掌話 彼等のイベント 四
門番。
それは他のドールより一際大きく強い、中ボスの様な存在だ。
あくまで感覚だが、攻撃力、防御力、反応速度、それらの総合力から見て、普通のドールの5倍は強いだろう。
そんな門番ドールに挑むのは、立候補制のジャンケンで勝利した、第一陣の大剣持ちだ。
武装は、第一陣でそれなりにやって来たと言うだけあり、継ぎ接ぎなんかじゃないしっかりした物。
武器は、おそらく大剣士との共同作戦で倒した火竜からのドロップ品。鎧は火山の迷宮の蟹型エリアボスから作られたと思わしき全身鎧で、能力強化系武技が付いているとか。実際持っている火竜の剣は赤いオーラを纏っている。
まぁ勿論、大剣士の強化系武技、ドラゴンネイルには劣るが。
と言うかまぁ、大剣士なんて剣だけで3つも専用武技付いてるから、劣るのは然もありなんと言う奴だ。
大剣持ちの男は、戦斧持ちだった門番と数合打ち合い、焦れた男が専用武技、大剣士のそれと比べると1、2段劣る様に見えるドラゴンクローを使い、門番の戦斧を弾き飛ばした。
そうと思った次の瞬間には、僅かな技後硬直に蹴りを叩き込まれていたが。
今の威力なら怖れずもう一歩踏み込んで、根本からカチ上げて吹っ飛ばせば良かったな。
そうすりゃ技後硬直が収まるまでの時間稼ぎは出来た。
まぁ、これが生身だったら腕が痺れるなりして怯んで技後硬直ギリギリに間に合うんだろうがな。
蹴りの直撃を受けて吹っ飛び転がった剣士は、直ぐに立ち上がり、取り落とした剣を拾うか暫し悩んだ末、即座に斧を拾いに行った門番を止めるべく駆け出した。
まともに受けた割にダメージは3割程度。鎧の性能のおかげか蹴り程度だったからか、ともあれ仕切り直しの回復はせずに挑む事にした様だ。
繰り出したのは、体術の武技。
オーラを纏う拳が門番の腕と衝突し、それを破壊。門番を押し飛ばして技後硬直に入り、解けるや否や迫っていた門番の蹴りに蹴りの武技を合わせた。
その後は、全然なってない体捌きを武技の威力で補い、残HP4割程度まで削られて門番を撃破。門を開き、天守へと攻め入った。
◇◆◇
戦車の弩弓で門番を吹き飛ばし、城壁を突破、勢いそのまま周辺の殲滅を開始した。
何せ囲まれた状況なもんで、必然此方側が常に少数を強いられる。
その状況を長引かせれば、やられる奴もいれば疲弊する奴もいるし、物資面や残MP、HP等の総合的な消耗が大きくなる。
んなこたやってられないから、最初にやるのはお決まりの石投下だ。
もう傷石程度では大したダメージにならないので、全メンバーは破石以上を持っている。
そんな破石投下を3回程やって橋頭堡となる陣地を確保。大盾持ちの防御力で即席の壁を作り、モンスターカードの従魔を壁外に召喚して敵を引き付け、槍持ちと遠距離で手前のドールを撃退。
それをジリジリやって陣地を広げ、百数人の戦力をほぼ無傷で壁の中へ入れた。
さぁ、此処からって所で、奴が現れた。
「っ! 2時の方向、牛! 左右へ退避でござる!」
「ミヨ!」
「装填完了! いつでも行けるよ!」
「必中だ! 撃てっ!」
そもそもこの状況じゃ外す方が難しいと言えるだろう。
此方へ真っ直ぐ突進してくる大牛に、土の爆石を取り付けた矢は予想通り着弾した。
金属の頭部に深々と突き刺さった矢は、少しの間を経て——爆発。
「やった!」
「やっぱすげぇ!」
そんな声が其処彼処で上がる中、大牛は煙を裂いて現れる。
それも、大きなダメージになったからか、軌道が大きく逸れ、突っ伏す様に突っ込んで来ている。
これは不味いぞ——
退避の送れている盾持ち達が何人か吹き飛ぶの幻視した刹那、鎧の男が1人、他を押し退ける様にして前に出た。
「アイアンシルド!」
頭鎧でくぐもった声、盾と全身に広がった淡い光。
地面に叩き付ける様にして押し出された大盾と大牛は衝突した。
「ぐ、おおぉぉっ……!」
男は呻く様な声を上げ、地面をガリガリ削って押し込まれる。
しかし、それも長くは無い。
大牛は地面に押し付けられる様にして転び、1メートル程度押し込まれた所で停止した。
中々やるっ。盾をやや下に向ける事で元々崩れていた体勢を更に崩し、転倒を誘発した。
武技のアイアンシルドは盾術レベル20で取得出来る奴だが、上手く使いこなしたな。
ともあれ、と陣の内側に入ってきた牛へ集中攻撃を指示しようとした次の瞬間、鎧の男は背負っていた戦鎚を振り上げた。
「グラウンドシェイク!」
振り下ろされた戦鎚は半壊した牛の頭部に直撃——爆砕。
胴体まで及んだ爆砕は大牛のコアを粉砕した様で、牛は青い粒子を振り撒いて消滅した。
鎚術25の武技、グラウンドシェイクは初動が遅く、本来は地面をぶっ叩いて広範囲を揺らし、短い技後硬直の後他の武技を当てる、所謂スタン攻撃だ。
他と比べて隙も大きい訳だが、直撃させるとこれ程の威力があるとはな……。
「よくやった! 皆、落ち着いて隊列を立て直せっ!」
敵も味方もガチャガチャと動き出す中、知り合いと思わしき何人かが男の背を叩いて回る。
ここ数日今まで目立っていなかったプレイヤーが頭角を現して来ている。
これはオブザーバーのクロギリさんを実装したからに相違ない。
今後はもっとずっと、とんでもない高みまで、プレイヤー全体が強くなるだろう。
……まぁでも、PVの銀の天使達みたいになれるのはまだまだずっと先だろうなぁ。
なんせ城壁素手でボコボコにしてたからな。




