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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十六節 エルダ帝国の攻略

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第27話 いたぶる様に

コロナって更新が遅れました



第四位階中位

 



 後ろで、この世の物とは思えない様な轟音が響いている。

 その衝撃は暴風となり、まるで嵐が吹き荒れるかの様に木々を揺らしていた。



「急ぎ、影響範囲外へ!」



 竜翼の皆は小さいから吹き飛ばないか心配だったが、そこは人間より遥かに高い身体能力を持つ強種族。

 私の方が風に煽られてよろめくあり様だった。


 老人や子供達が里で暮らしているのも、こう言う万が一に備えての事。

 会いに行くのに不便だろうと思っていたが、先人達の危機管理には頭が下がる思いだ。



 しばらく走っていると、不意に先頭を進むドーラ様が止まった。



「っ!」



 ドーラ様の双剣が迸り、木々と茂みを吹き飛ばす。


 開かれた視界に見えたのは、四足の肉食獣、フィシンの姿。

 荒地にしかいない筈なのに……!



「荒地の魔物っ、百はいますッ!」

「迎え撃ちますか!?」



 剣を抜きながら問う私に、ドーラ様は前を指差した。



「敵の狙いは足止めの筈、此処は私が残ります、皆は里へ……!」



 確かに、フィシン程度の群れなら、ドーラ様お一人で事足りる。

 足こそ早いが一体一体は弱く、数が多いだけの獣。ドラジェの民の身体能力なら、一体くらい子供でも対処できるのだから。


 それが100体ともなれば十分脅威だが、ドーラ様ならば難なく殲滅出来るし直ぐに追い付ける。



「ドーラ様、御武運を!」

「直ぐに追い付きます、迷わず、里へ」



 大丈夫、大丈夫。


 その筈なのに、背筋を這い上る様な不安が、いつまでも消えず付き纏う。





 ドーラ様と別れ暫く、それはさも当たり前に現れた。



「シャッ」

「ッ!?」



 弟妹達の放った砂のブレス。


 それは茂みを貫き、フィシンの群れが転がり出た。



「なっ」



 驚くのも束の間に、直ぐに剣を抜き放ち、倒れるフィシンの首を落とす。

 返す刃で、飛び掛かって来たフィシンを切り捨て、続けて正面から来たフィシンの頭を割る。


 勢いは殺せず、死んだフィシンが腹部に直撃したが、よろめくだけに収めて追撃。


 次また次と襲い掛かって来るフィシンに、非戦闘員の皆も槍を持ち、防御に徹して迎撃している。


 襲撃の規模は思いの外小さかった様で、殲滅は直ぐに終わった。



 ドーラ様がやられた訳ではないだろう。今も後方では地鳴りの様な音が響き、戦いは続いている。


 恐らく、別動隊だ。



「負傷者はいますかっ、飛べない人はっ?」



 辺りを見回すが、特に怪我人はいない様だった。

 人だったら負傷者の何人かは出ただろうが、流石は竜翼の民。



「急ぎましょう!」





 何度かの小さな襲撃を退け、森を駆けた。


 敵の規模こそ小さいが、毎回足を止め、怪我人を確認し、負傷者が出れば応急処置を施す。


 ゆっくり、疲労が蓄積して行く。


 ゆっくりと、怪我人が増えて行く。



 遅れている焦りが、弱っていく不安が、溜まって行く。



「はぁ、はぁ……皆さん、もう少しです! 頑張って!」



 もう少し、もう少しだ。


 里には何度も行っている。めじるしは通った。


 もう少し、もう少しで——



「——っ!」



 刹那、変わらぬ奇襲を防いだ、と思った次の瞬間、衝撃が全身を襲った。



「ぐっ!?」



 茂みに転がり込む。


 油断をしたか、或いは目算を誤ったか。刹那の思考の答えは、目の前にあった。


 反射的に刃を向けた先。


 そこにいたのは——巨獣。



 フィシンだ。


 その斑の茶褐色は確かにフィシンの特徴。


 違うのは、その毛皮に幾多の古傷を纏う事と、通常子供程度の大きさしかないフィシンの5倍はあろうかと言う巨躯。


 盛り上がった筋肉は熱を発し、纏う暴力的な魔力で姿が仄かに歪んで見える。



 油断など無かった。誤りなど無かった。緊張の糸が緩んだ事も無ければ、フィシンの攻撃など容易に防げると言う慢心も無かった。


 ——全力で防いでいた。


 そうで無ければ、今頃生きてはいない。



 見詰め合う事、僅か数秒。


 焦れた獣は荒い息を吐き出し、瞬きの間に迫る。


 それを防ぐのでは無く、大きく横へ跳んで回避する。



 切り結ぶには力が足りない。切り抜けるには速度が足りない。

 技を通す、間合いを探さなけれ——



「っぅ!?」



 不意に、剣を落としそうになった。


 力が入らない事に気付き、遅れて……肩が切り裂かれている事に気付く。



 ——避けた筈。



 否、避けれていなかった。


 敵が想定以上だった? そう考えた所で、足の震えに気付いた。


 限界だったのだ。



「っ……此処に来て……!」



 この局面で、限界を迎えるなんて……!


 ……いや、違う……もう限界である事を見抜いて、襲って来たんだ。



 のそりと、ゆっくり振り向いたそれ、その煮えたぎる瞳に、私は死を予見し——



 次の瞬間——何かが視界で閃いた。



 空から星が落ちたかの様に、光の歪みがひらりとすり抜けた。

 巨躯のフィシンは燃える様な瞳のまま、すとんとその首を地面に落とす。



「は……」



 警戒し、後退る私の前に舞い降りたのは——



「よく耐えたわ、私こそがプラリネの女王、ファニエ・プラリネ! 委細承知よっ、後は任せて休みなさい!」



 ——希望の光だった。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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