第37話 無い物は導に
第八位階下位
さて、それでは再度、整理しよう。
神獣ザングランスとは何か?
形骸化し、風化して、名を無くした太陽神の眷属だ。
同時に、太陽が沈み、また昇る事による、生誕、転生、不死、黄泉等の神性に通じている。
また、蛇故に、脱皮の様子から転生。砂中から獲物を狩る様子から、見えざる物を見る心眼、地底より出でる黄泉の遣いの性質を持っている。
更に、ザングランスの功績として、大規模な砂嵐を砂塵ブレスで吹き飛ばす事から、世界を覆う暗闇を打ち払う者、と言う性質もある。
つまり……風化して名前こそ消え去った割に、ユース神の神格は今日までしっかり残っていた訳である。まぁ、ザングランスと言う名前からもそれは分かる事だが。
と言う事で、早速神話を形成する。
先ず、神獣ザングランスはユース神の眷属である事とする。
元々太陽神の眷属なので、途切れた説話を捏造すれば容易に繋がる。
これだけでも、ユース神もといアニスからザングランスへ加護を与えさせるには十分な縁となるが、それらの繋がりをより一層深める事で、加護の受容力を更に高めて行く事とする。
次にやる事は、ユーシアとザングランスの関係整理だ。
そも、当の2人の関係は、元は巫女と神であり、今は義母と義娘である。
なので、ユーシアはザングランスが人に授けた、神を降ろす器である事にする。
これでユーシアはザングランスの信徒、ザングランスの神子、ザングランス自身の3つの性質を獲得する。
一方蛇達はと言うと、此方はザングランスの実子である為、神子の性質だけを持つ……訳でも無い。
観測データから分かる事だが……蛇達はザングランスの単為生殖で産まれた個体、即ちクローンである。
単為生殖は爬虫類で稀にある事だが、今回の場合は……ユーシアが持つ絆を結ぶユニークスキルで、ユーシアがあまりにも可愛らしい我が子に感じた結果、つい産んでしまったのだろう。
まぁ、再生系の力を強く持つ者は、理論上単為生殖くらいやろうとすれば出来るので、今回は母性が暴走した結果である。
ともあれ、蛇達はザングランスのクローンであり、ザングランスの神子とザングランス自身の2つの性質を持っている。
その辺りを神話に組み込む事で、縁はより強固に繋がり、加護を一層深く受け止められるだろう。
最後に、それを終末神話、白い夜に組み込む。
シナリオはこうだ。
ユース神は、真実の瞳で見える人の悪意、そのあまりの多さに瞳を閉じた。
ユース神が眠りに付いた事で、その半身であるグァラン神が目覚める。
ユース神の眷属は善身と悪身に分かたれ、悪身はグァランの眷属として、善身はラノンの勢力として、白い夜に身を投じる。
そう、今、正に、この時こそが、白い夜の詩片を紡ぐ時。
太陽と月の神、ユーグァランス神の善身、ユース神の眷属として、ユース神の加護を受け、今こそ終末を越える時なのだ。
……とまぁ、良い感じに纏めた所で、一つだけ、宙ぶらりんになっている要素がある。
どうしても白い夜に組み込めない性質を、ユーシアが持っているのだ。
妖精の王族、ドーラとグオードの義子と言う性質を。
ユーシアはザングランスの子であり化身だ。それ故に、ドーラとグオードの子であると言う性質を受け入れるには、一手間加える必要がある。
そこで、折角だからその辺りも含め、新たな、大きな神群を形成する事とする。
昨日の今日で消耗も大きいが、ちょうど良い機会だから多少疲労しても推し進めよう。
先ず、ドーラとグオードだが、ファニエも交え、捕獲後は妖精郷に迎合する。
格としてはリェニと同等まで上げるとして、そこで神話を紡いでも良いが……一つの指標となったサンディアの神話と比較すると、どうしても勢力が足りていない。
よって、妖精の群れにはエルフを組み込んで行く。
エイジュとエルミェージュを入れれば、規模はそれなりに上がるからね。
とは言え、トップ層が8人じゃまだまだ足りないので……聖樹の根元でありエルフ氏族の原点たるルメール、森海の主を中枢に据える。
そうする事で、妖精郷、森海の主、白い夜の神話を繋げる事が出来る。
ルメールの種族は天殻樹。
これは元より神樹の類いだ。
天を覆う大樹の性質を持つが故に、天の星々を呑み込む事が出来る。
白い夜を天覆う大樹の暗幕に落とし込み、こうも綺麗に支配出来るのは、ルメールをおいて他に無い。
おまけに見えざる巨人ナァトと見えざる小人ヌォンの主、ネィトとノーン、それからグァラン・ラノン・ララースァことララの3体が樹精なのもシナジーがある。
描いたシナリオは、複数の世界を内包する神樹、ルメールの神話。
内包する森海には妖精郷含む複数の世界を有し、ルメールの恵みの元世界は栄えていた。
白い夜の舞台はその辺境、恵みの届かぬ大地だ。
ユース神とラノン神はその地に恵みを齎らす為に遣わされたルメールの眷属神、どちらも生命の光の神であり、成長を与える太陽の神と休息を与える月の神。
それが辺境の荒んだ人々の心に触れて歪んでしまった事で、白い夜は始まる。
これで、ザングランスが妖精郷の者と縁を結ぶ条件が整った。
世界の追加は追々やって行くとして、早速白い夜の詩片を紡ごうか。
『さて、アニス、始めようか。ユーシアに加護を』
『おし! ……どうやんの?』
『神格解放して力をグッと手に込めて弟子を撫でる様に流し込むんだよ』
『おぉ! それなら出来そう!』
まぁ、縁繋いだのはそう言った粗を受け入れ易くする為だから、何の問題も無いね。




