第19話 戦士の心
第八位階下位
鈴平姉妹がシャドー系の上位種、シャドーストーカーやシャドーランカー、シャドーハイランカーと激しい闘争を繰り広げ、最後に物資が尽きた姉妹が格闘でシャドーマスターに挑んで負けた所で、今日の狩りを終了とした。
流石に木端200近くと格下のストーカー、ランカー30に、格上たるハイランカー7までやれば、幾ら鈴平の姉妹が用意周到に準備してその力を遺憾無く発揮しても、マスターに勝てないのは仕方ない。
奴はレベル100クラスの最初のエリアボス。
シャドーグロリアスと比べれば大した事なくとも、その狡猾さは基本性能の内。
随分削ったし、良くやった物だ。
力尽きるまで頑張った2人を時間いっぱい甘やかし、次に向かった。
次は鈴代、チアキもといミカとデートだ。
◇◆◇
最も戦える場所へ、そう当主に願って導かれた場所は、命泉と言う名の上位環境迷宮。
穏やかな陽気。
良く晴れた空には僅かな雲が流れ、温かな風が広い水面を撫でる様に駆けている。
咲き誇る蓮花と調和する石造りの街並みは、まるで時間の流れがゆっくり進んでいるかの様に静かで……特段戦いの気配は無い。
だがしかし、私は知っている。
いつも穏やかで殺気も無く、そのかんばせに微笑みを湛えながら、ただただ穏やかなままに敵の殲滅が出来る者達を。
——常在戦場。
自然体で臨戦出来る心のあり方こそ、私が目指すべき極地だ。
少し歩き、壁無く扉も無き門の、外へ出た。
そこに広がるのは、広大な湖沼と石材や木材の道に橋。其処彼処に人型が立ち、彷徨き、また待機している。
「大将や天将は処理してるから、自由にやったら良いよ」
当主の言葉に頷いて、手甲を打ち鳴らして、前に出る。
「……ところで、ユキはどうする?」
「僕の方に来たら潰そうかな」
「そっか」
なら私は……今回は自由にやらせて貰おうかな。
石畳を軽く蹴り、腕を回して、人型へ歩み寄る。
此方に気付いていた人型は、懐から笛らしき物を取り出した。
疑わしきは罰せよと言う事だろう。
鳴り響く警笛を気にせず、数十メートルの距離を一息に詰める。
角も無く、獣の様な耳も無い、至って普通の人間の男だ。
操気を宿した拳は、防御に使われた腕を砕き、喉をグシャリと破壊する。
笛が異様な音を鳴らし、純白の法衣が血で濡れる。
怯んだ人型へ追撃の練気。
今度は頭を粉砕し、石畳に血と脳漿が飛び散った。
そうしてる間に、真横にいた2体目、大剣持ちの角が生えた男が、仲間の死体毎切り伏せる様に大剣を斜めに振り——
「ふっ」
少し引きながら、剣の腹を踏み付けた。
ガツンッと剣は石畳へ突き刺さり、振りかぶった拳に闘気を宿す。
「はッ」
——鈍い音。
即座に敵は剣を捨て、両手を交差して防御した。
闘気を宿した拳はその両腕を易く粉砕し、肋骨が砕ける確かな手応えが伝わった。
吹き飛ぶ敵はしかし、生きている。
後方に跳んでダメージを和らげた様だし、闘気を操り再生を早め様ともしている。故に追撃。
もう片方の拳に込めた闘気を、螺旋を描く様に飛ばす。
——まるで陽炎の様な揺らぎ。
伸びた螺旋は空気を引き込み、減衰しながらも敵の胴を打った。
宙を舞っていた敵は螺旋に巻き込まれ、回転しながら血肉を撒き散らし吹き飛ぶ。
参ったな……人は脆かったが、鬼は硬めだ。
弱点を破壊しなかったのも要因だろう、アレはまだ生きている。
放っておけば死ぬだろうが、即死させられないのは大きな懸念点だ。
螺旋をより集束させれば、打撃はドリルの様に敵を削るだろう。
耐久性は、構えていない状態でなら操気でも行けるが、基本は練気、防御しても闘気ならば弱点を撃てば倒せる筈だ。
常態では練気を意識し、闘気は常に一定量を練っておき、ネックな魔力は腕甲が吸収と中和をしてくれているが、可能な限り私自身も大気中から取りつつ、必要に応じて腰帯の魔水晶から補給しよう。
警笛によって続々と集まって来る法衣の戦士達を見下ろし、攻め手をじっくり考える。




