第11話 次に備えて
第八位階下位
吸血鬼達との面談も無事終わり、早速細かい調整に入っていく。
全体の質を上げていきたい所だが、流石に数が多いのでレベリングは程々にしつつ、技量の強化に専念しよう。
殆どが牙を抜かれた非戦闘員で、多くは肉体性能を武器に適当に迷宮狩りをしていた雑魚、センスのある者もいるにはいるが、基本的に大した事は無い。
そんな木端40万を全てレベル100、ノーブルクラスで統一し、後は数日に及ぶ訓練で戦闘力を上げさせる。
流石に頭数が多い為結構なエネルギー量を要求されるが、血鬼郷にあった迷宮が溜め込んでいたエネルギーで十分賄える範疇だった。
続けてロードクラスは、レベルを300以上に統一し、それに見合う技量を付けさせる事とした。
エンペラークラスも、順次基礎学習を進める。
ダンピール達も木端吸血鬼と同様にレベル100まで上げ、戦力として最低限運用しつつ、才能ある者はそれ以上のリソースを投入する事とする。
……最たる問題のニンゲンは……黒霧の管轄として黒鎧騎兵団の一部に取り込み、教育を施して人間として行く事とした。
現状では人型の兵士でしか無いが、まぁ獣を兵士にするのと同じ様な物なので大した話ではない。
そうこう細かく計画を練り、実行している所で、研究者チームからエインヘリャルの解析データが届いた。
研究者達に曰く、エインヘリャルとは、オリジナルの魂魄表層から浅層をコピーし、スキル等に付随する記憶データに幻覚系の術で偽の記憶をオーバーライド、その上で隷属系の術を魂に埋め込んで意思の方向性を定め、使役しているとの事だ。
また黒霧に曰く、魂魄の浅層とは言えコピーには相応の感知系能力と創造系能力を要し、生命創造術式への高次の理解が必要との事。まぁ、黒霧をコピーするのと比べれば大した労力では無いだろう。
魂をコピーすると言う時点で霊験門は超えており、魂魄を少し動かせると言うレベルでは無いので極めて練度の高いレベル800クラス、もしくは900以上の亜神級が控えている可能性が高いとか。
まぁ、概ね予想通りだ。
そこそこの深度に到達する魂のコピー。スキルもコピーしないと意味が無く、スキルは記憶が伴わないと然程の強さでは無い。
その上であんな無法にレイ君やノーレルが付き従うなら、洗脳や隷属はあって当然の事。
両方使う理由は、記憶の改変が完璧では無いから。
不確定要素を最大限取り除く為だろう。
そして、このレベルの術が使える者は相当な実力者なのも分かりきった話だ。
具体的には、鏡界竜シテンを上回るくらい。下手をしたら竜寝殿の大戦力を翻弄し続けたマレクラス。
そんなモノをディアリードが放っておく筈が無いのが現状の大きな問題だ。
マレクラスが竜寝殿を使役しているに等しい戦力、それが的確な情報と意図を持って襲撃して来た場合、被害が出る可能性がある。
例えば、僕がいないタイミングで、僕の配下一人を魂まで確実に抹消する為だけに大戦力を動かされた場合、その策略が通ってしまう可能性がある。
神獣すらも盤上の駒である可能性が示唆されるこの現状では、如何に僕と言えども慎重にならざるを得ない
……まぁ、本当に本当に、天使達は大した脅威では無いと思っているが、後ろに見える影があまりにも大き過ぎる。
取り敢えず、研究者達のレベルも黒霧のレベルも随分上がり、僕とほぼ同じ景色を見れる様になったのは僥倖だ。
入手した魂は、アニス、レイ、ノーレルの3人に関しては整理後魂の補完として合成し、他は基礎強化をしつつ取り置きする事とする。
コピーをどのくらいストックしているか、オリジナルの魂が手に入るかに寄る所ではあるが、今後魂の合成により強化する事が可能と見られるので、急いで強化したり分解したりする必要は無い。
目下の重要度が高い諸業務が終わったので、いよいよ……丸投げイベントの方に手を付けるとしよう。
『七色の鎧と人形の城』が終わり次第始まるイベント『赤の闘技祭』。
これは、プレイヤー達が3回のバトルロイヤルを勝ち抜き、トーナメントへ進出して1位を勝ち取ると言う単純なイベントだ。
幾らかある問題点を整理すると見えて来る大きな問題が2つ。
1つは、レベル制限が無い故の、第二陣の圧倒的不利。
2つ目は、装備制限が無い故の、強力な武装を搔き集めて装備すれば勝ててしまう問題。
大事は小事から始まる。
闘技祭の目的から外れる、所謂卑怯な手を使えるままにする事は、それを肯定するに等しい。
卑怯を黙認すればそれは蔓延るだろう。
人は楽をしたい生き物だし、その楽はやがて果てに至るだろう。
苦しみの芽は芽吹く前に排除するのが最善だ。
そんな訳で、システム構築から行う。
その中枢に黒霧を据え、全ての判定を担って貰おう。
なに、レベル100にも満たない木端10万匹なぞ、容易に管理出来るとも。




