閑話 ゴーレムファイト! 三
アルティアの第二試合の相手は、ミルクリス・ターザハルダ。
再転送された先で、2人は向かい合う。
「アルティアちゃん! よろしくね!」
「はい、よろしくお願いしますね、クリス」
ニコニコと微笑み握手した後、離れるに際してアルティアはミルクリスの服装を1秒掛けてじっくりと見た。
首には食い込んで見える革の首輪。四肢には明らかに締め過ぎのベルトが付き、手と腰にはチェーンのパームカフとベルト。
元々血色も良くないし、人の姉妹事情に口を出すのは何だけど、このみお姉さんの趣味には自重して貰う様に言わないといけませんね。
そんな本人が聞いたら全力で否定しそうな事を考えながら、アルティアは配置に付く。
フィールドが展開され、修理と補給を終えたゴーレムが相対する。
現れたゴーレムに、アルティアは目を細めた。
黒い結晶の本体に、黒いぼろ布とベルト、鎖。それから浮遊する4つの結晶体。これを……ランク2+に?
カウントダウンが始まる中、アルティアはじっとそれを見詰める。
おおよそ40㎝程度の大きな結晶。
結晶は極めて澱んでいた。それは純度が低い事を示唆している。
だが、それが魔力結晶であるなら、サイズから見てどんなに品質が低くとも4+はあるだろう。
然らばそれは魔力結晶では無い。
そう仮定し更に良く結晶を見る。
結晶に見えるそれはガラス。そうすると、内部は空洞。不純物に見える黒い粒子は一粒一粒が魔力結晶か。
そのランクに対する膨大なエネルギー目算量に、アルティアは目を見開いた。
確かに、容器型の魔力タンクにすれば、2+の範囲で莫大なエネルギー量を用意出来る。
だが……それを有効利用するには魔力吸収のラインを酷使するし、耐久力の面でもリスクが大きい。
続けてアルティアは装備に注目する。
隔たれたフィールド内故に術式は分からないが、ぼろ布の様な物にベルト鎖類は機能的には十中八九、浮遊や感知、硬化系能力。
武器はおそらく……ガラスの四方と中心、5箇所に嵌められた円筒状の物体だ。
真っ暗で見えにくいが、それ以外に指向性のある物は精々ガラスの先端くらい。先ず間違いなく武器であろう。
おまけに、周囲に浮く浮遊結晶は、ゴーレム本体を模倣した半自動攻撃装置。
数が4個しか無いのは、ゴーレム本体の指揮能力限界による物だろう。
果たして——カウントダウンが0になると共に、アルティアのゴーレムは、今までと同じ動きをとった。
後方へ飛び退り、銃を構える。
そこへ飛来したのは、黒い光。
下がるゴーレムを追って放たれた光は、ゴーレムの片足へ当たり、鋼の輝きが暗く澱む。
コアは胴の中心にあるためダメージは免れたが、もう片足はまともに使えないだろう。
光の直撃を受けながらも、ゴーレムは弾丸を放った。
弾はやや狙いから外れたが、ガラスのゴーレムのマントへ着弾、爆発する。
ガラスが砕け散るかと思われたそれはしかし、ガラスのボディに罅を入れるに留まり、その罅もまたじわりと回復を始めた。
追撃。浮遊結晶による2射目を横に飛び退きながら放った弾丸は、拡散された黒い光に呑まれてそれを貫き、再度マントへ当たる。
しかし威力は大きく低減され、治り始めた罅を深めるに留まった。
浮遊結晶は魔力切れを起こしたか、力を失い落下して、地面を転がる。
続けて3発目。風の弾を放つや、結晶ゴーレムは四方の円筒から拡散光を発射し、同時に中央から集束光を発射した。
風の弾丸は弱体化しながらも罅を更に深め、黒い光はゴーレムの腹に当たった。
黒い侵食は大きく広がり、コアのある胴体に到達してバリアを1割程度削る。
4発目、水の弾は、今度は5個全てを拡散光にした黒い光に阻まれ、罅割れをほんの僅かに進めるに留まった。
最後の5発目、雷の弾丸は、中央の拡散光を受けながらマントの防御を貫き、ガラスのボディに穴を穿つ。
内部を迸る雷撃が、ガラスゴーレムの体力を2割削った。
対して、四方から放たれた黒光は、少しの拡散を得て4発全てが体の端に当たった。
威力が低い事もあり、侵食によるバリアへのダメージは1割程度。
これでダメージ量は概ね同率。
尚放たれる黒い光に対し、アルティアのゴーレムは、銃を盾にスラスターを起動して一息に接近。
ここぞと放たれる光の束を受け切り、バリアを4割も削られながら、ガラスのゴーレムへ剣を叩き付けた。
弱体化しているとは言え鋼のゴーレムの膂力。それを既に割れているガラスで受け切る事は出来ず、ゴーレムはバラバラに砕け散る。
黒い砂や小石程度の魔力結晶が飛び散り、円盤状の装置に取り付けられたコアが転がり出た。
剣を振り上げた次の瞬間、砂山に埋もれていた円筒から黒い光が迸る。
光は腕に着弾し、剣の狙いが大きくずれ、円盤の縁を打ち付けた。
跳ね上がった円盤は4つのパーツに分離し、今度こそコア本体が地面を転がる。
その攻撃を阻む物は、もう何も無かった。




