第24話 神族
第八位階下位
更に深く、今度は鈴月姫と言う種族の能力を見てみた所、新たな、そして歴史的な事実が判明した。
この鈴月姫と言う種は、吸血鬼が眷属を作るのと同じ様に、2種の眷属、所謂神族を生み出す事が出来る。
それが、銀月姫の持つ力と見られる月の徒と、鈴月姫特有と見られる鈴の徒だ。
内、後者の鈴の徒には2つ、聞き覚えがある。
1つは、鈴守フリークの秘密組織、もといファンクラブ、鈴の徒。
ここ数十年で勢力を大きく拡大している組織で、多分鈴ヶ森学院からの助っ人とか、雇われの警備員達にもかなりの数混じっていたと思われる。
年代には差異があるが、勢力拡大で増えたのは若者ばかりであり、なんでも鈴守の教えに従い日々を過ごす事が彼等の至上命題であり、その為に日々努力するから基礎性能が高い。
何処にも狂信的な者達とは居る物である。
2つ目は、それらの語源となる物で、古い文献に記される、護鈴十家門を指す。
現存する最古の文献に鈴ノ徒の名は記されており、一般公開されている物にも古い方に幾らか散見される。
それらは時代が進むにつれ消えて行き、今や遥か昔の歴史の中にしかいない存在だ。
護鈴十家門自体は、名を変え形を変え、今に残っている物の方が多いが、鈴ノ徒の名は廃れて消えた。
きっとそれに相応しい力が失われたからなのだろう。
形骸化するくらいなら消える程度には大切な物だったのだ。
ともあれ、鈴の徒が鈴ノ徒として鈴守の歴史に存在する以上、鈴月姫は僕等の祖先であると考えて相違あるまい。
初代が今に生き残っていない以上、死んだと見るのが適正だ。
旧時代の敵が強かったのか、邪神の類いでも湧いたかは定かでは無いが、亜神クラスが死ぬと言うのは尋常ならざる事態である。
それは追々、出来るだけ早く調べておくとして……解せないのは月の徒の名が一切残っていない事。
リスク分散の定石から、打てる手札は増やして然るべき。故に月の徒は存在した筈だ。
ならばその痕跡は必ず何処かに残っている。
月に関係する物がないか、詳しく調べてみるか。
僕のルーツを辿る事は、世界を知る事に等しい。
積み上げて行く未知では無く、掘り返して行く未知が、そこにあるのだ。
「ふふ」
「♪」
なにはともあれ、先ずは鈴月姫と鈴の徒、月の徒の実験だ! あとサンディアの瞳も挙動を調べたりしないと!
「ふふふ、ふふふふふ」
「……」
サンディアは微妙な笑みを浮かべた。
◇
流石の僕も、進化で多少回復したとは言えお疲れのサンディアとその配下達を酷使するのは憚られるので、皆が眠くなるまでにした。
それにより分かった事は多い。
先ずは、鈴月姫の徒と呼ばれる者達、またその力に付いて。
これは、ズバリ神の加護だ。
膨大なエネルギーを消費し、対象を眷属化させる。
見た感じ、眷属化が進行すると、月の徒は銀月鬼へ、鈴の徒は鈴月鬼へ進化する。筈だ。
魂に植え付けられた因子は主の影響を受けより強くなり、進化のルートは主が強い程より強固に舗装され、やがて対象と同化、もしくは対象を乗っ取り、神族化させる。
また、因子は宝珠と同じ様な働きを持ち、対象の魂の補強が可能、どんな凡夫も神族へ導く成長ツールだった。
まぁ、加護って大体そんな物だけどね。
違うのは、加護が基本的に被せる物なのに対し、コレは植え付ける物な点。
似た例を挙げるなら、神樹セフィロタスの寄生種子なんかが良い例である。
加護の詳細は、鬼化に近しい物。
再生力や腕力を上げたり、操血、操影、魅了等、吸血鬼の能力を引き継いでいる。
違う点は、浄化系の力を持っている事。
特に鈴の方は、鈴を鳴らして浄化する、福音系統の力が強い。
また、血を分ける事による増殖系の力はどちらも強く、数を使役する能力に高い適性がある。
続けて、サンディアの瞳について。
月王の力をも宿したサンディアの瞳は、月王の神権を励起する事が可能で、神権が発動するとサンディアの力も増大する。
現状でサンディアは自分の持つ神権を行使すると、月王の神権は2個までしか行使出来ない。
と言うより、瞳の数だけ楽に神権を行使できると言うべきか。
まぁ、そんな弱点とも言えない様な弱点も、月煌宮管理担当の黒霧が神権起動すれば良いだけの事だし、何なら月王達自身で神権を行使できる。
要は、月王達が殺され、担当黒霧が討たれれば、自力で行使するしかないと言う事だ。
サンディアが孤立しない限り起きえない事である。
最後に、亜神の眷属達について。
結果的に亜神へ至ったサンディアの、亜神に至る前の眷属達、即ち全配下がどうなっているのかと言うと……血のアップデートが起きた。
アップデートの具体的な条件は、サンディアの影響範囲下にいる事。
支配エリア内にいればサンディアが直接血を与えずとも、自動的に血が鈴月姫の因子になって行く。
そこから月の徒や鈴の徒の様な特別な因子に変化して行く訳ではないが、放っておいても強くなるのは良いものである。
また、それら諸般の事情、サンディア育て過ぎ問題や部下育てなきゃ問題により、サンディアが回収していた莫大な量の僕の血はサンディアの配下用になった。
代わりを要求してぶすくれるサンディアには、僕の魔力を凝集して結晶化させた血を与えた。




