第27話 ギルドランクを上げる
第四位階上位
ギルドに到着した。
中は、灯り石のおかげで多少明るいが、暗いのは間違い無い。
冒険者は見当たらない。
ウエイトレスさんと幼女がギルド内を掃除しており、受付では隻腕おじさんが一人、書類整理をしている。
「こんばんは、達成報告に来ました」
「おう、ちょっと待ってろ」
そう言うとおじさんは、受付に置かれた書類の束を豪快に端へ寄せ、受付の下から水晶玉を取り出した。
「それじゃあギルドカードと達成証明書を出してくれ」
言われた通り、ギルドカードと何枚かの証明書を提出した。
おじさんはギルドカードを水晶玉に当てた後、証明書を一枚一枚確認し、受付の下から貨幣を取り出す。
「締めて金貨四枚、大銀貨二枚、大銅貨二枚だ」
Fランクの依頼にしては高いが……まぁ、あれだけの物を普通に運ぼうとしたらもっと時間がかかるだろうし、こんな所だろう。
貨幣を受け取りインベントリにしまう。
貨幣価値もわかっていないが、アルルの実が二個で小銅貨一枚で売られていたので、小銅貨は数値的には100くらいだろう。
「後は、ランクが上がった。お前は今日からDランクだ。直ぐにCランクに上げる事が出来るが……上げるか?」
「お願いします」
「よし、なら訓練場に行くぞ!」
そう言って立ち上がった隻腕おじさん。Cランクからは商人や貴族の護衛依頼があるので、試験があるらしい。
内容は、試験官と戦って合格を貰う事。勝たなくても良いが、無様に負ければそれまでらしい。
試験官は隻腕おじさんがやるらしく、訓練場で待つ様に言われた。
訓練場は校庭の様な広さで、その端に解体所、その横には倉庫がある。
召喚獣は使っても良いが、使わなくても勝てるだろ? と言われたので、ウルルは観戦である。
数分後、おじさんは倉庫から大剣と槌を持って来た。
大剣は刃が潰されており、槌は何の変哲も無い木製だ。
おじさんは剣を地面に突き立ててから、僕に槌を投げ渡した。
「よし、やるぞ」
僕が槌を手にしたのを見ると直ぐ様飛び掛かって来る。
とりあえず振り下ろされた剣を避ける。
「急ですね」
僕が見た目相応の子供だったら潰れて死んでいた事だろう。
続け様に斬り上げ様としたので、槌で軽く押さえる。
僕の身長程もある大剣を片手で振り回すのだから、両手があった時は物凄く強かったのだろう。
その上、剣が動かないと分かるや直ぐに剣を捨て殴り掛かって来た。機転も利くと言う事だ。
その拳を槌の柄で受け止める。
「おうおう! やっぱり見込んだ通りだぜ! このまま合格にしてやっても良いんだがよぉ、もう少し付き合えやっ!!」
大声を上げて放たれた蹴りをバックステップで躱す。
蹴り返しても良かったのだが、これからはボランティアのお時間である。
僕が渡された槌は頭は木製だが、柄は金属製である。
足を使って大剣を蹴り上げ、宙で拾って斬り掛かって来たおじさんの攻撃は、全て柄を使って対処する。
木製の頭に当たったら壊れてしまうかもしれないからだ。
時に受け止め、時に逸らし、大きな隙があれば突っつく。
時には態と隙を見せ攻撃を誘導したり、注意していれば避けられる攻撃に殺意と魔力を込めてみたりもした。
そうすると、おじさんの動きが徐々に良くなっていき、技のキレも上がって行く。
激しい戦闘故におじさんの額には汗が伝っているが、酷く楽しそうでもある。
戦闘狂の人かな?
「クソがっ! 両腕があればもっと楽しめるのによぉ!!」
間違い無く戦闘狂の人だ。
年齢の程は50代に見える、少なくとも70は行って無いだろう。そんな御老体の身で大した持久力である。
重量を乗せた振り下ろしは地面を大きく抉る程の威力があるので、柄で受ければポッキリ折れてしまうかもしれない。
時折来る蹴りも、ワイルドドックくらいなら一撃で蹴り殺せる程の豪脚である。
僕は、その悉くを、払い、受け止め、打ち落す。
おじさんのレベルを確認すると、50程だった。
レベルはそれくらいだが、スキルレベルは僕よりもずっと上だろう。
技術力を考慮すると配下の熊さん達にも勝てるかもしれない。
其処に良い装備が加われば、確実に勝てるくらいの強化も可能だろう。
◇
「はぁ、はぁ、はぁ……クソ、折角勘が戻って来たってのに、はぁ、もう動けねぇのか、この体はっ!」
「お疲れ様です」
戦いは、おじさんが疲労で倒れるまで続いた。
おじさんが持つ、刃が潰された大剣はボロボロになっており、何度も打ち付けられた訓練場の地面はボコボコに、おじさん自身も僕がペチペチと攻撃していたので皮膚が所々赤くなっている。
正に激戦の跡地。
戦いの最中にぞろぞろと増えて来た冒険者や職員の野次馬から拍手と歓声が上がり、おじさん、ヴェルツさんの娘さんが肩を怒らせてヴェルツさんの方へ歩いていく。
冒険者ランクがCランクへ上がったが、時間が無いのでヴェルツさんを叱り終わった娘さんから軽く話を聞くに留まった。
鉱山に出て来た魔物と言うのは、詳細不明。
強くて素早い事だけはわかっているらしく、Cランク以上の冒険者しか依頼を受けられない様にしたのだとか。
この街でCランク以上の冒険者はヴェルツさんの娘である自分しかおらず、一人で行くには危険過ぎると言う事で困っていたらしい。
鉱山の資料も見せて貰ったが、入り口は複数。
山の反対に抜ける一本道もあるらしい。
タク達プレイヤーが入っている坑道は、魔物が複数種生息しており鉱石の採掘に向かない為、入るのに許可は要らないのだとか。
問題の魔物は全ての坑道に住み着いており数は複数、更に言うと全ての坑道が繋げられてしまった可能性もあるとの事。
つまり、比較的安全な鉱石採掘が出来なくなったと言う事だ。
要するに、この街は詰むか詰まないかの瀬戸際に立っていると言う事になる。
状況を覆すには、坑道内部の魔物を駆逐するしか無い。
纏めると、その住み着いたイレギュラーが原因でプレイヤーの攻略が滞っている、と考えるのが普通だろう。
どちらにせよ、駆逐する事は変わらない。




