第41話 薔薇の精霊……?
第八位階下位
次に向かったのは、花精のいる大型建造物。
六角プレートに触れるや、飛ばされた先は広大な薔薇園だった。
咲き乱れる薔薇は様々で、赤や青、黄、白等々、足の踏み場も無い。
そんな薔薇園のあちこちで、薔薇に紛れて無数の薔薇精がいた。
ルクローサ・エンプレス LV650
ルクローサ・クイーン LV600
ルクローサ・プリンセス LV500
並び立つクイーンとエンプレスは先も見た様な光景。
総数は、エンプレスが1体、クイーンが10体、プリンセスは100体だ。
ジェネラルの様な個体がいない点を差し引いても、総エネルギー量では此方がやや上回っている。
緑に赤のアクセントが目を引くドレスを着たエンプレスとクイーンは、先の蜂達の様に綺麗な所作でカーテシーを決め、緑にそれぞれの薔薇の色を装飾したプリンセス達はそれに続いた。
笑顔でするりと前に歩み出たエンプレス。歳の頃は20前後か、先の蜂の女王より若干若く見えるが……蜂の女王はキリッとしてたからだろう。
「はじめまして、私は薔薇の邪神ルクロザイアの魂片を継ぐ者、ーーです」
「うん、はじめまして」
差し出された手を握る。
今、薔薇の邪神って言った? 悪神じゃなくて?
「もしルクロザイアかその前身、ルクロジアの魂片を見つけたら御一報ください、言い値で買いますよ!」
「ふんむ、分かった」
つまり、薔薇の邪神ルクロザイアは邪神に堕ちる前は薔薇の神ルクロジアで、この名称不明な薔薇の神はそのルクロジアの力を継承している、もしくはルクロザイアの汚染されていない部分を継承しているのだろう。
……でないと反エネルギー量に応じた魂が消失してしまう筈だからね。
薔薇の神に類する物か、何かあったかな? そう考えながら微笑んでいると、ガバッと引き寄せられ、抱きしめられた。
「今日はよろしくお願いしますね」
「もがもが」
せめて喋れる様にして欲しい所である。
取り敢えず心当たりも無いし、配下の子達を召喚する。
先ず、薔薇精達の性質だが……樹精の亜種である花精なのに、やたらと打属性の性質が強く感じられる。
この事から、戦闘スタイルは超近接型、高い生命力に物を言わせた再生と防御力で殴るスタイルであると考えられる。
召喚するのは、超近接型の配下。
ラース君、ルーベル、キース君、紅花、アニス、仙蟹人、熊からヴェルゲオン、吸血鬼からレミア、リアラ、アスフィン、英雄からオリンガ。
この11体の内、誰をエンプレスに当てるか悩んだが、ラース君を送り出す事とした。
彼には厳しい戦いになるだろうが、適正な試練だ。
残りの100体のプリンセスに当てるのは、アルフ君の部下である元ソルジャーのゴレム30体。
一人頭3.4体のプリンセスを相手する必要があり、基礎スペックが圧倒的とは言え練度で大きく負けているので、事によっては負け得る相手だ。
いざ尋常に、勝負と行こう。
……ところでいつになったら離してくれるのかな?
◇
ゴレム達とプリンセス達の戦いは、破壊力と防御力の衝突であり、破壊力と回避力の力比べであった。
ゴレムの殆ど人と変わらないながらも強靭な鋼の肉体に、同じく強靭なプリンセス達の拳打や蹴撃が打ち付けられ、生じた歪みや罅は再生力を励起して即座に治癒する。
一方武器縛り中のゴレムの拳は、十分な破壊力を持って振るわれる物の、3人から4人のプリンセスによる連携を前にしては擦りもしない。
流石に30対100とあっては此方の連携は上手く行かず、各個撃破される様な形で囲まれているのを、自前の防御力と膨大な貯蓄魔力で耐え凌いでいる形だ。
ざっと見た感じ、似た顔をしているプリンセス達にもそれなりに個性はあり、蔓の操作に専念した妨害特化もいれば、肉弾戦に特化した者もいて、針が鋭いのもいれば毒液を使う奴もいる。
個性があると言う事はムラもある、暫くは膠着状態が続くだろうが、それもそう長くは無い筈だ。
吸血鬼3人とクイーンの戦いは、それぞれ全く違った様相を呈した。
1番まともに戦えているのは、セバスチャンの愛弟子、リアラ。
血を自在に操りクイーンの肉体を侵食、同時に槍や剣として傷を刻み、打撃に対してはサンディアの様に、自らの肉体を流動体として受けて流す。
一方アスフィンは、リアラ程極まっていない操血術で攻撃を受けて流し、剣術と体術でクイーンと渡り合う。
他方レミアは、並外れた肉体性能と操魔力による体術でクイーンと互角、更に操血術と操影術を掛け合わせて事実上の圧倒をしていた。
レミアは生来のポテンシャルに認識が追い付いて来て、最近どんどん良くなっている。
それでも何故かサンディアには及ばないのだが、それは置いておいて、鼻っ柱が伸びて来てるからそろそろちゃんと剪定しないといけないだろう。
その点、アスフィンは単なる天才だが努力家だし、放っておいても勝手に強くなるから良いね。
手が掛かるのも掛からないのも、等しく愛おしい物だ。
ルーベル、キース、紅花、アニスの4人は、ほぼ順当と言って良い優勢だ。
キース君が少し、やや、そこそこ劣るが、それでも単純な体術戦闘には付いて行けている。
クイーンの持つ体術以外の力とキース君の基礎スペックがギリギリで釣り合っているからだ。
まぁ、詰まるところ練度で劣るが性能で補っている状況。
これは成長せざるを得ない。補われていると分かるからこそ、悔しい。
ちょうど良い負荷である。
ルーベル、紅花、アニスは、基礎スペック、技量共に高水準であり、片やスピード、片やパワー、片や総合力で、クイーンを圧倒していた。
アニスはスピードやパワーこそ他の2人に劣っているが、それが気にならないくらいにはスピードとパワーを技に昇華している。
キース君同様、技に昇華出来ているが故に技で劣る事は分かっているだろうから、僕としてはうまうまである。
英雄のオリンガ・バランガ・リーベラリオは、極めて強力な弾性を持つ肉体を盾に、クイーンの打撃をほぼ無効化……とまでは行かない物の、受けたにしては消耗が圧倒的に少なく、反撃の拳はクイーンの防御を貫いてダメージを残す。
その巌の様な存在感は、何処かレーベやシスターアルメリアに似ている。
現時点での実力は…………例えば白夜とかルムとかに劣るが、白夜とかルムに比べると頼もしさが段違いである。
やはり、大地の様な不動の芯と、柔らかく雄大な愛が…………チビ達には足りないのだ。
まぁ、伸び代があると思っておこう。




