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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十五節 先達の攻略

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掌話 彼等のイベント 五

 



 門番と相対する。


 体の大きさ、使用する武器、耐久力、どれをとっても、そこらのドールの数倍は上。

 だけど、大した相手じゃない。操気も練気も出来ない程度、私の敵では無い。


 歩いて近付くと、射程内に入った事で、大きめドールは戦鎚を振り上げた。

 足と手に気を纏わせ、それが振り下ろされる前に懐へ入り、拳を叩き付ける。


 大きな音を立てて胴体が砕け散り、門番が門に激突、青い粒子になって消滅した。



「おぉ〜」

「はっやっ」

「凄ぇ」

「流石拳姫」



 ガヤガヤと騒がしい外野に振り返る。



「大きい獲物は私がやるから、雑魚はあんた達がやんなさい」



 返事を待たず、門へ触れる。


 了承の声と一部キモイ奴等の声を聞き流し、ゆっくりと開かれた門を見詰め——刹那飛び出して来た虎の顎を蹴り上げた。



「っっ!!?」



 咄嗟の蹴りで牙を逸らす事は出来たが、勢いそのまま突っ込んで来たそれは避けられないっ。



「くっ」



 ずしっと全身を潰される。


 金属の巨獣。重さはそれだけで脅威だ。



「ヨウっ! イグニッションクラッシュ!」



 マイトの攻撃に合わせ、気を纏い全力で虎を持ち上げる。

 張り付く様に起き上がるや、横に転がったそれの胸部へ気を宿した拳を叩き付けた。


 大虎は青い粒子になって消滅した。


 ちっ、余計な消耗をっ……!



「ヨウ! 大丈夫? 痛いところない?」

「この程度どうって事無いわよ、ハルキはこっちばっかり見てないで全周警戒なさい」

「アサヒがやるからいいの!」

「えっ俺!?」



 全くこの双子は……。


 チラリと門を見ると、開かれたそこから次々とドールが出て来ているのが見えた。



「……さっさと進むわよ!」



 ぼーっとしてる時間なんて無いんだから!



◇◆◇



 ——間違えない様にしなきゃいけない。



 今では第一陣と呼ばれ、たったそれだけの事でそこはかとなく上位プレイヤーっぽくなっている俺。


 実際の所第二陣の9万人には、既に第一陣のトップと並ぶ様な奴もいる訳で、第一陣なんて言葉は強さや正しさを担保する物じゃ無い。

 ま、多少は強いし正しいし理解しているだろうが、だからって人の上に立てる様なもんじゃない。


 俺なんて第一陣のトップ、大剣士にβの時から声掛けられてそれとなくついて回っただけの未熟者。

 サービス開始から付いて回ったからレベルも高いし物資もあるし、だから竜戦にも参加できて、武器も火竜素材の凄い奴を持ってる。ただそれだけ。


 ——間違えない様にしなきゃいけない。


 スキルレベルだって高い。スキル自体も充実している。戦闘経験も団体戦、レイド戦共にそれなりにある。


 それでも、間違えない様にしなきゃいけない。



 俺は強くない。


 レベルが高かろうと、スキルレベルが高かろうと、武器が優秀だろうと、アイテムが潤沢であろうと、それはあくまでも性能が高いと言うだけ。

 並の敵ではびくともしない防御力があるだけ。並の敵では耐えられない重い一撃を放てるだけ、並のダメージなら物ともしない回復アイテムがあるだけ。たったそれだけ。



 ——トップ連中は化け物だ。



 この一ヶ月、近くで見てきたからこそ分かる肌で感じたからこそ理解出来る。


 あまりに大きな一挙手一投足の差。


 ——達人だ。


 彼等は。


 ただ武を納めたと言う事では無く、その道を遥かに進んでいる。


 なんてったって面構えが違う。


 自信に溢れ、失敗を恐れず、成功に驕らず、痛みに怯まず、弛まぬ努力と理解の果てに前へ突き進み、成功を、いや栄光を掴む。



 俺なんて、その足元にも及ばない。


 戦いは見様見真似、指揮は付け焼き刃。痛みにも怯むし、ずっと前を向いていると疲れてしまう。



 あぁ、だが、それでいいんだ。



 ——間違えない様にしなきゃいけない。



 俺は大剣士達の様な強者じゃない。


 ゆっくりと、堅実に、例え牛歩であろうとも、一歩一歩踏み締めて行こう。



「門番撃破だー!」

「よっしゃー!」

「ぶいっ!」



 中堅パーティーにより、門番が倒された。


 俺は前に出て、声を張り上げる。



「ナイスファイト! 全員、城内へ進軍する、盾持ちは前へ! 投擲部隊はそれに続け! 先ずは陣地を確保するっ」



 さぁ、ここからが本番だ。





 堅実に、安全第一の陣形を維持し、陣地を確保する中、それは現れた。



「……あれ? ワンダリングボスだ!?」

「嘘だろ、鬼のボスが来たぞ!!」

「まじかよ……」



 いや、落ち着け! 来る事は分かってた。

 色のチケットに出現するワンダリングボスは10体前後だと言われてるし、確率で言うなら2〜3体程度と遭遇する筈。


 むしろ、1体で来た事を幸運と思うべきだ!



 先ずは——



「ボスを誘い込み、囲んで潰す! 陣地を縮小しろ!」



 合間を縫う様に何人かに声を掛け、内側に戻ってもらう。

 後は——



「ボスの道を開けろ、左右展開!」



 声に応じて直ぐに丁度いい塩梅で左右に寄る。俺でも直ぐに応じてくれる辺り、大剣士の教えは冗談抜きで偉大だ。


 俺は前に出て、挑発する様に戦斧を掲げた。


 これで乗って来ないのが、ワンダリングボスの恐ろしい所だ。


 だからこそ、次の手が必要になる。



「投擲部隊、破石用意! 目標、鬼のボス!」



 言うや、正しく聞いて、鬼のワンダリングボスは此方へ一息に駆け出す。

 早いっ、だが——



「——撃て!」



 打てば響く、頼もしい軍勢を背に、投じられた破石の行方を見下ろす。


 幾らかは飛び過ぎて鬼の後ろへ、幾らかは直撃、更に幾らかは鬼の前に落ち、その進路を妨害する。

 だが、もうこのレベルまで来ると、破石じゃ威力が不足する。鬼のワンダリングボスは衝撃に身を揺らしながらも、その鋼の肉体に刻まれる僅かな傷を無視し、一直線に此方へ駆け抜けて来る。


 その振り上げられた大剣に、此方も戦斧を合わせる。



「おらぁっっ!!」



 気合いの大声と共に、戦斧を叩き付ける。


 全力で互角、いや、押されてるっ、ボスってこんな物だよなぁっ!



「全員進軍! 囲めッ!」



 全体がそのまま移動しボスの逃げ場を塞ぐと共に、選出した盾持ちが集まり、ボスの背後から攻撃する。


 後はこのまま袋にするだけ、問題は新たなワンダリングボスが現れた場合だ。


 何も来ないよなと周囲へ視線を向け、気付いた。


 ——陣地内にドールが一体紛れ込んでいる事に。



 見逃し? いや、そんな——



 そこまで思考した所で、ようやく気付く。


 そのドールの周りにポッカリと空間が空いている事。


 そのドールの周りに、青い粒子が散らばっている事。


 そのドールの剣が真っ赤に染まっている事。



「ッッ!!? ボスだッ!!」



 達人ドール! 討伐実績が無い!


 くそっ、不味いっ!



「大剣士に連絡を——」



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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