第25話 強いが弱い
第六位階下位
もう一つの宮を調べ、何も無い事を確認した。
装備も無ければ負にまつわる物も無い。
まぁ、元々レミアとアスフィンの住処だった所だし、何か持ち込まれて無いかの確認程度だ。
結局大した物は何も無かった。それ以上でもそれ以下でも無い。
強いて言うなら、ドールハウスがあったと目される台座があった。セバスチャンが持ってた屋敷のドールハウスだろう。
さて、いよいよ本命。天守の調査である。
◇
相応に厳重な監視を掻い潜り、調査を進める。
天守には表の顔と裏の顔がある様で、表側には大した物は無かった。
それなりに鍛えられた青血会の面々が警備し、また最低限ザコッパ吸血鬼やおまけでダンピール等が生きて行ける様な法を敷いて、日々起きる問題等の事務処理を行ない。練兵場で訓練する等。
武装に関しては大した物は無く、レベル100程度の物が程々に備えられている。貯蔵に関してもまた同じく、食糧として血や肉が保存されているだけだ。
警戒対象は、おおよそレベル800前後の力を持つと目される吸血鬼の支配者、ヴァンディワル。
装備は準試練級、もしくは試練級であると目される。
そんな表の次は、白百合宮同様に複数のダミーで隠された裏の顔。
ダミーの中には表よりは強い程々の武器庫や、より強力な魔物の血肉を保存した冷蔵室があり、また大きな肖像画が2枚飾られている部屋があった。
描かれているのは、ヴァンディワルと思わしき男と、やや小柄で髪の長い女性。
それぞれに描かれたヴァンディワルの姿は変わらないが、女性の方はどちらも小柄で目付きや体型が似ているが別人の様である。
何なら描かれた年代も100年近い単位で違う様だし……これがレミアとアスフィンそれぞれの母親なのではないだろうか?
……ヴァンディワル、ロリコンなのか?
宮殿や城内に姿が無かった事から、既に亡くなっている可能性もある。
それらのダミーを見て回った先で見つけたのが、鏡の異空間型魔道具に隠されたドールハウス。
中にあったのは、何者かに作成されたレベルにして300クラスの武装と、吸血鬼にとってポーションの代用とも言える高等級魔物の血を蚊系魔蟲の魔石で吸収しやすくした、吸血鬼限定ブラッドポーション。それから本命の——
——レベル500相当の吸血鬼100体。
蒼血会と言うらしい、ヴァンディワルの切り札だ。
質的には、猛虎会よりは当然上だが、白百合の騎士の練度と比べると些か劣る。
やけに500前後でレベル限界に至ってる者が多いが、それには必ず理由がある……ので考えた結果、何と言う事は無い。竜寝殿の竜達と同じだ。
それは強種族故の時間の問題。
そもそもレベル500における限界値の発生、その原因とは、おおよそ仙気の極地が見えていないぐらいの練度である事だ。
即ち、真気がちょうど動かないレベル。
では何故その様な事になるのかと言うと……これが強種族問題と言うに相応しい、強力な種族のある特徴による物なのだ。
簡潔に纏めると、強力な種族はその生来の肉体に根ざす力、魔石等の援護により、進化するだけで仙気が使えてしまう。
それにより、本来レベル300の壁、生体限界を越える際に分かる仙気と言う物の本質、それを理解する前に300の壁を越えてしまい、そのまま生来の力を極める事ばかりに集中すると、レベル500辺りで産まれブーストが限界に達するのだ。
彼等が鍛えていない訳では無い。彼等が努力していない訳では無い。彼等が渇望していない訳では無い。
ただ足りないのだ。才能が、努力が、狂気が。
……または師が。
天突く程の才能か、自らを幾度も気絶させる程の努力か、どんな物に衝突しても小揺るぎもしない狂気か、もしくは僕や爺様の様な素晴らしい師、どれか一つでもあれば霊験門を越えられるだろう。
残念ながら、ヴァンディワルやリブラ、フォーレンには師としての才が無いと言うか……まぁ戦う分には良いが教えるのは出来ないタイプの奴なのだろう。
僕の配下にも良くいる。それらは基礎を徹底する事で改善出来るんだよね。
ドールハウス内を詳しく調べた結果、特に負に関する物は見られなかった。
この大空洞で最後に残すは、負の化身の現状のみ。
僕ですら金の気を通して初めて見えたそれは、例えレベル800に至り、神気の領域に踏み込んでいたとしても、察知するのは困難だろう。
見えたとて、その量と質を見誤るだろう。
それは僕を持ってしても、近付くか本体を連れて来ないと良く分からない代物。
吸血鬼達に扱える物では無く、それを所持し、理解し、利用する等以ての外。それが出来るなら僕の隠密なぞ見抜いている。
そんな負の化身、奴の仕込みがどんな物かは、今夜分かる。
それ以外の全て、大空洞に蔓延る吸血鬼とその王達、そして王達の隠し玉を整理しようか。
「♪」
中々の豊作に気分を良くし、僕は城を脱した。




