第25話 孤児院にて
第四位階上位
孤児院が見えて来た。それは廃墟だったまる。
……そこそこ広い敷地内には二つの建物がある。
教会と倉庫の様な廃墟だ。敷地は申し訳程度の石壁で分けられ、中では子供達が駆け回っている。
子供達の中には、銀髪の身なりが良い女性と、同じく白っぽい髪の侍風の女性がいた。
侍風の女性に違和感を感じたので良く見てみると、魔法で巧妙に隠されているが、頭には犬の耳が腰からは尻尾が生えている。獣人かな?
気になってじーっと見つめていると、その侍風の女性と目があってしまった。
と言うか、背を向けていたのに急に振り返って僕を見た。
コスプレなどではなく、間違いなく戦闘経験があるつわものだ。
とりあえず手を振っておく。
犬耳侍さんが此方に手を振り返し、それに気付いた子供達が僕を見て、腰を抜かした。
僕を、と言うより、ウルルを見て驚いたのだろう。
俄かに騒がしくなった院内は子供達と身なりが良い女性が教会に入り、残ったのは犬侍さん。
警戒しているのか、耳をピンと立てている。
ウルルから降りて、犬侍さんの方へ向かう。
「こんにちは、ギルドの依頼で来ました。今日はよろしくお願いします」
「む? 冒険者か。私はビャクラと言う。故あって此処に立ち寄った身、用があるならば中のしすたー殿に聞くがよろしい」
「はい、わかりました……私の名前はスノー、そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ」
「ぬ?」
犬耳侍さんは一応部外者らしい。
子供達にとても懐かれていた様に見えたので、身内かと思ったのだが……。
侍風のコスプレっぽい衣装を着ているが、どうにもこのメイド服と似た様な匂いがする装備だ。
ニコリと微笑んでから名乗り、ついでにニコニコしながら両手で犬耳を模してみた。
普段の僕ならやらないが、スノーだとこう言う事をやる。
犬耳侍さんは動揺し、手で耳を隠したが、勿論魔法が解けている訳ではない。
ウルルに敷地内で待つ様に伝え、犬耳侍さんの横を通過して教会の門をノックした。
教会の形を見るに、礼拝堂は建物の少し奥にあるらしい。
教会の門にはノッカーがあったのだが、ボロくて今にも外れそう。と言うか外れた跡が散見されるので手でノックした。
待つ事数秒、教会の門がゆっくりと開かれ、出て来たのは二十代くらいの金髪お姉さんである。
ゆったりとした修道服を着込み、雰囲気はふんわりとしている。
「こんにちは、ギルドの依頼で来ました、冒険者のスノーと申します」
「まぁ、可愛らしい子が来ましたねぇ! 子供達が大きいもさもさなんて言うから、てっきり熊みたいな男の人かと思ったのですが……」
大きいもさもさ、つまりウルルの事だろう。先に紹介した方が良いか。
「大きいもさもさならあちらに……相棒のウルルです」
「まぁまぁ、立派な狼ですねぇ、スノーさんと同じで銀色なのね」
十分巨大と言える狼のウルルを前にしてこの表情。大した胆力である。カタギじゃないな?
教会の中に入れて貰うと、食堂らしき場所に案内された。
其処には子供達がたくさん居て、銀髪の身なりが良い人もいた。
お茶を頂きつつ、今回の仕事内容を聞いた所、直せる物は何でも直して欲しいとの事。
つまり、孤児院の修繕とは孤児院を建て直す事に等しい。低賃金なのは善人を搦めとる為の罠だった。
だがまぁ、先程手に入れた廃材があるので、それを使えば、足の折れた机だろうと穴の空いた鍋だろうと、擦り切れた子供服でさえ万事抜かりなく元通りである。
ついでに、シスターと後から来た犬耳侍の観察もしておいた。
先ずはシスター。名前はアルメリア。シスターアルメリアである。
長い金髪に翠玉の瞳の美人さんだ、物腰は穏やかで子供に良く好かれている。
身長はユウミより少し高いくらいで、体型は全体的にほっそりしていて胸がデカイ。足元が見えていないんじゃないかと疑うレベルだ。
そんな豊満な体を包む修道服は、通常の清廉な物ではなく、所々に目立ちにくい装飾が施されており、裾のレースが可愛らしい。
更に詳しく見ると、その装飾は全て術式の類である事がわかる。
つまり只者ではない。
続いて犬耳侍。
名前はビャクラ。
長い白髪を通常より高い位置でポニーテールにした金色の瞳を持つ美人さんである。
身長はセンリと同じくらい、胸のサイズもセンリと同じくらい、ついでに性格もセンリと同類のお人好し。
来ている服は侍風の袴っぽい物で、修道服同様其処彼処に魔法的な装飾が施されている。何処と無くコスプレっぽい装備だ。
勿論、佇まいからして常人のそれでは無い。
仲良くなっておいて損はないだろう。
とりあえず仕事に取り掛かろう。




