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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十五節 先達の攻略

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掌話 彼等のイベント 八

 



 随分、高く買われた物ね。


 そんな感想を抱いた事に、少し驚く。

 その後当たり前の様に出た当然よの言葉は、少し揺れていただろうか。


 何故だが、この兄妹に会うと……変な感じになる。


 スッと熱い物が抜ける様な、こんがらがった物が解けて流れて行く様な。


 そう、言うなれば、凪。


 その活躍は知っている。

 カイトは水神の残影で著しい戦果を上げたし、ナルミは火神の残影で倒れるまで戦った、ミナモだって物理的に死ぬギリギリまで、欠損の痛みに耐えながら自爆も辞さない覚悟を見せた。


 この兄妹は熱い時は燃えたぎる様に喰らい付く癖して、普段はピタッと止まってるのかってくらい穏やかで、正しく凪いだ水面の様なのだ。



 そんな事を考えながら何もいない戦場を駆けていると、ふと、その音は聞こえた。



「っ」

「金属音っ」



 迸る様に響いた澄んだ音を追う様に、聞こえる悲鳴と怒号。


 ドールの群れと戦ってるならもっとガチャガチャ聞こえる筈。つまり——



「——急ぐわ」

「——全速前進!」



 他を差し置いて駆け抜けた先、北門前には、今まさに門を突破しようとするただのドールに見えるナニカと、負傷者達の戦いが繰り広げられていた。


 いや、戦いなんて物じゃない。


 片手が無い者、片足が無い者。そんな戦力とも言えない様な連中が一方的に血の海に沈んでいる。


 至極、戦略的な、負傷兵の増加。


 敵は知恵深く、的確に全体を疲弊させた。



 私にも義憤はある。でもそれ以上に——



 ズタボロで地面に倒れていたミナモの姿がフラッシュバックする。



「——全力で行くわッ、ネコシェイプッ!」



 ——怒りでどうにかなりそうだわ。





 更なる加速を得て、一息に接近。


 背後から抉り込む様に振るった拳はしかし、何の予備動作も無い跳躍で回避された。

 敵は高い天井目掛け身を捻り、此方を向いている。確かに感じられる魔力の残り香。


 コイツ、練気法が使えるッ!!



「死にたくなかったら這ってでも逃げなさい!」



 周囲のまだ生きてるプレイヤーに警告し、振り下ろされた剣を操気で伸ばした魔力の爪で迎撃する。

 そのまま着地した敵と接近戦。


 間合いを離せば此方が不利! このままゼロ距離で仕留める!


 そう思った次の瞬間には、敵は更に密着する様に近付いて来ていた。



「っ! このッ!」



 しなる蹴撃、剣の柄による殴打、練気による急制動。

 此方の動きを読んだ回避と受け流し。


 あまりにも戦い慣れているッ!


 これ程の練度っ、これ程の練気っ、片腕で私と互角だなんてッ!


 超近接格闘の距離、満足に剣も振れない癖してッ!



「舐めてんじゃ無いわよッ!!」



 まるでステッキでも振る様に滑らかに回転して迫る剣を拳で払い、ここぞと溜めて練り上げていた気を一息に解放した。

 ネコシェイプの域を越えて噴出する猫型のオーラは、ネコシェイプのオーラと同様に物理に干渉する。


 ただし長くは操れない。


 即座にオーラの拳を構え、敵を殴り飛ばした。


 ……いや、殴り飛ばす事しか出来なかった。



「コイツッ!」



 まるで分かっていたかの様に、後ろに跳んだ。


 練気が見えてたんだ! 戦闘経験に差があり過ぎるッ!


 でも、それでも、地力に差があったとしても——魔力量には限界があるッ!



「逃すかッ!」



 じわじわ攻めたら地力差で粘られる。今、一気に決めるしか無い。


 なのにッ!


 早いッ! 一歩踏み込んだ時には一歩離れている。

 不味い、こっちは長く保たないのにっ、これも地力差だって言うの!?


 このままでは逃げられる。そう思った刹那、敵は剣を振るった。

 2度振るわれた剣線は2歩分の差を縮め、青い結晶がバラバラと散らばる。


 そうかと思えば敵は振り返り、飛来した槍を迎撃、立て続けに飛んで来た魔法や光る矢をバックステップで避けた。


 距離は十分! コレなら当たるッ!


 跳んで避ける敵目掛け、私も跳躍。全ての練気を手に宿し、現れた巨大な鉤爪を——振り下ろす!



 凄まじい衝撃音。


 大地が割れ砕け、土砂が飛び散り、仄かな青い粒子が舞って、イベントインベントリに土や石が入る。



「くそっ、外したぁぁ!」



 直撃の最中、敵の剣と足が光を放ち、オーラの鉤爪と剣が衝突、余波で腕を粉砕したが、その僅かに稼がれた時間で敵はその場を離脱した。


 激しい精神消耗を受け、辛うじて着地しながらも倒れ込み、意地で上体を起こして見上げた敵は、やや遅いながらも遠ざかって行く。


 魔力が切れかかってる筈っ、ここまで追い込んで逃げられるなん——



 刹那、その声は響いた。



「見つけたーー!! ぱんきちの仇! 召喚サモン、ぱんきち! ぱんきちやっちゃえぇーー!!」

「アオォォンッ!!」

「囲め囲め! 逃すな!」

「蟻達! 密集陣形で壁になりなさい!」

召喚サモンゴーレム! 持って数秒です! 急いで仕留めて!」

「スライムゥー! 広がって飛び掛かれぇー!」

「大根! 足を狙え足を!」



 ……。



「……」

「……倒せそうだね」

「……まぁ、良いわよ」



 逃げられて奇襲されるのが面倒だっただけで、特別自分の手で倒したい訳じゃなかったし。


 暫く呼吸を整え、おまけにミナモにマインドヒールを掛けて貰っていると、敵が倒れた。


 魔物の群れに囲まれながら、両手も魔力も無い中で、尋常じゃない健闘だった。

 正直、チアねぇよりも強いと思う。


 チラッとイベントインベントリを覗くと、そこにあったのは魔鋼の剣。確か魔鋼ってそれなりに高品質のレア物だった筈。ラッキーね。



「ミナモは何か出た?」

「何かの腕の欠片って言うのが出た。やっぱりボス級ユニットだったね」

「そりゃそうよ」



 こんなのがぽんぽん出て来られたら溜まったもんじゃないわ。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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