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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十六節 エルダ帝国の攻略

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第58話 夜明けの舞台 二

第三位階下位

 



 サンディアが最後の標的を討った。


 何やら定めていたらしき個人目標も達成した様で、ご満悦である。


 ウェンザードはサンディアが倒した後に回収しようと思っていたが、見事に邪気のみを消滅させ、その上おまけでウェンザードを鍛えてみせた。

 流石にレベル800程のエネルギーを持つ負の化身を相手にしてはエネルギー的消耗は避けえなかったが、魔力がほぼ空の割に精神消耗は7割程度に抑えられており、まだ余力は残している。



 折角だから、サンディアにはその余力を使って仕上げをして貰おう。



 ふわふわと戻って来たサンディアを笑顔で迎える。



「お疲れ様、良く頑張ったね」



 抱き着いて来たサンディアを撫でた。


 これでもかと撫で摩り、甘やかした所でお仕事である。



「じゃあ、支配。行ってみようか?」



 は? 今? とでも言うかの様に此方を見上げたサンディアに、有無を言わせず微笑み掛ける。


 まぁ、今じゃ無くても良いけどね。


 このまま全員連行して教育してから支配しても良い。


 だけど、今が最大の好機なのだ。



 僕は笑みを浮かべたまま、サンディアの頬に手を添えて、じっと、その瞳を覗き込んだ。



「今が1番、苦しいでしょう?」



 だから今なんだ。それに、時間的にもちょうど良いしね。


 サンディアは暫し呆れた笑みを浮かべた後、僕をガバリと抱き寄せた。



「……! ……♪」



 何やら元気ハツラツに僕の首筋へ牙を突き立てる。


 いや、僕にやっても意味ないから。



◇◆◇



 その力を見て、脅威と感じた。


 その力に晒されて、遥か高みを知った。


 その戦いを見て、その高みすらも手加減された物だったと知った。



 それは最早、異次元の怪物だった。



「はは……とても敵わぬな……」



 何やらイチャイチャとし始めた麗しき2人の女児を見つめながら、独りごちる。


 方や青目は、弱いと思った。


 だがどうだろう? 今や先の面影も無い程に弱体化している。

 何が行われたのかは、何となくでしか分からない。


 一つ言える事は、青目はその身に宿す深淵を、自在に操れると言う事。


 邪神は遍く全てに恐れを植え付ける。

 であれば、それと相対した彼女の自信は無根拠の代物では無く、ただ事実を把握していたに過ぎない。


 弱く見えた。更に弱くなった。然らば、邪神を前に弱くなれる事、それこそが強さの証明。


 見えたと思った深淵の底は、遥か奈落へと消え失せた。



 赤目は言わずもがな。


 怯まず、恐れず、迷い無し。


 己の全てを知るが故に怯まず、邪神の全てを知るが故に恐れず、それ故に迷いは無い。



 赤目がこうなのだ。それに慕われる青目の深淵はどれ程の物なのか、最早想像の埒外だった。



「命運は、彼女等次第、か……」



 その軍勢に、その気安さに……つい、夢を見てしまう。


 邪神を知り尽くし、容易く滅ぼして見せた彼女等に、この腐り落ちそうな国を浄化して貰えるのでは無いか?


 だが一方で、死者も多い……アンテの奴も、殺された。


 ……まぁ……最初から滅ぼすつもりではあったのだ。


 邪神を討ち祓った彼女等になら、その深淵の糧となる事に、今更恐れる事は何も無い。



 ただその行く末を受け入れるだけ。それだけの事だ。



 ふと、赤目が空へ舞う。


 青目を横抱きに抱え、空高くへ登って行く。


 何をするのか、そう思った次の瞬間——



 ——赤い閃光が弾け、天蓋が消滅した。



 突如現れた空は、朝焼けで赤く染まっている。



 後者だったか……。



 それもまた定めと受け入れる。


 間も無く激流がこの国に流れ込み、日の出と共に弱き者達は死に絶えるのだ。

 強者もまた、見逃されはしないだろう。


 生かしていたのは荼毘に付す為か。


 腐り果て、死んだ様に生きるよりも、灰と消え行く方がずっとマシだ。


 抱いた微かな希望を捨て去り、せめて終わりから目を離すまいと、顔を上げた、次の瞬間だった。



 ——雨が降った。



 ポタッ、ポタリと、大粒の雨が頬を打つ。


 妙に暖かな雨、触れた指先は、真っ赤に染まっていた。


 ——雨足が強まる。


 ザーザーと、降り頻る雫が大地を赤く染める。



 暗闇に堰き止められていた苦しみが、誰かの涙が、流した血が、溢れたかの様だった。



 見上げた朝焼けには、2つの銀が輝いている。



 膨大な力が渦を巻いて集束し、血の雨となって降り注ぐ。


 そこに宿るのは強靭な、それでいて気楽で、余裕に溢れ、優しさに満ちた、強大な支配。


 ——慈愛の紅雨。


 抗う事に意味は無く、抗う力もまた、ありはしない。


 染み渡る血の支配を、受け入れた。



 じわりじわりと、体を満たして行く。


 じわりじわりと、魂へ染み込んで行く。



 空を見上げた。


 いつしか、雨は止んでいた。



 晴れ渡る空に、双星が瞬く。


 光が駆け抜けた。



 ——夜明けだ。



 降り注ぐ光は心地良く、世界を包んでいた。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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