第34話 味方強化してるだけだから
第八位階下位
天使達の教導を終え、手慰みにシャルロッテを治療したり他色々していると、日が真上に来る頃に皆が帰って来た。
今回の戦果は、城塞のアルベルト、竜殺のエミリー、秘奥のシスカ、詩仙のエブラィジュ、僕メイクドール1号の5人と、ドール16%。
被害は、アッセリア、ノーレル、レイ、リムの4人。
強化し過ぎたノーデンスに相対したのは、大罪と戦闘経験のあるルム、ルカナ、桃花の3人。
ノーデンスのパラメータはヒナより少し高めに設定されているが、それより何よりエネルギー源たるドールの群れを率いていたのが問題だ。
防御に徹し、弱体化とエネルギー吸収に励むノーデンスを前に、3人を持ってしても攻めきれなかった。
神気を操作すれはその限りでは無いだろうが、兎にも角にもドールの存在が邪魔過ぎたのである。
また一方では、ついに敵ナハトロンが接近戦を開始し、ノーレルと衝突、数日分の仕込みと巧みな槍術を前に、ノーレルは防戦一方に追い込まれ、敢えなく討ち死にした。
他方、根絶のギランは、流石に数度目とあって学習し、ナハトロン同様手を変えて来た。
森を焼き、勢いを強めながら襲い掛かる無数の炎蛇を撃ち払ったのは、白夜だ。
ドールからの補給を得ながら消耗戦を強いるギランを、白夜は単独で抑え続けた。
また、紅花はその護衛を務め、襲い来るドールを撃退していた。
他方、アルベルト、エミリー、ヴァーミュラー、ナーヤの4人は師弟で戦列を組み、アッセリア、レイ、ナハトロン、リオンの4人がそれに対抗した。
連中には神癒のヴィオレッタや秘奥のシスカ、詩仙のエブラィジュの支援があり、結果を見れば2人の犠牲で4人を仕留めた形だ。
他、僕メイクドール2体とタンブラには、同じくドールの系統であるクラウ、闇に適性のあるリム、耐久力の高いレスタが相対、時間稼ぎを担った。
皆が手こずり、敗北を喫する最大の要因は、投入する戦力が常にぎりぎりだからだ。
本来ならば十分な戦力を一気に投入して処理する所を、常にぎりぎり……生き残れるか否かのラインを攻めたので、必要な力は戦闘力では無く実は逃走力、またの名を生存力。
それが無い者の代償を払うのは、その者を愛する者と言う訳だ。
レーベに然り、ルーレンに然り、リムに然り、仲間を守ろうと命を賭けたレイやノーレルにもまた然り。
まぁ、守られた皆はしっかり落ち込んでいるので、無駄の無い死である。
そんなこんなで昼食を終え、少しの補給と休息を経て、戦列にオルメルとアウラを加えた皆が再出発した。
残る敵は16体。
猛獣使いエランとその配下、猛獣のゲッシュ5体。魍魎使いゼムと魍魎のゼン。剣聖のヴァーミュラー。必殺のナハトロン。不滅のタンブラ。王威のノーデンス。根絶のギラン。慈悲のナーヤ。僕メイクドール2号。虹の鎧。それからドールが21%。
対する此方の戦力は、シャルロッテと僕を除けば11体。
アウラ、ルム、リオン、ルカナ、ナハトロン、白夜、紅花、クラウ、オルメル、レスタ、桃花と、男衆が討ち死にしたので女子供しかいない。それから……一応天使も出せない事は無いか。
……出せない事も無いが、強化を施しても事実上の戦闘力はレベル100代が限度。残念ながら、コバエである。
敵の英雄は遠慮なくエネルギー吸収をしてくるので、撃ち落とされて食い尽くされるのがオチだ。
まぁ、敵の方が数が多かったり細工してたりで此方が劣勢の様にも思えるが、なんだかんだ言って弱い白夜とレスタで英雄1体と伍するか越えるし、強いアウラやルム、ナハトロン、桃花は並みの英雄2体に時間稼ぎが出来る。
……それらの3人をもってしても倒しきれないのがいる訳だが。
差し当たりエランとゲッシュ、ゼンとゼムの8体を城に閉じ込めて、城以外のドールを引き寄せておけば、うまい具合に死線を潜れるだろう。
◇
休憩開始から48時間を越えた夕方。
朝同様にシャルロッテを治療し片手間に天使の教導を行い、閉じ込めたエランとゲッシュ、ゼンとゼムを弄り倒したりしていると、皆がズタボロになって帰還した。
状況は悲惨である。
