第17話 兵站作りが勝負の要
第八位階下位
次は、鈴平の姉妹。
戦闘狂の鈴森姉妹と違い、此方の姉妹はどちらかと言うと慎重派の研究者肌。
それは鈴平が広大な耕作地を治めて来たからであり、冠成の食糧庫としてある種戦い続けて来た鈴平史の収束点故だ。
先ず行われたのは、貸工房でのアイテム作成だった。
「ふはっ、ふははっ、良いね良いねぇ、ふへへ」
「お姉ちゃん、独り言」
「ちがわーい、人がいないと喋らないから……それよりほら、これ」
シキナもといナツナは針型魔道具を下ろし、複雑な魔法陣を刻んだ甲虫系魔獣の甲殻を持ち上げた。
それを受け取ったシオリもといシハルは、同じ針型魔道具と屑魔石を置いて、まじまじとそれを見下ろす。
「これは飛行……浮遊? 追跡に……対象指定が、術式補完で……あれ? こっちにも追跡が……こっちは衝撃起動と爆発の術式……術式補完と接続されてる……?」
「おーいぇー、魔力を通すと浮遊と追跡が発動して、対象指定は術式補完で使用者の周囲に対空させる、こっちの追跡は出力高めにして、術式補完で任意の方向に飛ばせるって事ね、そんで敵にぶつけてボカンッて訳!」
指差ししながら説明する姉に、妹も指差ししながら確認する。
「でもこれって、補完の範疇が広過ぎるし、耐久に負荷が強過ぎない? 全部同じ所に接続しない方が良いと思う」
「いやいや、その為の金属線補強だよ、補完周りだけ強化してるでしょ?」
「そうだけど……なんで爆発の方も補完と接続してるの?」
「そりゃもう2個目の追跡と同じだよ、任意のタイミングで魔力流せる様にってね」
「な、成る程……確かに必要なタイミングで起動しないと危ないもんね、そっか……」
あれこれ話す彼女等の横で、僕は1%程度の力を使い、さらさらと魔石爆弾を量産する。
屑魔石だと威力的には破石の更に下、傷石程度で、レベル20もあれば効きが悪い。
しかしそれも指向性を持たせれば解決する。
そんな訳で、彼女等はかつての僕がやったのと同じ様な、爆発術式付きのナイフを作っている訳である。
まぁ、ナツナは別の事やり始めたけど。
ともあれ、ちょっとだけ口を出す。
「……衝撃力計算間違ってるよ」
「なぬ……あああ、桁が1つ違う……!」
「浮遊術式の円環は質量幅と出力の補完だから縮めちゃダメだし」
「ぐわぁ……最適解だったかぁ……! ってなるとこっちの補完もアウトだったりします……?」
「と言うか、起動後は滞空中に経路を繋がないと追加命令は出来ないよね」
「はうっ!? そ、そうだった……」
「まぁ、試しに飛ばしてみたら良いんじゃない?」
そんな一言で、早速失敗作のテスト。
魔力を通し、起動と同時に甲殻はゆっくり浮上し、ゆっくりナツナの右上付近で滞空した。
「……」
タタっとナツナが移動すると、甲殻はゆっくりゆっくり付いて来る。
「……遅い……!」
「因みにコレは、浮遊の演算範囲が不足して質量計算が間に合わない分を追跡の演算範囲で補って付いてきてる形ね」
「むーん……で、やっぱり追加命令は出来ない、と」
ふむふむと唸りながらあっちこっちに動き回り、シュタタッと僕の方へ走ってきた所で、追跡術式の感知範囲外へ出た。
浮遊甲殻は行く先であるナツナを見失い落下、カランッと音を立てて床に落ちた。
「……ユキちゃん先生、これって、浮遊で本当に補えますか?」
「補えます」
僕を抱き上げて聞くナツナに、僕はしっかり頷いた。
重量を0にすれば強い風に吹かれた風船の様に素早く動くだろう。
後は追跡の制動力と感知範囲次第でより正確な位置調整が出来るか否かが決まる。
……もっと言えば、追跡対象を迂回して目標地点に着くように構築した方が精神消耗的に良いのだが……極限環境で意図しない動きをされるのを厭うか精神力の消費を厭うかは人次第だ。
「うーんパスを繋ぐのは手動だと……」
「かなり手間だね……私達には」
魔力を伸ばすくらい息をする様に出来て欲しい所。
まぁ、伸ばす分にはそう手間では無いだろうが、実戦で意識し続けるのは手間だろう。
「こう言う時は……外部マーカー設置すれば良いのか」
「インベントリにしまっておけば勝手に起動する事は無いだろうし、マーカー自体は同じ物で良いかも?」
あれこれ試行錯誤する2人を見ながら、僕はうんうん頷いた。
なんだかんだ言っちゃいるが、各耐久を考慮して魔法陣の大きさや線の太さ、質をしっかり調節しているし、歪みも無い。
術式やその接続法も負荷が集中しない様に構築されているし、円環による補完範囲の増減やその質の操作による魔力拡散の低減、外部影響の遮断も案外と出来ている……単に浮遊の難易度を舐めていただけの様である。
ナツナは早速とばかりに、針型魔道具、コードランを文字通り走らせ、リペアで線を消し、金属線を回収、魔法陣の描き直しを始めた。
魔石爆弾作りから逃げるな。




