第32話 こころばかりのえんご……?
第八位階下位
レイ君が黒い塊とベリーウェルダンな焼き肉を引きずって半べそで帰って来た。
香ばしい黒焦げはノーレル君、大体炭化し焼け爛れ、内臓まで炭になってるのがナハトロン。そして全身火傷を負ってるのがレイ君。
これまた派手にやられた物だが、消耗した状態でギランの炎を受ければそんな物だろう。
それでも死んだら青い粒子になって拡散するので、一応生きてはいるのだ。
九死に一生どころか九分九厘死んでいるノーレルを取り敢えず治し、同じ様にナハトロンも修復、魂に受けているダメージも補填し、おまけでレイ君も治癒向上を掛けておいた。
戦い抜いた3人には、取り敢えず昼まで休憩して貰う事とし、各部屋に送って寝かしつけた。
リターニァの撃破、アガーラの撃破、ギランとナハトロンの2度目の魔力切れとそれによるドールの消耗数万。おおよそ丸一日程度の戦果としては上々だ。
助っ人こそ少しはあったが、レベル650前後3人でこの成果、そして生存は正しく大金星である。
……何せウルルがリターニァとアガーラに挟まれて死んだからね。
レーベが手助けしなければ初戦で全滅していただろうが、それでも成果は成果である。
それじゃあのんびり治療の再開と行こうじゃないか。
先ずは、今朝から治療していた消耗の少ない5人、ルカナ、白夜、クラウ、レスタ、桃花の回復。
精神力の回復は、時間経過や睡眠等で解決出来るので、魂魄の消耗を補填した。
酷使されたスキル構造の治癒だ。此方も基本的には記憶と直結であり、時間経過による回復が常だが、記憶と直結とは即ち記憶を弄れば良いと言う事。
じっくり弄り治療した。後は寝ているも良し、のんびりするも良しだ。
続けて、消耗の大きめなルム、アッセリア、リオン。
内後半2名は朝から修行なんぞしていたが、それには目を瞑って治療開始。
歪みの矯正やら曖昧化した部分の明瞭化やら、あれこれやって、完了。
此方も後は休憩のみ。
さぁ次がいよいよシャルロッテ! ……と行きたい所だが、その前にお昼である。
◇
オルメル持ち込みの昼食を摂り、午後。
治療した者達は、休むも良し、討伐隊に参入して英雄を狩るのも良しと伝え、レスタ、桃花、アッセリア、ルーレン、リオン、レーベの6人が討伐隊に加わった。
次の討伐対象は、虐殺のアンドレア、剣聖のヴァーミュラー、王威のノーデンス、慈悲のナーヤ、弑鬼のセロ、いずれかだ。
耐久型や補助型、遠距離型を敢えて放置し、近接型を援護させる事で、不利な状況下における経験を積ませるのが狙いである。
……とは言えまぁ、あのナハトロンにあのレーベ、あの桃花、またアッセリアとリオン、加えてルーレンもやるしレスタも十分、そして七聖賢の2人とくれば、最早リターニァとアガーラを欠いた連中では総力戦でも互角だろう。
一応ドールの保持魔力も考慮すると、総合戦力では相手の方が上だが、それにしたって拡散する魔力を再利用するには時間が必要だ。
その時間を与えなければ、後は誰かが油断、慢心しない限り、此方に負けは無い。
逆に言うと油断、慢心があれば壊滅し得るとも言える。
そんな状態で僕に出来る援護と言えば、特殊調合したポーションを魔力切れのギランやナハトロンにぶち当てたり、ヴァーミュラーことタダト君やナーヤ、アンドレアの剣を強化改造したり、試し用に持ち込んだ大罪の爪を適性のあるノーデンスに埋め込んでみたり、そこ等のドールを捏ね回してレベル700相当の英雄をでっち上げたり他色々。
……まぁ、心ばかりの援護しか出来ないが……これで油断したら壊滅レベルから常に全力じゃないと壊滅レベルになった事だろう!
なに、後続にはルムとかシャルロッテとかアウラとかがいるし、仮に全滅しても無駄にはならない。
戦力を小出しにしてじっくり経験を積ませよう。
そんなこんなで必要な仕事を終え、シャルロッテの治療を開始。
先の戦いで、シャルロッテは擬似亜神化を発動させた。
それによって一意専心し、戻って来れなくなった分のシャルロッテは、既に引き戻して休眠させている。しかし僕の神性を降ろして混ざり合った部分はそのままだ。
最初はそれの分解をし、取り出した僕因子を取り敢えずシャルロッテの中に纏めておく。
方法は単純だ。
僕自身をシャルロッテの中に入れ、呼び掛ける事で僕因子を共鳴、ゴブリン達からレイ君を取り出した時と同じ様に一粒一粒丁寧に抽出する。
手間はかかるし細かい操作を必要とするが、単純なのは間違いない。
その作業を僕の負担軽減の為にゆっくりじっくり行い、回収した因子を成形、残しておいた僕融合型シャルロッテをベースに亜神化を最適化した構造を形成した。
これにより、シャルロッテは僕因子による亜神化に限り、他よりも上手く利用出来る様になった訳である。
後は、他の子同様に各スキルの矯正等を行い、その後眠りにつかせて自己回復させる。
シャルロッテなら放っておいても直ぐに目覚めるだろう。
◇
日が沈む頃、戦場に出ていた皆が帰還した。
帰って来なかったのは、ルーレンとレーベの2人。
レーベの方は、超強化を施されたノーデンスと激闘の末に敗北した。
超強化されたノーデンスの力量はヒナと並ぶ程度だが、敗因はその周りに大量のドールがいた事と、英雄達がドールを積極的に消費する様にプログラミングされていた事だ。
暴食と強欲により無尽蔵のエネルギーを得て、傲慢や憤怒で高出力の攻撃ないし妨害能力を行使したノーデンスは、英雄2体、セロとアンドレアを仕留めた撤退の最中突如として現れた。
それを迎え撃ったのはレーベ。
次々迫る後続を前に、囮と言う名の人身御供となったレーベは、咆哮を上げてノーデンスと戦い、その魂魄構造に大きな消耗を強いて敗北した。
その撤退戦の折、幾人か立ち塞がる敵の中から、ルーレンは呪怨のタリジャと交戦。
パンドラを用いたルーレンと単身のタリジャの戦いは、順当にルーレン優勢のまま進み、不滅のタンブラと魍魎のゼンの襲来により均衡が崩壊。
その後はルーレンはタリジャを撃破し、タンブラに大きな損害を与えて死亡した。
その他だと、レスタがギランの火球を迎え撃ち即座に撤退。ノーレルはナハトロンの黒槍を防ぎ消耗。詩仙エブラィジュに強化されたタダト君とナーヤはアッセリアと桃花が相対し、エミリーはリオンと戦闘。飛来した正体不明の英雄はナハトロンが抑え、ドールの群れをレイ君が追い散らした。
倒した英雄は3体。消耗率から見ても両者痛み分けと言った所である。
帰って来た皆は取り急ぎ治療を行い、夕食の時間とした。
その後、しょんぼりするリオンとアッセリアを少しだけ慰め、今日の戦闘を終わりとした。




