きくなった。


 少し恥ずかしかったけど、皆が同じ様に武器を掲げて、塔へのワープが始まる。


 舞台が光りを放つ中、見回した広場の中で、第二陣から参入した姉のゆずと妹のれもんがニヤニヤしているのを見た。


 恥ずかしっ。





 空腹ゲージがマックスになるまで食材系アイテムを食べ、フードバフを盛った。

 無いよりマシの攻撃力、防御力のバフに、スライムゼリーで体力を倍化、かにかまもスライムゼリーも今となっては安いから、十分な数を用意するのに大した額では無い。



 全ての準備を終え、第4フロアのボス、巨大な木と向かい合う。


 基本的な役目は単純。土神の残影の時と同じ様に、ひたすらにプラントドレインの武技を使い続ける事。

 プラントドレインの回復量は敵次第だが、土神の残影でもプラントドレインを繰り返せるくらいには回復したし、ここのレイドボスがあれ程に強いと言う訳でも無いと思うから、何とかなる筈!


 盾役を前に、ボスへにじり寄る。


 事前情報によると、敵の攻撃パターンは主に5種類。

 根っこによる攻撃と枝による攻撃が基本で、後はそれらに捕まった場合の締め上げ攻撃、花を咲かせる事による何らかの毒花粉散布に、その後の種発射。


 後者2つに関してはMPを大きく消耗するのか2度しかして来ないらしいが、毒、痺れ、幻覚の状態異常を与えて来る。

 咲く花の色によってその花粉の特性が分かるらしいが、そんな物関係無いくらいには咲くので全部回避か全部ポーション飲むかの2択の様だ。


 一方種による攻撃は、残影が同じ様な攻撃をしていたらしいのだが、残影のそれと比べて当たっても大してダメージが無い上に命中率も低いとの事だ。

 その後の発生するモンスターも、残影の時に出た奴とは比較にならないくらい弱いらしい。


 いやー……びびってないで上行ってたら良かったかな、死んでたかもしれないけどワンチャン核に攻撃出来てたかもしれないし。



 そんな事を考えつつも、不気味に沈黙するボスへにじり寄る。


 4名の盾役が根っこの射程圏内に入ったその瞬間、根っこが叩きつける様に振るわれた。

 やや下方から振るわれたそれを、盾役が防ぐ。


 鈍い音が鳴るが、流石は盾役として前線で戦って来た4人、びくともしない安定性。

 ここで申し訳程度の傷石や、屑魔石で作った爆弾を投入し、大技の誘発を試みる。


 暫し投げ物で様子を見るが、敵に動きの変化は無い。

 ダメージ量が低過ぎるのかもしれないが、このまま遠距離からボスを削り切れる物資は無い。


 散開の指示を受け、事前に決めていた3人組で四方へ散る。


 対単体ボス用の単純な包囲作戦だ。

 大剣士の情報によると、明らかな非人型のボスも、四方八方から攻撃されると反応が遅れる事が分かっている。


 盾役がじわじわと近付いて攻撃を受け、それ以外が細い根を切り捨てて僅かにでも敵の攻撃範囲と体力を削って行く。

 俺もプラントドレインで細い枝を吸い尽くし、着実にボスを削る。


 外で見ている人にチキンとか言われてそうだが、それでも螺旋を描く様に進み、根を切り枝を切る。


 少しして、それは起きた。


 幹が大きく曲がり、蕾だった花が開く。


 次の瞬間、幹が大きく回転し、花粉が大きく飛び散った。


 こんな派手に飛ばすのか!


