掌話 カナタより、見果てぬ最果て 四
第四位階下位
ダンジョンのボスモンスターが群れている、一見して地獄の様な戦場で、実際に行われていたのは駆逐だった。
例えば銃らしき物を使ってる奴。
時折銃や足を光らせて、映画みたいなアクロバティックな動きでワームを銃撃する。
そうかと思えば、光らせた足で蹴りを放ち、ワームをぶっ飛ばしたり踏み砕いたりしている。
例えば、魔物使いらしい奴。
使役している魔物は、見覚えのあるダンジョンボス。
最近ようやく大剣士達や海狩り、スピリトーゾさんとかがボスに匹敵する程の魔物を従えられたと言うのに、今そこで戦っている魔物使いは6体ものボスを従えている。
幾ら掛かるか全く分からないが、一体につき700万MCはいるだろう。
それが6体……4,200万MC……?
値段もやばいが、ボスが連携して戦うその様は……下手をしたら竜を何体も従える大剣士パーティーと互角なんじゃないか……?
他にも、拳姫みたいに拳と蹴りで戦う奴が拳の一振りでボスを両断したり、魔法使いみたいな奴が複数同時且つ連続で色んな魔法を使ったり、侍みたいな奴がボスを輪切りにしたり、とんでもない事になっている。
その中でも一番派手なのは、やはり大ボスとの戦い。
他のワームの10倍以上はある巨体を前に、大盾を持った奴が頭部をひたすらにマークして、その突進や酸液、槍衾の様な牙による攻撃を防ぎ続けている。
ひとたび動けば地響きがここまで届く様な攻撃を正面から受け持つ大盾持ちは、きっと残影の攻撃だって受け止められる。
激しく体をくねらせる胴体による攻撃は、双剣使いと白い女が受け止めるどころか弾き返し、その強固であろう甲殻には次々射掛けられた矢が突き刺さって行く。
切り裂かれ、射抜かれ、殴られ蹴られ、大量に血を流しながら、それでも尚、大ボスは倒れない。
やはり、体力に関しては残影や竜レベルの、レイドボスなんだろう。
そうかと思った次の瞬間、それは放たれた。
白い女が剣を光らせ、刹那、一閃——
放たれたのは、必殺技級の斬撃。
それは大ボスの体を両断した。
その次の瞬間、双剣使いの火と氷の斬撃が雨の様に降り注ぎ、大ボスの残った体をズタズタに切り裂く。
畳み掛ける様に、今度は光る矢の雨が降り、着弾と同時に爆発を起こして大ボスの肉片が飛び散った。
それでも、それでも尚、大ボスは倒れなかった。
ボロ雑巾の様な体が大きな光を放ちな、急速に再生していく。
恐ろしい程の再生力。
初期の大海魔の様な、理不尽な回復力。
その最中、大盾持ちが体を光らせ、大ボスの頭を粉砕した。
再生しながら蠢き、暴れ出そうしていた大ボスの動きが完全に止まる。
大盾持ちに続く様に、周囲の掃討を終えた面々が次々とやって来ては、光を放ちながらとんでもない威力の攻撃を放ち、大ボスを削り落として行く。
大ボスが完全に沈黙するのに、そう時間は掛からなかった。
◇
此方に一瞥し、風の様に去っていった面々を見送りつつ、余韻に浸る。
見下ろしたすり鉢状の戦場から、濃い血の匂いが風に乗って流れて行く。
「……すげぇもんみちったな」
「……ほんと」
「……まったくです」
改めて思い出しても、凄まじい。
おそらく一人一人が、トップランカー達のパーティー1つ分に匹敵する力を持っていた。
装備のデザインには統一性があったが、武器はそれぞれ全く違う物。
NPCである可能性も考えたが、まぁ多分……プレイヤーだろうな。
双剣使いがプレイヤーである証拠は無いが、もし彼等がプレイヤーだとしたら、きっと彼等こそが見えざるAなんだろう。
「すんごい光ってたなぁ」
「多分講義でやってた操気法の技術を極めた物だと思います。アレにはアーツの技後硬直が無いから」
「なるほどぉ……」
「そうなんですね」
そうきほーかー……今後必須になって行きそうだな。
「今度講義行くかー」
フウカとスピリトーゾさんがこくこくと頷いた。
それを見て、少し戦場を見下ろした後、振り返る。
「それじゃあ、ボス倒しに行きましょうか!」
了承の言葉を聞きつつ、歩み始める。
本当に、すっごい戦いだったなぁ。今も心臓がドキドキ言ってる。
あんなデカい化け物と対等に渡り合って……あのレベルに至るまで、後何十日、もしくは何ヶ月とか掛かるのかね?
まぁ、暫くは残影とかの人が集まる事前提のレイドボスとしか相対しないだろうし、そんな焦る必要も無いだろう。
そもそもが、トップランカー達と比べれば遅れてる訳で、急がす騒がすマイペースでやってきゃ良い。
「……」
砂交じりの坂道を降りながら、考える。
……しっかし、こんな所に隠しボスがいるなんてな……案外——
「……見つかってないだけで他のダンジョンにもいるのか……?」
「あり得ますね」
誰に言うでも無い呟きに、スピリトーゾさんが反応した。
「以前カイトさんが海の迷宮で、化け物みたいに強い鯨に咆哮だけでやられたって話を聞いたので、多分それが隠しボスです」
「ふーむ、海狩りが声だけでやられた、か」
「すんごい化け物ですね」
以前ってのがいつかは分からないけど、それにしても声だけで死ぬってのは……どうしようもないな。
「知り合いに迷宮地図板で情報共有している人がいるので、今度怪しい所ないか聞いて見ますね」
「進展あったら教えて貰っても良いですか?」
「はい! フレンドメールの方で連絡しますね!」
そうこう色んな話をしている内に、ボス部屋前まで戻って来た。
アレ見た後だとついつい簡単に行けそうだと思ってしまうけど、実際はそんな事ないから、気を引き締めてやらないとな。




