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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十六節 エルダ帝国の攻略

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第26話 生きる決意、生かす決意

第四位階中位

 



 それは、突然の襲撃だった。


 黒い波は突如として西の果てより現れ、隣国は一夜の内に滅ぼされた。


 その報が届く頃には、我が国も黒い波に晒され、国境を守る砦が、村が、街が、暗闇へ消えた。

 かつて迫る敵国の大軍をも阻んだ砂と灼熱の大地は、塗り潰す様に迫る黒い波に呑まれた。


 民を逃す暇もなく迫るそれに、王、父が神獣ザングランス様に願ったのは、戦いではなく、私を逃す事だった。


 目的地は、王族にのみ口伝で実在を謳われる、竜翼の民がいる南の森。


 ザングランス様の砂腕に捕まれ、遠ざかる王城が暗闇に呑み込まれるのを、私は見ている事しか出来なかった。



 砂の国ユグノはその日、滅びを迎えたのだ。





「っ……」



 はっと、目を覚ました。



「はぁ……はぁ……」



 荒い息を整え、汗を拭う。


 久しぶりに、あの日の夢を見た。



 魘されていたのだろう。


 神子様達が、弟妹達が、慰める様に擦り寄って来た。



「……心配しないで、ありがとう」



 弟妹達を撫で、涙を拭う。


 あの日、私は故郷を失い、唯一の肉親である父を失い、そして……母と慕ったザングランス様を失った。


 5年の歳月が流れた今でも、最後の言葉をはっきりと覚えている。


 弟妹達を頼みましたよ、私の愛しいユーシア。


 そう言って、母様は黒い竜へと挑み掛かった。


 涙で歪む視界の中、何処にいるとも知れぬ伝説の竜翼の民に出会えたのは、幸運だったのだろう。



 弟妹達を抱え、神像……はなくとも、母様の鱗から掘られたボタンに祈りを捧げる。



「ユーシア・オルカン・ジェヴノーが祈ります。どうか良き陽の導きを、陽の行先に祝福あれ……母様が静かな夜に抱かれます様に」



 もう、意味の無い事なのかも知れない。

 それでも、祈る事をやめられなかった。


 それはきっと、私の弱さなのだろう。



 ふと、鱗が淡く光った。



「え?」



 気のせいか? そうと思った次の瞬間——ピシッと鱗に罅が走る。



「なッ……なんてこと……母様の唯一の…………」



 呆然とするのも束の間、直ぐに立ち上がる。


 嫌な予感がした。



 久しく見ていなかった悪夢に、鱗の罅。


 まるで母様が警告しているかの様に、私には感じられた。


 ただの勘違いかも知れない、それでも……最悪の事態は、ある時急に降って来る物だから。





 グオード様とドーラ様に、夢の事と突如罅割れたボタンを見せる。


 暫しそれを見ていたグオード様はドーラ様と顔を見合わせ、頷いた。



「……ユーシア、良く聞かせてくれた。我等も今旦より、森の騒めきを感じていた所だ」

「民の多くが、ひりつく様な予感を感じています」

「巫覡たる君がそれを凶兆と捉えたのなら、その予感は正しいのだろう」

「何かが起きようとしています。直ぐに避難を始めましょう」



 両人の一声を聞き、小さき竜翼の民達は、元より少ない荷物を纏め始める。


 私が1番荷物が多い、急がないと。





 荷を纏め、移動を開始した所で、それは現れた。



「戦える者は武器を持て! それ以外の者は里へ急げ!」

「私が先導します! 皆ついて来なさい!」



 空舞う巨躯の黒き鳥と、それに従う魔物の群れ。


 ユグノを襲った、邪神の眷属!



「どうして今になって……!」



 神の鉄槌で死に絶えた筈の邪神が……!



「私も戦います!」



 剣を引き抜く。


 プラリネの里の妖精鍛治師に作って貰った、人の間じゃ国宝級の剣。

 それに、今は亡きユグノの宝物庫から持ち出した装備。



 この日の為だ。


 こんな日の為だ。


 私がこの5年間、ドラジェの皆に鍛えて貰ったのは……!



 覚悟を決め、前に出た私を、グオード様は片手で制した。



「ならん」

「な、何故です! 今は少しでも——」

「——死に急ぐ者を戦場には出せん」

「っ」



 死に急ぐ……? 私が……?


 頬を張られた様な衝撃に冷静になる。


 この中で1番足が遅いのは私だ。その私が、逃げる戦いの中で、殿を務める? 確かに、死に急いでいると言われてもおかしくない。


 気が急いたか? そう思った時、過ったのは父様と母様の姿。


 人の為せる全てを囮に、私を逃す決断をした父様と、自らを犠牲に私が逃げる時間を稼いだ母様。


 私は無意識に、それと同じ道を辿ろうとしていたのかも知れない。



「……ユーシア、前々から言おうと思っていた事だが、今それを伝えよう」



 グオード様は半身に振り返り、ニカッと勇ましく微笑んだ。



「其方は我等が同胞だ。過去を追わず、共に生きよう」



 ……あぁ、側から見て分かるくらいに、私は過去を追っていたのか。

 知らなかったのは私だけ。


 思えばこの5年間、私は神子様のお世話と修行ばかりで、これと言う何かをしてこなかった。

 5年前まで王宮でやっていた多くの事は、今や思い出すのも難しいくらいだ。


 私は、あの時、あの瞬間に力が無かった私を、恨んでいたのかもしれない。



「さぁ行け、プラリネの里へ窮状を伝えよ!」

「……はいッ!」



 剣を納め、駆け出す。



 行かねば。


 生きねば。


 私も、皆と共に生きていたいから。



◇◆◇




「……行ったか」



 遠ざかる気配に安堵し、空を見上げる。


 舞うその巨鳥は間違いなく、かつてと同じ、震える様な邪悪の気配。

 周囲を固める鳥の魔物達にはそれを感じないが、敵対者である事に相違無し。


 今こそ、古より伝わるオーブの力を使う時。



「皆、奮起せよ! 俺が奴を討つ! 誰一人として死ぬな!!」

『応!』



 懸念がある。


 遠い山肌に、微かに感じられる邪悪の気配。

 あの鳥は、突如として現れた。奴等が意図して気を隠せると言うのなら……。



 ……後の事は頼むぞ、ドーラ。



「……共に生きようと言った手前、簡単には死んでやらんぞ……!」



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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