掌話 彼等のイベント 三
安全地帯にレンタルテントを設営した。
ちょっと大きめのファミリー用テントだけど、ぱんきちとか皆使うからちょうどいい。
「ニコちゃん、寝袋と毛布どっちが良い?」
「こぬかねぇさんが決めて良いよー!」
「じゃあ寝袋で」
テントの端に積んでおいた資材が幾らかパッと消え、代わりに寝袋が現れる。
置いておくだけで取り引き出来るのほんとに便利だなぁ。
不用心じゃーん? と思ったけど、ちゃんと管理されてるみたいだし。流石バーチャルって感じ?
リアルもこうだと良いんだけどねぇ。そしたら買い物も出来るのに。
そんな事を思いつつ、メモのウィッシュリストを開き、友達とキャンプ、友達とお泊まりの2つに斜線を引く。
枕投げは……枕が無いし、お風呂も温泉が無いし……うーん……自分で作る?
「ニコちゃん、お夕飯行きましょ」
「あーい!」
皆でバーベキュー、達成だ!
◇
やって来ましたバーベキュー場。
椅子と机にバーベキューコンロ! 鉄板焼きに網焼きに焼くだけの食材!
既にあちこちから美味しそうな匂いが漂って来ている……!
「おーぅ、既にやってるぜぃ」
そんな声を掛けて来たのは、アイ君。多分歳上!
「こっちはもうちょっと掛かりそうです」
スピ君が作っているのは、大量の焼きそば! イベントインベントリで明日に持ち越せるもんね!
後はソラ君となっきーがとうもろこしを焼いてる。
んふー、色んな物が焼ける香ばしい匂いとソースとか醤油のお腹が空く匂いが混じって……もう涎が出そう!
「火ぃ付け方分かんなかったから棍で付けた」
「情緒の無さよ……炭に火を付けるのもバーベキューの醍醐味なのよ?」
「付属の種火のスクロールを使ったんですけど火が付かなくって」
スピ君が使用済みのスクロールをペラペラさせる。
使用済みは中の模様が無くなるから直ぐに分かるんだよね。で、使用済みも安いけど買い取ってくれる。
「ふーん……あぁ、着火剤……」
「チャッカザイ?」
「なんでもない」
炭の入った箱を覗き込んで何か言ったこぬかねぇ。
チャッカザイ、着火…………なんでもないらしいので良いとして——
「——私も焼きたい!」
「おぅ! 焼こう!」
先ずは肉から焼けば良いのっ?
◇
お肉は後で、野菜が先。お肉は後で、野菜が先。お肉は——
「ニコちゃん?」
「あ! ごめんこぬかねぇっ、考え事してた!」
お湯の入った桶にタオルを放り込み、じゃばじゃばやって絞ってから肌を拭く。
これ、やるとやらないとじゃスッキリ感違うからね!
ぐしぐしと体を拭いて、頭もぐしゃぐしゃする。
ほくほくのお野菜に熱々のお肉、旨味の染みた焼きそばと甘じょっぱい焼きもろこし!
お腹いっぱいご飯も食べれたし、後は寝るだけだね!
そ•の•ま•え•にっ!
「……こぬかねぇ、お背中流すよー?」
「それじゃあ折角だし、お願いしようかな?」
「へーい! 一名様!」
うへへ、後で友達とお風呂の欄を消しておかないとね!
こぬかねぇはサラッと長い髪を束ね、肩に回す。
私は伸びっぱなしだから短くしたんだけど、これなら長くても良かったかなぁ?
あったかいタオルを背中に当てて、軽めにぐしぐし擦る。
インナーは少しずらせるから、そこら辺もちょこちょこ拭く。
「かゆいところありませんかー?」
「擽ったくはあるかしら? 店員さん、もっと強めでお願い出来ます?」
「へい! ただいま!」
「後でお返しするわね」
「いぇいっ!」
◇
しっかり休んだ翌朝、私達は城門の前に集まっていた。
前に立っているのは、カイトさんだ。
「全員、聞いてくれ」
スッと抜ける様な、それでいて重みを含むその一声で、皆が静まり返った。
「今日の予定を再確認する」
そう言いながら、カイトさんは門を指し示した。
「先ず、今から数分後にアレを倒す。続いて広場と城壁を制圧、昼休憩を取った後、門番を倒し天守へ攻め入る。以上だ、幾つかの注意点は知っての通りだが、何か質問は?」
まぁ、特に無いよね?
事前に話があった通り、ワンダリングボスにだけ気を付ければ、後は大体予定どーり!
もうすぐイベントの山場だね! 張り切っちゃうぞ!




