幕間 クルーエルの蜜月 二
第四位階上位
何となく、町の雰囲気が変わった気がする。
何処となく活気がある様な気がするし、暗がりが少なくなった気がするし、清々しい様な気がする。
「……ねぇ、ブラン。町の中、何か変わったかしら?」
「変わってないよ」
「そう?」
ブランが言うんだから変わってないわね。
「良い事でもあった?」
「私? ……あ、あったかもしれないわね」
ま、まぁ? なんて言うか? 良い事って言うか凄い良い事って言うか?
なるほど? 世界が輝いて見えてるって訳? ふーん? そう言う感じ?
「楽しそう」
「……べ、別に〜?」
頬をぐにぐにと抑える。
駄目ね、もう……もう、もうっ、ブランがあんな事するから……! ……自分は平気そうな顔しちゃって……無垢ってこう言う事を言うのね。
「と、とにかく! 今日は稼ぐんだから、気合い入れなきゃ駄目よ!」
「そうだね」
そうよ、お金を稼いで、ブランに合う可愛い物を買わないと!
◇
目前に迫る大ムカデを斬り捨てる。
続けて接近する大ムカデ2体を同じ様に斬り捨てた。
まだまだ大ムカデは迫って来るものの、その数は少ない。
嘘みたいに安定したエリアパレードだった。
この手腕、この采配、流石はブランね!
ちびっ子達が小さな魔法を操作して広場の敵を撹乱し、ブランが迫る敵を狙撃する。
その中で幾らかのブランに見逃された敵を、私が迎撃する。
完璧な布陣だった。
何なら私はいなくても良い所を、私を上手く使ってくれてる!
程良く間断を置いて襲い来るムカデを斬り捨て、ブランの様子を窺う。
ブランは表情一つ変えず、巧みな技術で、一撃でムカデを仕留めていた。
昆虫系は簡単には死なないのに、凄い! 二の打ち要らずね! 天才だわ!!
ちびっ子達も中々の働き。細かい操作により、ムカデの動きをほぼ完璧に制御している。ブランの従魔と言うだけあるわ!
それから程なくして、人間にはかなり危険な大ムカデのエリアパレードを鎮圧した。
早速、必要部位を剥いで行く。
「ブラン、先ずはこの紫の奴の口に付いてる大きな牙を根元から切り取るの。中に痺れ毒が入ってるから、それなりに高く売れるわ!」
「なるほど」
1匹からそこそこに多く取れるし、解毒ポーションの材料とか、武器に塗って使うらしい。
毒自体は長く時間を置くと無毒化してしまうから、取れた時間なんかを覚えておくと、納品時に高評価なのよね。
ブランが手際良く牙を剥ぎ取るのを見て、次の工程。
「次は甲殻。肉は売れないから適当に剥いで良いけど、殻に付いた肉はしっかり落とすと高評価よ」
「なるほど」
「傷が少ないから高く売れるわ!」
一枚一枚は薄いけど、きちんと成形して互い違いに何枚か重ね合わせて表面を炙るとかなり硬いらしいのよね。
魔物素材の加工って本当にめんどくさそう。
「最後に足先、これは鏃に使えるらしいわ!」
「確かに」
炙ると少し縮むのを利用して真っ直ぐにするとか何とか。
「ブラン、いる?」
「えぇ……保留」
拘りがあるのね……流石ブラン、職人だわ!
◇
マジックバックが満杯になるまで狩りをして、ギルドで素材を売り払った。
ブランの分も合わせて、結構な額だ。
おまけに、使わなかったから勝手に貯まったお金も持ち出して、早速ブランの物を買いに行く。
「本当に既製品で良いの? 作って貰う方が良いんじゃないかしら?」
「必要なら自分でやるから良いよ」
「そっか」
まぁ確かに、ブランなら自分でやった方が早いし良い物が出来るわよね?
それから、ブランがいい感じの机やら椅子やらを選び、ブランが調理道具や食器なんかを選び、ブランが食材を選んだ。
美味しいご飯を作るよって、私に微笑んでくれるブラン。
ブランと一緒に料理をして、ブランと一緒にご飯を食べる。そう思うと、心がポカポカとあったかくなる。
食材をマジックバックに詰め終えたブランに、問い掛ける。
「じゃ、じゃあブラン、今日はもう帰る?」
ブランは首を振った。
「ううん、お昼は屋台で。荷物を置いたらまた狩に行こう」
「そう……頑張ってお金稼がないとね!」
ブランは勤勉なのね!
ブランの凄い所に頷いていると、ブランが手を差し出した。
えっと、マジックバックかしら?
そう思って手を伸ばした所で、ブランの手が私の手を掴んだ。
「え、ぶ、ブラン?」
「行こっか」
「う、うん」
私の手を引くブランの手は、ひんやりとしているのに、どうしてかとても、暖かかった。
節と項が間違えている様なので修正します。




