第25話 難民救助
第八位階下位
ゲーム開始から31日目の朝。
諸々の事情を済ませログインすると、思わぬ事件が起きていた。
此方の諸々を片付けつつ、黒霧の報告を聞く。
『昨晩から今朝に掛け、西部森林、旧ルテール氏族の里から東進している集団がいます』
『敵?』
『その後方に負の気配を放つ魔獣の群れがあります』
『成る程、難民か』
ならば助けても良いだろう。
何より、ルテール氏族の里を経由していると言う事は、エルフの隣人であった筈で、それが此方へ向かって来ていると言う事は、メッセンジャーゴーレムの声を聞いたか、此方に知り合いでもいるか。
より詳しい情報を聞きつつ、うーたんとめーたんに朝ごはんを食べさせる。
◇
黒霧の報告によると、此方へ向かって来ている集団は、妖精種の群れとの事。
それらは、リェニ達蜻蛉羽妖精種とは違い、蝶羽妖精種と竜羽妖精種の集団なのだとか。
それに加え、人が1人と、その配下と思わしき砂蛇の魔物が5体。
人がいるせいか移動速度がやや遅く、王都に到着するには5日以上の時間が掛かるだろう。
人を生かすか、見捨てるかによって、到着時の死者数は大きく変わるだろう。
幸いだったのは、それを追っている敵が、負の化身では無い事。
と言うか、見たところ……負の因子は魂の一部に潜んでおり、敵意に該当する意識の一部をコントロールしているだけ。
非論理的な獣の支配が精々だが、その一方で下等な獣くらいならかなりの数を操る事が出来る様だった。
負の総量で言えば、双頭の邪竜から分たれた邪竜並み、レベルにして400か500クラスはあるか?
最小の労力で最大の結果を得る為に、極めて効率的な手段を取ったと言う所。
本体はそれら魔獣の軍勢の後方で、強力な蛇型魔獣の姿を取り、周辺の下位魔獣へウイルスでもばら撒く様に邪気を投入して、支配を進めつつ進軍していた。
一体一体は雑魚だが、負の力のコントロールを受け、的確に妖精達を弱らせている。
もう何日も逃走劇を繰り広げて来た様で、妖精達はもはや限界に近い。
取り急ぎ、花園の整備に精を出しているリェニ達に、西部森域で竜羽と蝶羽の氏族に心当たりは無いかと聞いたところ、竜羽妖精種のドラジェ氏族と、蝶羽妖精種のプラリネ氏族ではないかとの事だった。
住処の位置はローシェとかなり離れており、プラリネ氏族はルテールの里から更に北西、ドラジェ氏族はプラリネ氏族の北側の山林を放浪している。
妖精と言うのは基本的に物理が弱い種族で、足の速い魔物等に奇襲されるとひとたまりもない。よって大体の場合は得意の魔術で認識阻害や方向反転の結界を張り、隠れ里を形成する。
ローシェやプラリネは隠れ里を持つスタンダードな妖精だが、ドラジェはそうでもないらしい。
それは言うなれば、妖精の竜変種。
強いフィジカルと高い魔法適性を持ち、魔法戦士として戦える、産まれついての強種族なのだ。
今も、プラリネ氏族や人間を守る為殿を勤め、魔獣を打ち払いながら後退している。
逃走劇を繰り広げる彼等の中で、特に強いのは3人。
1人は、プラリネ氏族の妖精女王、ファニエ・プラリネ。
レベルは307とかなり高めで、妖精の宝珠を保有している為、レベル500に迫る出力を捻出出来るだろう。
これは、プラリネ氏族が魔物の多い森林の奥地に里を構えていたからであり、外敵との戦いが多かった為に自然とレベルも上がっていたからと考えられる。
2人目と3人目は、ドラジェ氏族の希少種、妖精王と妖精女王、グオードとドーラ。
レベルは378と381で、竜変種故に当然竜玉を体内に持つ。
それだけでも強いが、おまけに妖精の宝珠を1つ持っているので、此方もレベル500相当の力を発揮できる。
まぁ、あくまでも理論値であり、実際はすでにオーブは使った後の様で、オーブ内には残存魔力が殆ど無く、その出力を捻出する事はもう出来ない。
おそらく、負の化身は5年前の残党で、長らく身を潜めて勢力を拡大していたのだろう。
2つのオーブはそれ等を打ち払う為に使われたか。
送り込むのは同じ妖精種+α人少々で良いだろう。
リェニ、ルェルァ、プリノンノに加えて、妖精女王の群れ、1,028匹。
過剰な戦力かもしれないが、敵が奴等だけとも限らないからね。
妖精郷に迎合すれば、被害無く難民を捕ま、保護出来るだろう。
……いやぁ、それにしても、竜変種でしかも雄の妖精か……中々珍しいなぁ。
それが終わったら、続けて除染作業と死者の回収も進めよう。
日が経ってる上に負の影響範囲内だから全ての蘇生は難しいだろうが、少しでも多く助かれば心象も良くなろう物だ。