白夜がギランと撃ち合いし、お互い消耗した所で、ナハトロンがギランを討ち、敵ナハトロンが紅花をすり抜けて白夜を一突きに殺害した。
そのまま紅花と敵ナハトロンは交戦、紅花はナハトロンを大きく消耗させて討ち死に、戻って来たナハトロンが敵ナハトロンを撃破した。
一方、ヴァーミュラーとナーヤの剣士2人に相対したのは、リオンと桃花。
激戦の末にそれらを討つも、消耗は大きく、その後はドールの処理をしていた。
僕メイクのドール2号と戦ったのは、レスタ。
多腕のドールと人型で戦ったレスタは、慣れない人型に竜殻鎧を形成し、無数の武器を前に肉弾戦を決行、相討ちとなった。
他方、クラウとオルメルは、不滅のタンブラと交戦、ドールの影を喰らい回復するタンブラに対し、ドール毎破壊を繰り返し、これを撃破。
そして最後、ノーデンスと戦ったのは、ルムとルカナを筆頭にアウラが周囲のドールを撃退、最後にナハトロンが加勢し、総勢概ね4名の強者の猛攻の末……あと少しの所で撤退となった。
理由は、城から化け物が這い出て来たから。
……まぁ、僕が出したんだけどね。
何と言う事も無い。
猛獣使いエランと猛獣のゲッシュには、セフィロタスと言う名の神樹の種子が埋め込まれている。
その覚醒シグナルを解析して信号を送信、種子を発芽させた。
型毎の成長傾向とか諸々調べ尽くしたので、タイミングを見計らって解き放った訳である。
彼女等がちゃんと撤退の選択を取ってくれて良かった。
あのまま継戦していたら、追加で4人くらい死んだ上で敗走する事になっていただろう。
研究の結果分かった事は多い。
予想通り、種子は発芽すると宿主を餌に急速成長し、魂を侵食して主導権を得た後、強制進化を起こして樹木を纏う獣に変化した。
これがステージ1、確認段階だ。
何らかの誤作動を起こした際に神樹が2本にならない様にする、または安全地点へ退避する、或いは他のより強力な神樹の種を守る等、周辺状況の確認を行うフェーズである。
全ての確認が取れたら、ステージ2、成長段階、もしくは防衛段階。
今回の例で言うなら、エランの種子が神樹の後継となり成長段階へ、ゲッシュ5体分の種子は防衛段階に移行している。
成長段階に入った種子は、その他の種子に防衛を任せ、地脈へ接続して星のエネルギーを吸収、発散させ始める。
それは星の守り手、オピオネウスに対する免罪符として機能する。
要するに、迷宮と同じ機能だ。
迷宮は星のエネルギーを汲み上げて発散し、幾らかを拝借する。
そうして世界の活性化を促進する事で、星の癌では無い事をアピールしている……もしくは、最初からその様に設計されている。
あまりに洗練された機能は感嘆すべき物で、それが進化した後に自力で再編したのか元より神の被造物なのかは分からない。
ともあれ、成長段階に入ったエランだった物は今、オピオネウスがいない事を検知して地脈の代わりに周辺の大地を喰らい、エネルギー補給をしている。
一方防衛段階に入ったゲッシュだった物は、獣型のまま周辺の樹木等を喰らい、エネルギー補給をしつつ、城を守る様に樹木の壁を展開、同時に自分と同型の森贄の様な樹木の獣を生成している。
元々セフィロタスは殺した獲物のコピーを生成する能力を有していたので、これはその力を応用した物だ。
肉の体ではなく樹木の体なのは、コスト削減の為だろう。
十分なエネルギーを得ると、ステージ3、若木段階に突入して、芯となる幹を形成。本格的に行動を開始する。
その後、ステージ4を得て大樹となり、ステージ5でセフィロタスは復活を果たす訳だ。
ステージを進めるのに必要なのはエネルギーのみであり、切り取られたこの世界の現状では進められてもステージ3。
それ以上に進むには、原罪のノーデンス(仮称)と、城の地下に建設した魂収集装置に監禁されている大怨霊ゼンゼム、それから虹の鎧を吸収しなければいけない。
だがしかし、本来であればやるだろうが、英雄は基本同輩であり、虹の鎧は保護対象に設定されているので、セフィロタスが彼等に手を出す事は無い。
差し当たり本日は休息として、明日、決着を付けよう。
※章の整理を行なった結果、最新部分は第十五節に入りました。




