第24話 試練を越えた者
第六位階下位
アンテを寝かし付け、増大した基礎性能とアビリティ枠を行使した隠密行動で城へ忍び込む。
城を覆う壁には無数の感知系結界が張られているが、物理的に移動を制限する結界は無い。
これは侵入者なぞ如何とでもなると言う自信の表れだろう。
球形に張られた魔力感知系結界をすり抜け、入った城内には、青血会と白百合会の連中があちこちを巡回していた。
監視の目は厳しいが、所詮はほぼレベル100以下の目。ただの節穴なんぞ素通りである。
幾らかの宮に練兵場なんかを見下ろし、取り敢えず端から見て行く事にした。
◇
白百合会の面々が彷徨く宮殿、白百合宮。
——リブラ・ドラクルの宮殿。
例に漏れず薄暗いそこは、白い石を整形して作られたそれなりに豪奢な宮殿だ。
宮殿内に複数の部屋があり、そこで白百合会の連中が寝泊まりしている様であった。
また、宮殿には移動を制限するタイプの結界が複数張られており、白百合会の者達は皆そこを通る鍵を持っている様だった。
その結界は誰にでも壊せる程度の物でしかなく、侵入を拒み、また侵入者の存在を示す為だけの物だ。
入念に調査した結果、これまた怪しく、白百合会の鍵では開かない高強度且つ隠蔽が施された結界があちこちにあり、殆どダミーのそれら結界をすり抜けて地図を埋めて行った結果、面白い物を発見するに至った。
ダミーの部屋なんかは酷い物で、複数種の名前付きの下着が飾られてたり春画が飾られてたり、入ってはいないが寝室らしき部屋でおそらくリブラと思われる強大な気配の持ち主と何人かの小さな気配がお盛んに何かしてたりと、話に聞く通りの人間性が透けて見える……と言うかもろに見える部屋ばかりだった。
そんな宮殿の最深部、中心付近にあった部屋も例に漏れず、寧ろマニアックな、まぁ拘束具的な物が並ぶ中、最も強力な隠蔽の施された壁を見つけた。
そこは、地図から見るとおよそ半畳分の厚さがある壁。
怪しいその壁には、隠蔽により存在を隠されている小さな穴が空いていた。
指しか入らないその穴に指を突っ込むと——
——目の前に城が現れる。
吸血鬼の城と全く同じ作りのそれは、ドールハウス系の魔道具で間違いない。
極めて強靭な結界が複数張られたそのドールハウス内には、マレビト産と思われる強力なレベル300クラス以上の魔道具が複数あり、中にはレベル600クラス以上の試練級武装まで保管されていた。
それがこれだ。
白天羊の魂 品質S レア度7 耐久力S
備考:白天羊の魂。
見覚えのある涙滴型ネックレス。
それに加え、アリエスシリーズの武装、嵐を操作する藍色のティアラ暴渦天環。
雨雲を操る白地に青い線の走る籠手天之瀑布。
空を駆けるハイヒール、と言うよりも趾行性の足、もとい流れる川の様な形をした白地に灰色の線が走る靴雲蒸竜変。
雷を操る白地に黄色の線が走るワンピース雷霆咆哮。
間違いなく星天の試練のクリア報酬だ。
このボディと低レベルな演算力で隠密行動をしながらでは正確な数値は出せないが、リブラ・ドラクルの戦闘力はおおよそレベル800に迫るか超えている。
それに加えてこの装備類を纏えば、その戦闘力は基礎を徹底し装備を整えた僕の配下に並ぶだろう。
なんと言う事だ、もっとやれ。
ワクワクしながら装備類を物色し、次の隠し玉に目を向ける。
レベルにして500クラス。
このドールハウスを管理する、50名の強者達。
白百合の騎士と呼ばれているらしい、リブラ・ドラクルの隠し玉だ。
その戦闘能力は極めて高く、装備の質もまた上等。フォーレン隠し玉もレベル500だが、数が倍でようやく互角と言った所か。
とんでもなく鍛えられているし、取り分け隠密系の能力が高い。大方白百合会に混じって外を彷徨いたりする為だろう。
外にいる白百合会にレベル500クラスが居なかった事から、外に出る機会は少ないのか、もしくは何かの意図を持ってここに留まらせているのか?
それらもまた、今日分かる事だろう。
◇
ドールハウスの城の間取りや白百合の騎士達の詳細情報等を纏めて城から外へ出ると、リブラ・ドラクルと目される存在の寝室前に強者が訪れている事に気付いた。
その想定レベルは、およそ700前後。
純白の鎧に身を包み、真紅の槍を背負う、三公に並ぶ最高戦力。帝王クラスの吸血鬼——
——カルミエラ・ヴァーリン。
二つ名は紅蓮。火を操る吸血鬼、紅蓮のカルミエラ。
リブラ・ドラクル直属の配下であり、おそらく白百合の騎士の団長だ……白百合会だから会長かな?
ともかく、その装備も準試練級。マレビトの遺産と思われる品であり、実質戦闘力は三公の中でも最強と目される暴君ウェンザードと互角くらいだろう。
取り敢えず此処には負にまつわる物も無いし、次に行こう。




