第21話 ユキミンチャンス
第八位階下位
1日程度の放置で湧いた準エリアボス級を屠って回ったシロは、最後に浅層エリアボス、呪武具の悪霊と戦った。
——相性が良かった。
と言うより、遠距離から気配を把握して、倒せそうなボスの方へ向かったのだろう。
相対した呪武具の悪霊は、カースド・アークウィップ。呪われた鞭の悪霊だ。
その特性は、配下の使役と恐怖状態の付与。
主人がいる傀儡系に使役効果は効き辛いし、傀儡系は精神異常に耐性がある。
そしてシロ程の者となれば、レベル100クラスの支配や恐怖など恐れる程の物では無い。
然らば、後に恐るべきは敵の使役する魔物と敵の攻撃力になる訳だが……他の呪武具と比べて特殊効果を持つ手前、鞭は攻撃力が低い。
それに加え、使役する魔物は自らより下位の物ばかりで、特殊進化する様なエラー個体を使役するには相応の演算割り当てが必要になる。
その結果、アークウィップは50体程度の大小様々なスケルトンを使役していた。
それらは、シロの補助により度々転倒、攻撃の予備動作を止められ、投擲は大きく逸れ、駆ける事もままならず、時折見せる鋭い対処も続かなければ意味がない。
ドールの手によりスケルトン達は次々駆逐され、最後に残った鞭にはこれでもかとアイテムを投入。他より弱いとは言えちゃんと強い鞭の耐久、魔力を削り切り、最後に動かなくなった鞭の柄を持ち、温存していたシロの攻勢意思を捩じ込んで、鞭の悪霊を討ち祓った。
流石はシロだ。
このレベルで、このリソースで、よくもレベル100を討てた物だ。
勿論タイマンだったら討てる者も身内の中には幾らかいるだろうが、消耗した状態でとなると話は別である。
だが、流石のシロも気が抜けない環境での連戦は疲労が大きく、結局僕が迷宮をぶち抜いて脱出する事となった。
その後は時間いっぱいまでのんびり休憩し、とうとうその時が来た。
◇
最後の夕食会を終え、玄関前の広場に皆が集まる。
「えーん、帰りたくないよぉー」
そう言って抱き付くシキナを引き剥がした。
「妹が待ってるから帰りな」
分かってはいるからか、特に抵抗は無い。
サービスで少し多めに押しつつ、次にチアキと視線を合わせる。
「いつでも良いからね」
「! ……うん」
ニコッといつぞや以来の屈託ない笑み。
戦う相手に事欠かないのは彼女にとって何よりの報酬だ。
常識人ぶってはいるが、鈴代は根っからの戦闘狂。その笑みの裏に隠れる熱量は、うちの戦闘狂な子達にも負けず劣らずだ。
次にキリカ。
「苦労掛けるけどよろしくね」
「はい、任せておいてください!」
何をと言わない僕の言葉に、キリカ微笑み頷いた。
まぁ、色々ある。学院の生徒達とか、リナの事とか、鈴森の仕事とか。
鈴代と鈴平もそう言った苦労はあるが、特に鈴宮と鈴森はグローバルな付き合いも多いし、人材育成の規模が大きいからね。何度労っても足りないね。
そして最後、マシロ。
特段彼女に何かを言う必要は無い。
何を言わずとも鈴守の利益の為、彼女のペースで事を進めてくれるからだ。
僕の身内が優秀とは言え、何か事を進めるに当たり完全放置で良い人材と言うのは本当に限られる。
有り体に言えばそれだけ僕と他に差があり、そしてそれだけ数少ない超優秀な人材は僕に近いと言う事だ。
「ユキちゃん」
抱き着いて来たマシロにされるがままにする。
「また暫く、お別れですね」
「そうだね」
まぁ、シロならどうせアナザーでも会えるしくらい思ってるだろうが、これは所謂ポーズ。目敏い彼女等は僕と触れ合えるチャンスを逃さない。
勿論虫の巣窟に突入させられた恨みは忘れない。
僕らがそうこうやってるうちに、あっちこっちで皆がわちゃわちゃ別れを済ませた。
戦場兄とタクが手の甲を合わせてたり、鈴木の姉弟がボソボソ話したり、何気にケイとチアキが仲良くなってたり。
例年と比べて人も多く、付き合いも多いが、しかし名残惜しむ様子は少ない。
なんせアナザーでいつでも会えるからね。
「それじゃあ皆、またね」
微笑みながら手を振って、手荷物だけ持った皆を見送った。
次こっちで会うのは……少なくとも1ヶ月以上は先かな。




