第44話 大神と旧神
第八位階下位
「遊技神ってどんな神?」
「さて、な……既に滅んだ神だから詳しい事は知らないが——」
「ふむ?」
ふむむ? 滅んだ神……?
「——大神級の神で、物語を愛し、穏やかで物静かな虹の神性の女神だったそうだ」
「ふむむ?」
む? むむ? むむむ? むむむむ? むむむむむ?
「?????」
「滅んだ原因は、黒き太陽と呼ばれる邪神。遊技神群はそれと戦い、多くの神々と世界が一息に滅ぼされた」
「そ、そう」
「その後更なる進軍をする邪神を打ち払ったのが、我等が金色だ。遊技神群の幾らかの生き残りも、我等が金色が仲間として受け入れたらしい」
「ふ、ふぅむ」
ちょっとまって、今直ぐには処理し切れない情報を処理してるからまって。
えーと? 穏やかで物静か? 虹の女神……? いやまて、物語を愛すると言ったか? 確か遊技神に貰った神核の名前はストーリーテラーと名付けられていた。そこに関しては符合はする。
大神級との事だが、奴の話だとそれを超えた第十二位階だとか何とか……正直僕の物差しでは測れない相手だから何が真実なのか分からないが、かつて邪神と戦い、生き残ったならば成長していても不思議ではないか?
……いや、性格や神性に一切符合する点が無いならば……邪神との戦いで皆滅び、その魂が寄り集まって神化したんじゃないか……?
……いや、それ以前に、遊技神群を率いていた遊技神では無い可能性すらある。
なりすましているのか、たまたま符合しただけなのか、はたまた本人なのか、本人達なのか……分からない……分からないが、一つだけ確かなのは——
——この神は、遊技神がこの世界に潜んでいる事を知らない。
さっき大神の支配領域がどうとか言っていたが、遊技神の言葉が事実なら遊技神は第十二位階、即ち大神を凌駕する神。であれば大神の監視網を潜り抜ける事は可能、かも。
とすると遊技神は隠れて——いやまて、僕には金の神の加護が付いてる。金の神は委細把握している筈だ。
それで放置していると言うのなら、問題なぞあるまい。うむ、安心。
……とは言え一応、金の神と遊技神を含む十二位階の情報を聞いておこう。多分殆ど聞こえないだろうけどね。
「……第十二位階について聞いても良いかな?」
「十二位階か……大神より上の神と言う事は知っているだろうが、彼の神性に正式にコレと言う名称は無い」
「ふむ」
「呼ばれ方は様々だが、特に耳にするのは……神を理とし、その神々を使役するが故に万理神。または万世を統べるが為に大世神。後は神を柱と数えるが故に大柱と呼ばれる事もあるし、単に極神と呼ぶ者もいる」
「ふむふむ」
万理神か大世神か大柱に極神ね……長い時が経ってるのに決まって無いって事は……例の崩壊世界の様によく分かってないか、決める必要がないからだろうが……果たして——
「呼び方が定まらないのは、十二位階に至った者が歴史上4神しか顕現しなかったからだ」
「ほう?」
……歴史上? 神々の歴史上、それも間違いなく過去は調べているだろうから、それこそ幾星霜。星の生誕と消滅が瞬きとすら言える様な時間があった筈だ。
その中で、たった4人?
「現代に存在する十二位階は我等が金色のみ、だから呼び方も特に無い。呼び分ける必要が無いからだな」
「んむ」
……やっぱり遊技神は認識されていないのか……金色の神が何も言わないのなら、それなりに理由があるのだろう。
ダモスの件から考えると、この世界を管理支配しているらしい大神のうさぎは遊技神の存在を把握している……と思う。
と言う訳で、僕は気にしない事にしよう。未だ神ならざる僕に神々の、それも大神を越える神性の事情など計り知れない。
その件に関して僕は遊技神を殴る事だけ考えておけば良いのだろう。
遊技神より話の続きだ。
「十二位階に至ったとされる4神はそれぞれ……存在したのは間違いないとされる創世神、ーーの神。創世神と何らかの関係があると考えられている神、ーーの神。それから旧神時代に大分裂を引き起こす最大の要因となった神、ー神。そして我等が金色」
「大分裂、ね」
旧神時代はよく分からないが、引き起こすとか十二位階とか言ってるし、相当大変な事が起きたのだろう。
「大分裂は大崩壊や終焉の日とも言われる事がある。後に旧神時代と言われる一つの時代が終わった大事件だ」
「ふんむ」
「薔薇の邪神ルクロザイアも、その一因となった事が分かっている。何でも、大派閥であるー神に攻撃を仕掛け、ー神がー神を討つ切っ掛けになったとか」
なんちゃら神うんちゃら神が何かは分からないが、世界が壊れる程に大きな神々の戦いが遥か昔に起きていたと言う事だけはっきりしている。
大崩壊や大分裂という言い方から、神々の戦争はもしかすると、単に複数の世界が滅びたのでは無く、神足る存在が縄張りを主張して尚余りある程の広大な世界が滅びたのかもしれない。
「戦争の原因は?」
「有力な説はー神が始まりの神を呼び起こそうとしたからだとする物だ。ー神の骸の残骸からーーの神の物と目される痕跡が発見されたかららしいが、一方でー神がーーの神の怒りに触れたからと言う説もある。どちらにせよー神が何か大きな事をしようとして、他の神を巻き込んだ大戦が起きた様だ」
「ふむふむ」
滅んだ神がどんな神かは知らないし、その情報が始まりの神の存在の根拠だとしたら実在したかどうかさえ怪しいし、何かと眉唾だし、なんならまだまだ調査中っぽい。
それってつまり、情報の信憑性はいまいちで、そして何より、何よりも——
——未知がある……!
「……どうやらお気に召した様だな」
「……まぁね」
あまりにも広大な未知だ。
実在の可能性だけが仄めかされ、実際に調べられていないのは、そこに危険があるか労力が必要だからだろう。
正におあずけ。ぶら下げられた餌を前に待てを命じられた犬。
いやまて、落ち着け僕。旧神時代の情報を彼が与えられていないだけの可能性もある。
大切なのは、餌の消費期限がどれほど残っているかだ。このままではセルフおあずけ。間抜けな絵面である。
「……旧神時代の調査の進捗はどう?」
「旧神時代の痕跡はあちこちの世界に散らばっている。しかし、その大部分は世界の終端、崩壊せし世界に存在すると考えられているらしい」
「並の神は数日で気が狂うとか言う?」
「あぁ、実際に大神が調査に赴いた際に、ー神の物と断定出来る痕跡が見つかったらしい。何でも戦いの中で切れた指先の一部で、数えたら518里あったそうだ」
「ふむ」
518里、ざっと2,000kmか……いや、2,000kmの指先って、なんたら神って絶対に巨神じゃん。
指先がどれくらいを指すのか分からないが、少なくとも第一関節より先だろうから……ざっと地球は小さめな地球儀と言った所だろう。
指先とか言って本当に先端だけだったらその限りでは無いが。
ともあれ、猶予時間はありそうだ。




