第40話 黄金の蜂とばくはつ
第八位階下位
《【運命クエスト】『桜雲の剣:琥珀宮』をクリアしました》
ただの取り巻きと思えた蜂達も、彼女等なりの最後の一刺しを繰り出し、同格たるサンディアの配下とほぼ相討った。
元々魔力が一定量割り込むと、どんなタイミングでも使う様にしていたのだろう。
中にはここぞと言う好機に針を打ち込み勝利を手にした蜂もいたが、殆どは魔力残量が同じくらいの時に針を放っていた。
一方竜寝殿の面々はと言うと、概ね予想通り、ロノ・クラーレは受け流し切れず致命打を負い、更には魂にまでその影響を響かせながらも力を振り絞って戦い抜いた。
ガダ・グリオンは上手く誘導されて竜玉を一撃で4割ぶち抜かれ、魂に損傷を受けながらも、残魔力が殆ど残っていないクイーンを追い詰めた。
カラバス・ディーモンは互角の様相を呈していたのも束の間、抵抗虚しく必殺はコアをぶち抜き、それと同時に魂を燃やす勢いで毒針をクイーンに当てて相討ち。
途中から相討ち狙いに切り替わっていたのをクイーンも気付いていた筈だが……竜玉を持つが故のスペック差で避け切れないから、ならばと敢えてクリーンヒットさせてくれたのだろう。
バン・バラバスに限っては、正しく番狂わせ。放たれた必殺の針を対の鎌で挟み込み、力の限りそれを受け流した。
結果的には受け流し切れずに肩を抜かれて腕を落とす事となったし、当たってしまったが故に毒属性は魂にまで響いたが、それでも肉体的損傷は最低限まで抑えられ、余力を少し残してクイーンを撃破出来た。
他方、サンディア軍幹部は、何の事もなく余力を残して勝利した。
大焦僧は、その身を炎へと変じさせ、魂の消耗はともかく肉体損傷無く必殺を受け、そのままの勢いでクイーンを討った。
塞鋼凱は、敢えて硬化の類を発動させずにその身を貫かせ、即時再生してクイーンへアタック。再生にやや手間の掛かる部位を貫かれた為行動にラグこそあったが、それでも魔力残量の心許ないクイーンは避け切れず、討伐。
崩天稜は、白雪や氷白と同じ様に氷の閃光を放つと共に、氷の盾を幾重にも張り、体に鎧を纏って針を逸らし、肉を削がれるに留めた。
猛冥導は、元より強靭且つ毒に耐性がある為、平然と針を受け、体内の半ばでそれを止め、剰え毒の解析まで始めつつ、クイーンを撃破した。
怨翳虎は、猛冥導同様に直撃を敢えて受けたが、他と違う点は、受けた肉体がダミーであったのと、魂から切り離し済みだった点。
つまるところ、事実上の無傷に等しい。実際は縁を通じて肉体、魂共にダメージが伝播していたが、他の誰よりも消耗少なくクイーンを撃破した。
しおるんはばくはつした。
……汐流无は、光属性と聖属性、闇属性に適性があり、光と闇をある程度操って、毒耐性と再生力に物を言わせてクイーンに優勢を保っていた。
その前提で、悪魔獣の基本的特性として捕食吸収、捕食再現等の捕食系能力を持っており、御し切れると判断したしおるん、汐流无は……針を食べた。
——爆発した。
……でも多少は吸収出来た様で、毒や攻勢意思も拡散したし、結果的には威力減衰で分散で受け切った形にだ。
四散した肉も流石の再生力で直ぐに元通りになったしね。
一方サンディア軍のボス、サンディアはと言うと、シアを圧倒した。
シアも武威、操魔、極めて強靭だが、スペック的に大きく優る上に練度に置いても仕上がっているサンディアを前にしては、どうしてもスペック不足。
それを技量で補っていたが、追随して来るサンディアを抑え切る事は叶わず、必殺を放つ事となった。
繰り出されたのは、見渡す限りの針。
一撃では無く範囲攻撃であり、その全ては縁を辿って繋がっている。
つまり、一つでも当たれば魂に重大な損害を与えられる訳だ。
勿論、みてくれが分散している他、縁を辿る必要がある点から見ても、同格の1発の針には及ばないが、それにしたってほぼ必中である。
サンディアはそれを敢えて全弾受けて文字通り蜂の巣にされたが、あちこちから魂に迫り来る毒の処理を丁寧に熟し、難なく針山を超えてシアを討った。
最後に、アルネウムとアン。
順当に回避と防御に専念し、時折強打を放つアルネウムに対し、アンもそれなりの威力の針を使って対抗した。
そんな戦闘の中で、アルネウムの攻勢城塞は着々と構築され——立場は逆転した。
あちこちに張り巡らされた網はアンの動きを阻害し、誘導された先では無数のトラップがアンを襲う。
アンがそうこうやってる内にアルネウムはどんどん罠を設置し、アンを完封。
放たれた針……と言う名の巨大な何かは、拡散するエネルギー波により攻勢城塞の半分を消し飛ばし、それ様に張られた多重の防壁を貫いてアルネウムの横をすっ飛び——当たりに行ったサンディアが剣先で受け止めた。
形成された巨大な円錐は、迅斬術の真髄を体得したサンディアの体捌きと剣技で完璧に受け止められ、魔力分解されて消える前にしおるんの口へねじ込まれた。ばくはつした。
急いで飲み込むからそうなるんだよ。もっと丁寧にやらないと。
クリア報酬は、スキルポイント19P。進化ないし成長アイテム『千年蜜晶』『百年蜜晶×10』。うーたん飴の上位互換で、エネルギーと愛と生命が宿っている。
それから、矢尻型のアイテム生成系武器『黄金死毒針』『黄金猛毒針×10』。ヒメの竹刀や天道系と同じで、下位互換の武器を生成するアイテムだ。
性能は大部分を占める生産系を除けば毒と突属性の細分、刺属性で構成されており、それ自体を矢として消費する事も出来る。
生産される物は矢尻だけではなく、直ぐに使える矢の形状で出て来る。錬金術の上位変換に対応している為、確率で上位の毒針を生成可能の様だ。
生産可能なアイテムは、『黄金死毒針』『黄金猛毒針』『黄金毒針』『黄金針』の4種。使い捨てのアイテムで威力も高いので、大量にストックしておこう。
最後に、レイピアの様な片手刺突剣『夜桜千針』。攻撃時に任意でプリセットされた針を虚空から射出出来る武器。
例によって手数型に見せ掛けた、縁で繋がる一撃必殺の刃である。
……報酬は約束出来ないなんて言っていたが、百年蜜晶だってレベルにして400〜500くらいのエネルギー量があるし、急拵えにしては中々悪くない報酬だった。
尚、それ以外に得られた情報が一つ。
次の相手は、エンプレスであるアンの親友らしい。
爽やかお姉さんであるシアが一番最後にパチリとウインクして消えるのを見届け、サンディアの部下含む配下の子達を労って送還してから、琥珀宮を後にした。
……皆もシアみたいな魅せる動作をもっと積極的に学び取って欲しい物である。




