第3話 イベントポイッ
第八位階下位
《【王国クエスト】『能天使再臨』をクリアしました》
逃げ足が早いのは良い事だ。
明らかに計画に狂いが出た時点で引いているので、判断は適切である。
報酬は大した事ないけど、一応スキルポイントが18P。
それにしても、ここに来て天使か……一応高位の天使であると見られるシーリンに仕込みはしたから、意識に干渉して遅滞工作は出来るだろう。
だが、より高次で長く生きている筈の熾天使達の思考は常識の範疇には無いので、突然全軍で襲って来る可能性はどうしても否めない。
元よりあった危機だから対策は特段必要では無いが、動きがあった事が問題だ。
吸血鬼達を配下に加える予定だが、そこが弱点になり得るからだ。
帝国攻めの時期を少し延期して、戦力の整備に注力すべきだろう。
件の弱点達はと言うと……間も無くだ。
◇
《《【世界クエスト】『現界の第2試練:不老者の試練』がクリアされました》》
《【世界クエスト】『現界の第2試練:不老者の試練』をクリアしました》
《【大陸クエスト】『血鬼郷の夜明け』をクリアしました》
《《アップデートまで残り〔175:1:24〕》》
《《【イベントクエスト】『赤の闘技祭』発令まで残り〔175:1:24〕》》
《【限定クエスト】『赤の闘技祭・運営』が発令されました。期限終了まで残り〔343:1:24〕》
ダンピールの英雄が無惨にすり潰され、吸血鬼の叛逆者が無意味にすり潰され、吸血鬼の王達がボコボコにされ、何やかんやあってようやく整備だと思ったら何か始まった。
取り急ぎ概要だけぱっと見たが、 闘技大会をやるらしい。
そして、その設営から運営までまるっと投げつけられたらしい。
一応プリセットは用意されているし、何もなければそれが採用される様だが……まぁ何にせよ、マレビトの活動範囲に僕より強い生物はいないので、僕が参加すると優勝が決まってしまう。
そのプリセット自体が、良くない。
7日で組まれた闘技祭は、最初の3日で10万の参加予定者を最大18,000に絞り、2日で最大2,160。 次の1日で最大128人に減らし、最終日にトーナメントを行い1位を決定する。
最終日以外の選定方法が、4時間毎に開催されるおよそ100人によるバトルロイヤルだ。
重複存在する闘技場に、登録されているプレイヤーを100人、ほぼランダムで配置し殺し合わせ、生き残った1人に次のフェーズの参加権を与えると言う物。
これは、一見すると強者でも負け得る運の要素が強い様に見えるが、実際はそうではない。
第二陣は強い者は強いが、大体の者はレベル20に至っていない。
装備も、イベントによるブーストがあるとは言え完全では無い。
即ち、第二陣99人の群れは、完全武装レベル50に負け得るのだ。
そして、その99対 1と言うあからさまな談合を阻止する為の“ほぼ”ランダム。
第二陣からのブーイング必至である。
……まぁでも、勿論抜け道はある。
現在絶賛進行中の人形の城イベントには持ち込み制限があり、その仕様は闘技祭も同じだ。
故に、ザコッパプレイヤーを大幅ブーストする方法がある。
装備している武装、アイテムの持ち込みには制限が無い仕様を利用して、複数プレイヤーが協力して得た資源を注ぎ込んだ代表プレイヤーを送り込むと言う、極単純な方法だ。
具体的に言うと、100人規模の複数プレイヤーが数日分の稼ぎを一枚のモンスターカードに投入すれば、完全武装レベル50とて容易に薙ぎ払える怪物を生み出す事が可能だ。
まぁ、ほぼあり得ないが出来ない事もないと言う訳だ。
また参加権を持っている者は期間中何度も試合に臨める仕様の為、基本的には 概ね実力者が上がって行ける様になっているし、1位の者が既に参加権を持っている場合は2位が参加権を得られる仕様となっている。
イベントリワードに関しては、人形の城と違い、レッドコインなるアイテムが使われる。
これは、虹貨と同じ形でイベントメニューに表示され、数字をタップすると火属性の色鋼、ルジェ希少鉱で出来たコインが出て来る。
サイズや質的に見て、価格としては、1枚1,000MCと言った所か。
また模倣も簡単だ。
一応内部にマーカーが付いていて見た目を偽装しただけでは贋金にはなり得ないが、見えてたら出来てしまうレベルである。
コインの稼ぎ方は幾つかある。
7日間のログインボーナスで 1日50枚。
クエストのクリアは難易度によって変動ながらも、現在のプレイヤーレベルでは基本数枚から数十枚。
イベントのファイトマネーは、第 1フェーズが1位で100、100位で 1。第2フェーズは500と5で、第3は1,000と10。参加予定者が減っても変動は無し。
また、弱者救済措置として、参加権を持っていながら試合に参加しない事で、最初の3日が20枚、次の2日が100枚、その次が200枚、コインを貰える仕様になっている。
要は20人倒れるまで生き残れば得と言う事だ。必ず損する者が19人いると見ると、バトルロイヤル形式やランダム配置から考えても、絶妙に希望が残るラインである。
最後に、賭け。
専ら此方がメインと言った様子で、第2フェーズから行う事が可能。誰が勝つかを試合毎、選手毎に賭ける事が出来る。
選択肢は幅が広めで、50人賭けでは賭け金の1.1倍。40で1.2倍。30で1.3倍。20で1.4倍。10で1.5倍。5で2倍。3で2.5倍。 1で3倍。賭け金の上限は無い。
事前に情報を集めなくても、選手をレベルでソートする事が可能で、上から賭ければ概ね当たる。
最終日のトーナメントでは少し異なるが、特段オッズの変動も無く、 1試合毎に予測する。
1試合目、ベスト128からベスト16までの4試合は2倍。ベスト8からベスト4までの2試合は3倍。最後が5倍。
全部当てたら 1コインからでも720枚になる。
大体の人は最終日までに700枚以上のコインを持っている筈なので……上手い事当てたら事実上5000万MCを稼げる。
何なら1,000枚持つ人もザラにいる筈なので、7,000万MCにもなり得る。
……勿論そんな上手く行くとは思えないけど、人は10万人いるから数人くらいはあってもおかしく無い。
困ったな……そんな万馬券をポンポンばら撒かれたら経済が大変動を起こしかねないぞ。
勿論受け止め切れはするだろうが、その後に待っているのは装備性能差等による大幅な進行度の格差。
赤の闘技祭なんて言っているからには、青や緑なんかも計画しているのだろうが、稼いだ人が必勝と言う結果になり得る。
少なくとも倍率を弄ったり形式を変えたりと、ルール面の調整は必須だろう。
それに加えて、装備の強化やモンスターカードの強化にお金だけでは無いワンクッション、ツークッションを置く必要もある。
おまけに拠点なんかの、高額ながらも戦闘力に大きな影響の無い物を大々的に売り出す策が必要だろう。
イベントのざっとした確認を終えたので、早速吸血鬼関連の色々な処置とアフターケアをして行こうか。




