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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十六節 エルダ帝国の攻略

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第28話 恐怖を越えて

第四位階下位

 



 眩いばかりの光りが突如として発生し、視界が塞がられる。


 ようやく光りが収まってゆっくり瞼を持ち上げた。



「……ここは……兄さんっ?」



 辺りは知らない場所で、兄さん達の姿は見えない。



「……はぁ……はぁッ……落ち着いて、落ち着きましょう」



 こう言う時こそ冷静に、周囲の気配を探るのです。

 状況把握は探索の基本。此処は迷宮内の筈なので、何処かに兄さん達がいる筈です。


 目を瞑って集中し、周辺の把握をする。



 兄さん達は遠いが、走れば直ぐにでも合流出来そう。

 ただし、強そうな敵がいる。


 これは……ナターシャ姉さんの方に合流した方が——



「っ!?」



 そこまで考えた所で、ようやく気付いた。


 気配が希薄だけど、直ぐ近くに強い敵がいる事に。



「どこにっ——っっ!?」



 刹那、しなる鞭の様な黒い何かが足を打った。


 影の足が砕かれ、転びそうになるのを伸ばした影で支える。

 直ぐに分かった。敵は影だ。



「このっ!」



 地面に手を着くと共に、そこに広がっていた影へ私の影を叩き付ける。


 影の獣とは戦った事がある。


 普通の獣と違って、血や影で攻撃しないと傷一つ付かない。

 その代わりに、血や影で攻撃すると直ぐに倒せる。


 打ち払った影は集束し、地面から伸び上がる様に人影が現れた。


 そこへ影の腕を複数一息に伸ばして形成した影の剣を振り下ろし——



「——ッ!?」



 次の瞬間、その全てが打ち壊された。


 ——血や影で攻撃すると直ぐに倒せると言う事は、格上の影に格下わたしの影は通じない!?


 ゆらりと、伸びた黒い腕が動く。



「っ」



 此方へ伸びるその影へ、私は影の腕を伸ばす。



「うあぁぁぁッーー‼︎」



◇◆◇



 ゾワゾワする物が足元から駆け上がり、急に場所が変わった。


 ロイ達が皆違う場所に飛ばされ、そして私の目の前には、怪物がいた。



「ぁ、ぅ……」



 がたがたと敵へ向けた穂先が揺れる。


 ——同じだ。


 あの時の怪物と。


 視界を奪われ、足を折られ、腹を抉られた。


 何度も夢に見た、あの怪物と。



 のそりと気配が動いた。


 次の瞬間、振るわれた爪が構えていた槍を弾き、腕が痺れる。



「ひっ」



 足から力が抜け、地面にへたり込む。


 辛うじて離さなかった槍も、伝わる振るえで床を鳴らすだけ。


 獣臭さに顔を伏せる。気付けば怪物は直ぐ目の前にいた。


 ——死ぬ。



「ゃ……いやぁ……」



 怖い、怖い怖い、死にたくない。


 カランッと槍が床を転がり、体を抱きしめ、蹲る。


 震える私に怪物の腕は迫り——



 ——ドスンッ。



 重い音。そこに痛みは無かった。


 降ろされた腕は私の真横に付き、怪物は私の横を素通りする。

 ゆっくりと、ゆっくりと、重い音を立てて、怪物は私から遠ざかって行く。



「……はぁ、はぁ」



 ……助かった? どうして……?


 分からないけど、とにかく槍を持つ。


 一度手放したその槍は、やけに冷たかった。



 冷たい床に座ったまま、ただただ怯えて、怪物の行方を探る。


 怖かったから、何をしようとしているのか知りたかった。

 その向かう先には、ロイがいた。



「っ!」



 何故か、息が詰まる。呼吸がし辛い。



「はぁ、はぁっ……! 大丈夫、ロイは強いから、大丈——」



 次の瞬間、匂いがした。


 ロイの血の匂いが。


 それだけじゃない。コルニの血の匂いも、イーネの恐怖も、全部が伝わって来た。



「だ、だめ……だめ……!」



 ロイが強くても、アレ2体には勝てない。


 勝てなかったら、死んでしまう。


 それだけは嫌だった。



 ロイがいなくなるのが。


 皆がいなくなるのが。



 ひとりぼっちで……死んだ様に生きるのが。



 それなら……それならっ——



 ——今死んだ方がずっとマシだ。



 震えは止まっていた。


 身を竦ませる死への恐怖は、更に大きな、身を奮い立てる喪失の恐怖に塗り潰されて。


 奪う者への怒りが、何より縮こまっている己への怒りが、ふつふつと込み上げて来る。



 あぁ……そうだ、怪物は相変わらず怪物で、死ぬかもしれないのは怖いけど、あわよくば殺せ、出来なくても相討ちだっ、せめてロイが勝つ時間稼いで死ねっ! それが出来ないなら五体満足で行かせるなッ! 私の大事なモノを奪わせるなッ!!


 自らを叱咤する様に、未だ怯み、攻め方を考えてから進むべきと留まる足を叩く。

 今止まってしまったら、今度こそ立ち上がれない気がして。


 込み上げた怒りの熱が、広く巨大な迷宮の、冷たい床に吸い取られてしまいそうで。



「あぁぁぁッ!!!」



 雄叫びを上げる。塗り潰した筈の恐怖が漏れ出ない様に。


 槍を強く握り締める。二度と離してしまわない様に。



 死んだって良い。死んで欲しくない人の為なら。


 振り返った大きな獣に、槍を振るう。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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