 驚きながらも後退し、各種解毒ポーションを飲みながらステータスを見て、状態異常が治るのを確認した。

 そのまま盾の後ろに隠れ、飛来する大きな種から身を守る。


 小さな音が何度か聞こえた所で、取り出したのはモンスターカード。

 殆どが第2進化まで進んですらいないが、1人につき2枚、合計24体のモンスターが散らばった種に攻撃し、それが終わり次第幹へ突撃して行く。


 今が攻め時。


 根や枝にモンスター達が捕まったり攻撃を受ける中、人は急いで幹へ接近する。


 槍使いは一足先に武技を使う。



「クイックランス!」



 唱えるや、武器が光を放ち、ほぼ自動で一瞬の内に幹へ到達、そこへ槍が突き刺さる。

 明らかに槍よりも大きな穴が穿たれ、技後硬直。


 その間に攻撃されないかひやひやしたが、あちこちの対処で手一杯か、特に攻撃されず、他のメンバーも幹へ到着した。

 あちこちで次々に光が放たれる中、俺もダメージ重視の武技を放つ。



「ラッシュストライク!」



 高威力武技のストライクを3連発も打ち込む基本武技。

 クイックランスには劣るがそれでも大きめの穴が3個穿たれ、技後硬直。


 その間に、幹が大きく曲がった。


 大技の前兆だ! こんなに早くやって来るのか!?


 硬直が解けるや急いでバックステップするも、慌て過ぎたか尻餅を付き、次の瞬間目の前で幹が大きく回転した。


 硬直が長いからか退避が遅れた大型武器持ちが数名弾き飛ばされ、花粉が辺りに撒き散らされる。


 解毒ポーションを飲んだばかりだから花粉は問題ないけど……。


 さっと辺りを見回し、枝や根に捕まっていたモンスターが遠くへぶっ飛ばされていたのを確認した。

 無事じゃないとは思ったが、捕まってる状態で大技をくらうとあんなにぶん投げられるのか……。


 中にはその一撃でHPを消し飛ばされた奴等も多い様で、あちこちで青い粒子が散っていた。


 的が少ないから、集中砲火が来るぞー。


 若干ヤケクソになりながらも頭を守る様に腕を持ち上げ——


 ——次の瞬間、体のあちこちにそれなりの衝撃が響いた。



「くっそ……」



 HPバーはスライムゼリーの分が4割減ったくらいだが……レベルが上がったりスキル上げたりしてる分耐久力も結構上がってるから、レベル10代とかだったら死んでたかもしれない。


 武器を持ち直し、迫って来ていた根や枝にびびりつつも、クイックランスで幹へ急速接近する。


 どの道離脱が出来る距離じゃないなら、せめて少しでもボスを削る為だ。

 だが、幸いな事に技後硬直中に攻撃は無く、復帰したメンバーもあちこちで武技を振い始めた。


 その内にモンスター達も前線に復帰し、種のモンスターを殲滅して行く。


 俺はその中で、苗になったモンスターや幹、または伸びて来る枝にひたすらプラントドレインを放ち続け、遂に——



 ——ボスの巨体が青い粒子になって弾け飛んだ。



「おわっ!?」



 幹に張り付いて攻撃を繰り返していたメンバー全員が、突然の足場の消失に驚き落下した。

 派手に倒れ込む人もいれば、俺みたいに運良く足から着地してよろめいただけの人もいる。


 倒れた人を起こしに行きつつ、ぱっとセルフチェックをする。


 HPは、青の追加バーこそ無くなっているがマックス。

 確認してる余裕が全く無かったけど、プラントドレインで吸収しまくってたから減る側から補充出来てたんだろう。

 その証拠に、他のメンバーは7〜8割程度までHPを削られていた。


 俺が無事な訳が無い。結構あちこち痛いし。


 ドロップした戦利品は、ボスの小枝や根に皮、太くて曲がった枝、紫と白、黄の花弁に葉っぱ、拳大はある種。

 魔石が出なかったのは残念だけど、ボスがデカかったからかドロップアイテムの量は多い。


 12人で分配しても十分な額になるだろう。


 後は、次の出番があるかもしれないから少し待機して、次のフロアが攻略されたら戦利品の換金と分配をしよう。


 今の時間は……黒霧さんが混むまでまだ時間があるし、行くとしたら空いてるであろう直ぐ近くの喫茶店かな。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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