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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十六節 エルダ帝国の攻略

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第45話 愚者の舞台

第六位階下位

 



 目論見通り、ロイ一行全員の覚醒及びオグデンの強化が完了した。


 見事な戦いであった。後で褒めて遣わそう。


 ダンピールの革命軍が頑張った一方で……。



 僕は少し残念な気持ちで、第二幕を見下ろした。



◇◆◇



「……好機だ、出るぞ」



 その一声に従い動き出した配下を横目に、戦場へ目を向けた。


 大陸侵攻に向けて、三公の兵が荒野の3方に集まっている。


 そんな中で、前祝いとでも言うかの様に、虎の馬鹿者共がダンピールへ攻撃を仕掛けた。

 ダンピールの馬鹿者共がそれに相対し、功を焦っている虎の兵がその駆逐に動く。


 そんな状況で、フォーレンは何故か、僅かな手勢のみを残した屋敷にいた。


 今こそ、奴を討つ最大の好機。


 武装を携え、真っ直ぐに奴の元へ向かう。



 今日こそ、弱き公を下し、真に強き吸血鬼を取り戻す、始まりの日だ。



◇◆◇



 意味の無い祈りだった。


 ただ、浮かんでは消える、僕を仲間だと思ってくれている大切な人達の顔、その無事を願い、そして自らを嘲笑う。


 利用しようとした口で、何を願うのか、と。



 その襲撃は、エングレイの屋敷にいた時に起きた。


 僕が知る限り初めての事だった。


 だが、あり得た事だ。



 そもそも、迷宮の氾濫自体が初めての事だ。

 地上では稀にあると吸血鬼どもが話していたが、ここで起きる事は想像だにしなかった。


 その氾濫により、被害を受けた吸血鬼が、腹いせにダンピールへ襲撃する事は、今までの吸血鬼の動きから見ても、あり得た事だ。


 それが実際に起きた後に腑に落ちても、全くの無意味だったが。


 襲撃は行われ、狙われたのはリスクの少ない老いたダンピール。


 そして、あろう事か、拠点の一つが暴かれた。


 どうしてそうなったのかは分からない。ただ、革命軍は動かざるを得なくなった。



 戦いの気配が、僕にも確かに感じられる。


 にやにやと笑みを浮かべ此方を見下ろす吸血鬼どもへの憎悪も今は忘れ、祈らざるを得なかった。


 無駄な祈りだ、恥知らずな願いだ。それが通じた様に、エングレイは呟いた。



「……好機だ、出るぞ」





 血飛沫が舞い、吸血鬼が吸血鬼を殺す。


 襲撃は速やかで、殺戮に男女の別は無かった。


 侍従らしき吸血鬼が斬り殺され、何人かいた職能持つ人はついでとばかりに血を吸われて死ぬ。

 この屋敷にいる者は、誰一人として逃す事は無い。


 それは他全ての吸血鬼に対する、見せしめの為だ。



 地に塗れ、ぴくりとも動かない吸血鬼を見て、僕は口元を抑えた。



 前を進むエングレイへ視線を戻す。



 迷宮から手に入った強力な武装に身を包み、立ちはだかるフォーレンの手勢を剣の一振りで退けるその姿は、とても同じ形をした生き物だと思えなかった。


 これを見ればこそ、革命軍の、ダンピールの見積もりがどれ程浅かったかが良く分かる。


 吸血鬼は、多少不思議な力を持つだけのダンピールの上位存在では無かった。

 少なくとも……伯爵級以上の吸血鬼は、ダンピールなど幾ら束になった所で勝てる相手では無かったのだ。


 生物としての格が、その存在の質が、あまりにも違っている。



 あぁ、だが、それも今日までだ。



 この化け物がフォーレンを討ち、僕が吸血鬼となる事で、全てが変わる。

 吸血鬼としての力を磨き、吸血鬼を断罪する権利、奴等にとって正当な、力と言う権利が手に入る……!



「……ふん、邪魔をさせるな」

「はっ」



 そんな一声を聞いた次の瞬間、長い通路の壁が弾け飛び、エングレイの側近が姿を消す。

 大きく開かれた穴からは、陰鬱とした吸血鬼どもの街が見下ろせる。


 敵がいた、か……まったく見えなかった、化け物どもめっ……。


 割れて崩れた床を飛び越え、エングレイとその副官の後に続く。


 間も無くして、大きな扉の前で、2人は止まった。



 ここだ。


 この先で、全てが変わる……!



 ふと、エングレイが此方へ視線を向けた。



「……貴様の企みなぞどうでも良いが、貴様が生きていたのなら、約束は果たしてやろう」



 エングレイはそう言って、大きな扉を押し開いた。



 そこは広い執務室。


 幾らかの書類に、大きな机と椅子。


 長く使い込まれた様子のその部屋で、フォーレンはまるで動じた様子も無く、微笑みながら此方を見下ろしていた。


 エングレイが一歩、前に出る。



「堕落したその魂、俺が有効活用してやろう」



 フォーレン……これほど近くで見るのは初めてだが、その纏う気配、気迫……これが本当に公なのか……? エングレイに感じるそれと比べても、あまりに気配が小さ過ぎる。


 副官が剣を引き抜いた。



「エングレイ様のお手を煩わせるまでも無い! 己が愚かさを死して悔いよッ!」



 次の瞬間、黒い何かが横切り、血肉が弾けた。



「っ」



 副官の男がバラバラに切断されたのだと、遅まきながら気付く。


 血に塗れた執務室で、フォーレンは変わらぬ笑みを浮かべていた。



「……ふん、公であっただけあると言う事か」



 エングレイは物言わぬ肉片になった配下には目もくれず、剣を引き抜いた。



 エングレイに劣るとは言え、フォーレンもまた化け物かっ……!


 いや、そもそも、本当にエングレイの方が上なのか……?

 幾千の時を生きる吸血鬼が、僅か3人しかいない公爵の座に辿り着いた者が、弱いなどと言う事があるのか?



 此処に来て、未来を懸けた革命の行く末は、急に見えなくなった。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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