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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十六節 エルダ帝国の攻略

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第49話 蒙昧の舞台 三

 



 突如現れたアスフィンと数合打ち合い、ウェンザードは笑みを浮かべた。



「少し見ない内に随分と、良い女になったじゃねぇかッ!!」

「ははっ! 貴殿にそう言われるとは光栄だなッ!!」



 両者笑みを浮かべながら、激しい剣戟を響かせる。

 その暴風が吹き荒れる戦いに、踏み入る影は無い。


 交わる剣線の最中、言葉が交わされる。



「貴殿はまるでレーベ殿の様だな」

「ほぉ? 俺に似た奴がいんのか? そりゃ良いなぁ……!」



 強者がいると言う事実が、戦闘狂の血を昂らせる。

 アスフィンは深く頷き、鋭い視線を送った。



「んむ、故に分かる。貴殿は本気を出していないと」

「あぁん?」



 ウェンザードは少し、首を傾げた。


 本気を出していない? ……確かにそうかも知れない。


 永らく。そう、本当に永らく。全力で戦っていない。

 最後に戦ったのはいつだろうか? ……それは最早、記憶の彼方だった。


 ただただ、増え行く力を抑えて振るう。それだけ。

 時折配下と模擬戦はしても、あまりに弱過ぎて満足に力を振るう事は出来なかった。


 そうだ、俺は……俺はもっと強かった筈だ。



 剣戟が振るわれる。


 当たり前に流れる力を、より深く、より鋭く。



 あぁ、そうだ——



「ははっ、それでこそ……!」

「おぉぅ、悪ぃな、剣の振り方思い出したわ」



 アスフィンは爽やかに笑った。



「それじゃあ私も全力で行かせて貰おう」



 その一言を境に、一つの町を破壊する程に荒れ狂う暴風は唐突に収まる。


 地響きは未だ鳴り止まず、風は吹き荒れてこそいる物の、それでも戦場は先よりも静かになっていた。



 化け物同士の戦いも遂に終わりか? そう戦場へ視線を向けた吸血鬼が一人、不意に世界が斜めにずれるのを感じ、絶命した。



 ——戦場は静かだ。


 響くのは剣戟。


 最早周囲に瓦礫は無く、大地が偶に爆ぜるのみ。



 鋭い斬撃が飛んだ。


 それは幾らか床を破壊し、深い斬撃痕を残した。



 また、鋭い斬撃が飛んだ。


 それは天蓋を斬り裂き、僅かな崩落を引き起こす。



 戦場は静か。


 力は流麗に流れ、線状一切を斬り裂く。



 斬撃に生じる余波は、彼等の未熟の証。



 衝突に生じる余波は、彼等の拮抗の証。



 戦場は静か、暴風は木枯らしとなり、衝撃は斬撃へと変わった。


 死を撒き散らしながら、凄絶な笑みと共に、化け物達は剣を交える。


 あちこちで血が飛び散り、灰が舞った。



 ふと、ウェンザードは思う。


 僅か数日前、アスフィンはこれ程強かったか?



 否、断じて否。


 目にも入らぬ小物では無くとも、大して強くも無い小娘だった筈だ。

 然らば何故、此処までの力を手にするに至った?


 楽しい戦いの最中だ。そんな小事に構ってはいられない。


 そう、思う以上に、何か、更に大きく、楽しい戦いの気配に、ウェンザードは聞かざるを得なかった。



「小娘っ! それ程の力っ、一体誰に教わったッ?」



 それに対し、アスフィンは自慢げに胸を張り、剣を振るった。



「全ての訓示は、我等が神に帰結する!」



 ——いる。更なる高みが。


 喜びに体が震え、僅かに逸れた剣戟が大地を捲った。



「神かっ! 会いてぇなぁっ、会いてぇなぁぁ……!!」



 やや雑になった振り下ろしを、アスフィンは受け止めた。

 風が土埃を吹き飛ばす。


 狂気を宿した瞳が、アスフィンを覗き込んだ。



「テメェを倒せば、神に会えるかなぁッ?」



 対するアスフィンもまた狂気を宿した瞳で、ウェンザードを睨め上げた。



「勿論だともっ! ……いや、その前に我等が王が出るか?」

「は?」



 付け足されたその言葉に、僅かにウェンザードの思考が止まった。

 アスフィンはその隙を特に追わず、鍔迫り合いは続く。



 ウェンザードは一時、思考した。



 はて、神の前に王だと?


 コレよりも強い奴がいて? ソレよりも更に強い奴がいる?


 それは、どれほどの、技の冴えなのか?



 ——ウェンザードは理解した。



 神とは、強き者を指すのでは無く、尋常ならざる者を指すのだと。


 あぁ、それは、どれ程の力なのか。


 きっと、今の己では到底及ぶまい。



 故にこそ、その選択は当然の帰結だった。



 ウェンザードは徐に懐から、金の鎖で縛られた筒を取り出した。



「あぁッ! クソッタレッ! テメェの思惑通り、使うぜッ!!」



 それは誰に向けられた言葉か。


 アスフィンはただ、それを見下ろす。



 急速に色褪せて行く、金の鎖を。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
― 新着の感想 ―
[一言] ユキちゃんの舞台は丁寧だね...
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