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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十六節 エルダ帝国の攻略

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第39話 死の舞台 四

第四位階下位

 



「……コル…ニ……?」



 もう直ぐ間に合う、筈だった。


 もう戦場は目の前だった。


 赤黒い視界の中、見知った背が、匂いが、もう直ぐ、後少しの場所に、立っていた。



「ロ…イ……」



 腹部を貫く腕が抜け、コルニが地面に転がる。


 流動する赤い何かが吹き出し、地面に広がっていく。



「コルニ……」



 ふらりと踏み出した直後、コルニの腹に誰かの足が乗った。



「ァガ、グッ……ゴブッ」

「コルニッ!」



 コルニを踏み付けた奴は、ニヤリと笑った。



「随分遅かったですね。彼女等を甚振るのにも飽いて来た所です」



 そう言って、吸血鬼は足を振り上げ——



「——あぁッッ!!」



 一息に距離を詰め、剣を薙いだ。


 吸血鬼は飛び退り、俺は剣を向けたまま、コルニを抱き起こした。



「コルニ……!」



◇◆◇



 やけにはっきりと見える視界。やけに回らない思考。


 ゆっくりと見上げた彼の濡れた瞳は、宝石の様に輝いて見えた。



「……ロイ」

「コルニ……!」



 あぁ、ロイだ。ロイだ……!


 良かった……最後に、会えて……。


 ゆっくりと伸ばした手をロイの温かい手が握ってくれた。

 抗いがたい眠気、世界が遠ざかって行く中で、そのぬくもりが、私を繋ぎ止めてくれる。


 何かを伝えなきゃ。


 話したい事は沢山ある。


 いつも一緒にいてくれてありがとう。守ってくれてありがとう。


 一緒にご飯を食べて、一緒に寝て、ずっと隣にいて、楽しかった。


 ずっと一緒にいれなくてごめんね。置いて行ってしまってごめんね。


 さよなら。



 違う、違うっ……伝えたい事を、伝えなきゃ……。



「ロイ……」



 もつれる口がもどかしい。薄暗い視界の中で、ロイの澄んだ赤色を見上げ、握られる手のぬくもりを感じながら——



「——愛してる」



 あぁ、良かった……これだけは絶対に、伝えておきたかったから。

 ふふ、ロイ、驚いてるかな? 喜んでくれてるかな? 喜んでくれてると良い——



「——俺もだ、コルニ。俺も……愛してる、コルニ……!」



 …………。



「……ふ、ふふ…………」



 そっかぁ……ロイ、私の事、愛してくれてたんだ…………あぁ、嫌だなぁ……もっと一緒にいたかったなぁ……もっと、もっと——



 ロイのぬくもりも、澄んだ赤色も無くなり、何も感じない、ただただ真っ暗で、冷たい世界。


 ふと気付くと目の前に、大きな青白い月の様な物があった。



  (——うん?)   (コルニはまだ)   (回収しないってば)



 ……?



◇◆◇



 するりと、弱々しく握られていた手が滑り落ちた。


 生暖かい血が、どうしようもなく甘美な香りが、とめどなく溢れて、地面に広がっている。


 いつの間にか、視界が変わっていた。


 赤黒く澱んだ世界は、未だ赤を残しつつも、全く違った世界となって俺の目に映る。

 そこにあったのは、初めて見るコルニの顔。


 頭には、小さな角の様な物が生えていた。今までは髪で気付かなかったんだろう。

 仄かに笑みを浮かべて此方を見上げていた、何も映らない瞳を、そっと閉じさせる。


 ごめんな、コルニ。俺も、直ぐに追いつくから。


 コルニを地面に横たえ、剣を拾った。



「おや、もう良いので?」



 何かが(コロス)何かを(コロス)言ったが(コロス)、まるで(コロス)頭に入っ(コロス)て来ない。(コロス)

 そんな事(コロス)よりも、(コロス)体が燃え(コロス)る様に(コロス)熱かった。(コロス)


 何処かで誰かが叫ぶ声が聞こえる。


 燃え盛る様なそれは——



 ——俺の声だ。



「ぶち殺してやる……!!」



 激情に駆られるまま、俺は剣を振り下ろした。



◇◆◇



 残念な事だ。


 絶望の中で見出した希望は、怒りを挫いてしまう。


 彼は直ぐに、周りの状況を察し、その中でもナターシャとイーネシスの生存を把握してしまった。

 それ故に、吹き上がる怒りはその勢いを挫かれ、僅かにでも希望を抱いてしまっている。


 あぁ、だが、我等が神は正しく鬼畜。


 希望をチラつかせ、大きく、深い、絶望へ、彼等を引き込もうとしておられるのだ。



 竜化が進行して瞳孔は縦に開き、爪や牙が鋭く伸びて、額には小さい角が生えている。

 その表情は隠せぬ憤怒に歪み、強化された身体性能を十全に使い、縦横無尽に剣が振るわれる。



「はぁァァッ!!」



 咆哮と共に振るわれる一撃は重く、怒りの表情の割に我を失っておらず、やや雑なれど確かな技量を感じさせる。


 我が血と影の武威足るは、偉大なる神の薫陶を受け、かつての己など比にならぬ程の冴えに至っている。

 然るにこの少年は、我が血と影の刃に、それなりの質と量で対処している。対処出来ている。


 それ程の強化、それ程の狂気に晒されて尚、これ程の練度。


 強い、まごう事なき強者……だが、これでも尚、少年の限界では無い。


 もっと上がある。もっと上に至れる。



 これはその、大切な仕込みなのだとか。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
― 新着の感想 ―
神様ってかってだよねwwユキも嫌いって言ってたもんね
[一言] ユキの善意100%です、信じてください、ほんとです。
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