第16話 甘い香りに包まれて
第八位階下位
本日はデートと言う事もあり、星隆での狩りは程々に、2人が足腰立たないくらいで終わった。
戦果としては、2人合わせて40程度の格下と10程度の格上を倒し、レベルもそれなりに上昇した形である。
はひゅうと野原に座り込んだ2人の前に腰掛け、取り敢えず両手を広げて見る。
飛び込んで来たのは、クン。
◇◆◇
狩りはここまでにしておこうか。
そう言って微笑むユキさんの前で、疲労でガクブルしていた足を労り座り込むと、ユキさんが目の前に座り、両手を広げた。
気付いたら目の前が真っ暗で、暖かさに包まれていた。
なんて事! ユキさんのお腹から抗えぬ魅力が!
肺一杯に空気を吸い込み、ユキさんを堪能する。
これは実は、なんと合法。
ゲームだから120%合法。
死ぬ時はここが良いまである。
心なしか疲労も抜けて来た気がする。
と言うか、明らかに酷使した足の疲労が抜けていた。
……ユキさん、やっぱりなんか出てる?
そこまで考えた所で、お姉ちゃんがズバッと言った。
◇◆◇
幸せそうにユキさんのお腹に飛び込んだカオルを見下ろし、姉の矜持として横に寄り添うに留まった私は、ふと、ある事に気付いた。
明らかに、体の不調、疲労が抜けている。
ポーションの作用にも似ているが、それよりももっと暖かい何かだ。
思い出したのは、属性の講義。
「……もしかして……ユキさん、愛属性出てます?」
私の問いに、ユキさんは首を傾げ。
「……いつもじゃないけど、触れ合うと出る様だね」
なんて、健気で可愛くて尊くて、身悶えしたくなる程愛らしい事を言った。
「合法! ユキミンは合法です! ふへぁ」
カオルがくぐもった声で変な事を叫ぶ。
ユキさんは年下と見れば誰彼構わず甘やかすんだから。
…………カオル、ちょっとの間ログアウトしないかな? 10、いや30分くらいで良いから。
欲望に素直な妹に、少し羨ましいと思いつつ、私はユキさんの肩に頭を預けた。
すると、ユキさんは微笑んで。
「回復、して行く?」
そんな風に、私を誘惑する。
姉の矜持で躊躇する私を、ユキさんが抱きしめた。
「わわ!」
……これは、半分ポーズだ。
無理やりだから仕方ないって言う、私の甘え。
ユキさんはこう言う所、ずるいし優しい。
私達を無理やり甘やかして、プライドとかも守ってくれて、幸せの香りに包んで行く。
まるで依存を誘う様なそれに、誘われるがままに、落ちて行く。
◇◆◇
鈴森姉妹を労い、抱き締める。
ふわりと良い匂いがして来た。
鈴森は匂いには拘りがあり、2人は香水とかアロマキャンドルとかお香とかを良く使い、匂いをとても気にしている。
アナザーに来てもそれは変わらない様だ。
まぁ、鈴森が香りに拘るのは硝煙の匂いを隠す為だけど。
交易を担う様になり、そう言ったお香の類いが手に入り安かった事でその方面に造詣が深くなって行った様である。
それ等は硝煙の無い現代でも、こう言った形で継承されている。
ともあれ……2人ってなんだかんだで桃の匂いとか付けて来る辺り、僕の事大好きなんだよね。




