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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十六節 エルダ帝国の攻略

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第37話 死の舞台 二

第四位階下位

 



 敵の剣はおそらく血で形成されている。


 破壊に大した意味は無い。ならばやる事は1つ。


 横薙ぎに振るわれた剣に私は左手を合わせた。



「っぅ!」

「っ!」



 剣は腕の半ばまでを切り裂き、私の棍は吸血鬼の胴を直撃した。



「……やはり、貴方が一番恐ろしい」

「どの口が」



 殺す気で打ったのに、まるで効いた様子が無い。

 おじさん達がやられたのも納得だ。


 ……もしかしたら、私達はここで……。



「ふっ!」

「っ!」



 弱気を消し飛ばす様に、切り裂かれた腕に力を入れ、それと同時に棍をもう一度振るう。

 剣が抜けない事に驚いた僅かな隙に撃ち込んだ打撃は、今度は腕で止められた。


 びくともしない棍を諦め、即座に胴目掛け蹴りを放つ。

 しかしそれも、同様に蹴りで止められた。


 棍を捨てて振るった拳は、同じく棍を離した手で止められ、そこへ私は牙を剥く。



「っ」



 ガチンッと牙を打ち鳴らし、手を離した吸血鬼から棍を拾いつつ距離を取った。


 私達だけじゃ勝てない……ロイが来るまで時間を稼がないと……!



◇◆◇



 飛来する赤い槍を打ち払う。


 弾けたそれは地面に散らばり、即座に2本の槍となって復活した。



「このっ!」



 コルニが1人で戦ってるのにっ!


 それらは何度と無く復活し、分かれたり、元に戻ったりしながら私の行く手を塞いだ。それ所か押し込まれてすらいる。


 これじゃあコルニが死んじゃう!



「うぁぁぁッ!!」



 被弾を無視し、感知できる全ての赤を全力で打ち砕く。


 飛散した赤は小さな刃となって、四方八方から此方を襲う。


 見えざる視界の中、それらをどうにか撃墜させるが、それだけ。


 まるで前に進めない。


 ダメだ、ダメだダメだダメだッ! このままじゃコルニがッ!


 何か、何か出来る筈ッ! 何か——



「——そうだッ!」



 ハッと思い付いたのは、血矢の操作。


 元は気と言う物を使って血で矢を作り飛ばすだけだが、敵が今やっている様に、そしてイーネが影を自由に操っている様に、やって出来ない事は無い筈!


 必死に迎撃し、掻き集めた血で十分な大きさの血矢、剣を作る。


 それと同時に分かった事があった。血の剣が分裂すれば分裂する程、その動きが単調になり、迎撃が容易くなっているという事が。


 生成した血の槍を振るう。


 最初は試しに小さな刃へ。撃ち落とした血は地面に広がり、動く気配は無い。

 同時に私の血矢剣も、少しの血が制御を離れて床を濡らした。


 これなら行ける!


 殲滅力を上げる為、此方も血を分散させ、小さな刃のみの撃退に利用する。


 とにかく早く、コルニを助けられる様に、2つは3つへ、3つは4つへ、操る数をどんどん増やして行く。

 それは思っていたよりもずっと簡単で、直ぐにコルニを助けに行ける。そう、思った直後——足が止まった。



「っ!?」



 床に散らばる血の中に、まだ生きている血が隠れていた。


 そう気付いた時には、直ぐ目の前に赤い壁——



「——カハッ」



 吹き飛ばされ、何かに衝突する。


 瓦礫の崩れる音が響き、土煙が巻き上がった。


 土煙を吸ってでも呼吸し、無理矢理に顔を上げ、見えたのは——目前に迫る無数の血の刃だった。



 あぁ、皆、ロイ、私、ダメだったよ……。



◇◆◇



 地面から影の槍が突き上げる。


 それを後ろへ大きく飛んで回避し、押し固めた影を叩き付けた。

 鈍い音が鳴り、幾らかの影がじわりと宙に吹き出て立ち消える。


 それはほんの僅かだけど、確実に削れてはいる。

 それだけじゃ足りないのが一番の問題だ。



「はぁぁッ!!」



 気合いを入れて影を押し固め、無数に伸び上がる影槍へ影の腕を振るって跳ね除ける。

 同時に地面の槍も警戒し、広がる影から飛び退いて再度影の腕を叩き付けた。



「はぁはぁ」



 どんどん押し込まれているのが分かる。


 直ぐにでも高位吸血鬼と戦っているコルニ姉さんを助けたいのに、まるで攻撃が追い付かない。


 もっと強く影を固めてっ、もっと鋭く影を研ぎ澄ましてっ!


 質で負けてる、量でも負けてる。それでも対抗出来ているのは、姉さん達に意識を割いているからだ。

 だからこそ、早く突破して姉さん達を助けに行かないと!



「うぁぁああッ!!」



 更に気合いを入れ影を操り、周囲の石片や木片をも利用して、一気に影を散らす。


 それでも、厚い影の壁は半分しか削れなかった。



「このままじゃ……!」



 いや、それでも……少しでも削る事は姉さん達の助けになる筈……!


 ひたすらに影を振るい、迫り来る槍を撃ち落とす。

 前へ切り込み、押し込まれて下がり、左右から来る槍を弾き、また切り込んでは下がり、攻撃を弾く。


 少しでも敵に負担を掛ける為に戦い、影の壁を削っていると、ふと、背後からの攻撃が増えている事に気付いた。


 振り向いたそこにあったのは——影の壁。



「……?」



 なんで後ろに……か、囲まれてる!?


 そう気付いた次の瞬間、影の壁が次々と槍を突き出し、急速に迫って来た。



「なっ!? くっ、あぁぁぁッッ!!」



 気合いの大声と共に、急いで影を固め周囲へ叩き付ける。

 僅かに押し留めた瞬間に、失敗を悟った。


 一点に集中して攻撃していれば、貫けたかもしれないのに!


 迫り来る影の槍衾に対し必死に影を押し付けるも、止まらない……!



「なんで……!」



 なんで急にっ。



「兄さん——」



 助けて——



 涙が零れ落ちる前に、視界は黒に染まった。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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