第27話 休憩所は此方
第八位階下位
流石の僕を持ってしても、大罪神権と繋がる事の出来るモノを七つも作るのには苦労した。
それぞれの僕の原罪と向き合い、怠惰と嫉妬と色欲に適性がほぼ無い事が分かった結果……手伝いを募集する事にした。
オリジナルしゅーたんが呼べないのでなんちゃって怠惰のメロット。嫉妬は休憩している白夜とルムを見比べて白夜の方。リムと茉莉花は難しかったが……茉莉花には熱量が足りないんだよね。惰性でやってると言うか。
そんな構築と労いを終え、戦力の都合上メロットは送り出し、他に何人か呼んで、次に向かった。
そう、万色のイベント会場と言う名の、休憩場である。
◇
連れ込んだのは、シャルロッテ、ルム、アッセリア、リオン。それからルカナ、白夜、クラウ、レスタ、桃花。
これらは休憩に専念して貰い、万色の会場に用意された3日間で精神の治癒を行う。
誰もが神格と相対し、大きく消耗しているが、中でもシャルロッテはダメージが大きいので……閉じ込める意味でのイベント会場である。
本日の休憩に際し、呼び付けたのは9人+α。
アウラ、リム、ルーレン、レーベ、ナハトロン、紅花、オルメル、レイ君、ノーレルの9人と、おまけで天使獣と天使達。
その内、アウラ、リム、ルーレン、紅花の4人にはそのパートナーのお世話をして貰い、オルメルはその統率に加えて、リオン、ルカナ、クラウ、レスタ、桃花の世話を任せる。
レーベ、リオンと親子でのんびりさせつつ、たまに強敵と戦闘を嗜んで貰えば良いだろう。
後のナハトロン、レイ・セードー、ノーレル・クレッヒア、他天使は、僕が直々に調整を施す事とする。
差し当たり全体に情報の共有を行い、安全地帯に仮拠点を設置した。
では、僕は寝る。
◇◆◇
ユキさんがハンモックに横になり、すやすやと眠っている。
細い肢体にあどけない寝顔。木漏れ日を浴びて煌めく銀の髪。
幼さと相まってか、その神秘性は留まる事を知らない。
これが神に等しき我等が主。
賢者であり、聖者であり、武聖であり、魔王でもある、比類なき幼神。
「寝ていると稚子にしか見えぬ……と言う事もないな」
「全くだ。我が目を持ってしてもその深淵、見通せぬ」
「うん、本当に」
デュナークさんやザイエさんをして敵わぬと思わせる程の力量。それも僅か数十日前までは魔法の魔の字も知らなかったと聞く。
まぁユキさん曰く、魂に積み上げられた経験は記憶に無くとも引き継がれ、やがて目覚めるとか言う話だけど。
それにしたってこれ程の技量。前世にどれ程の修行を積めば、僅か数十日で魔力すら知らない状態から此処まで鍛え上げられるのか。
想像を絶する程の戦いと、幾星霜の時を越えて来たのだろう。
……僕もいつか、至れるだろうか? この、偉大な主と同じ場所へ。
「……これでも長い旅をして来たつもりだったのだかな」
ノーレルさんの囁く様な一言に、僕と、そしてナハトロンさんは深く、息を吐く。
「……当て付けはよせ。このナハトロン様にとって貴様等なぞ稚児に等しい。その我を持ってしても、此奴の足元にも及ばんのだぞ」
心底悔しいとばかりに歪むその顔。ユキさんを見詰めてはいるが、己へ対しての慙愧の念故の渋面だろう。僕もまた、そうだから。
与えられた力を見て、愚劣にもあの時この力があればと思う。
教わった力を見て、厚顔にも何故こんな簡単な事が出来なかったのかと思う。
それ程までに、今の力は強大で、しかして与えられたのはその実情報と肉体の最適化のみ。
この後に“調節”が控えていると思うと、一体どれ程の高みに打ち上げられるのか分かった物ではない。
ただ感慨に耽り、偉大な主を通して変わった多くの事を思い出していると、影が差した。
視界を遮る様に僕達の前に立ったのは、オルメルさんと言うメイドさんだ。
良く整った顔立ちに浮かべる微笑み、ありきたりな茶色がかった髪は艶めき、一つに纏められている。
スッと立つ様は大人びていて、涼しい風が吹いている様な、不思議な感覚を覚える。
……出来る女性って感じ。元はただのドールだったらしいけど、それがどうやったらこんな綺麗な女性になるんだろう?
それに……パッと見える目算で僕より強いし、なんでも神血とか言う血が流れてて、それは神代の金属を使ったナノマシンで、しかもミシュカさんにも流れてて、ミシュカさんは異世界の人で——
「っ……」
一瞬で紐付いて流れて来た情報の圧力に酔い、額を抑える。
神霊金属の強度と内包因子とかミシュカさんと関係のある竜寝殿とかイヴ・ハルモニアと言う名の神とか、まだ整理し切れてない情報が意識の端で津波の様に……これも“調節”とかで整理して貰えたりするのかな?
少し頭を休めようと片目を瞑ると、オルメルさんが僕の額に触れた。
「……淑女の寝顔をそう見詰める物ではありませんよ。なすべき仕事をこなしてください」
ひんやりと冷たい指先。何かをしてくれている様で酔いが覚め、意識が鮮明になる事で深く考え込み過ぎていた事に気付く。
本当に……情報量が膨大過ぎて……困ったな。
「ありがとうございます」
「いえ、気を付けて行ってらっしゃいませ」
「ふっ、このナハトロン様に心配は無用だ、万事任せておくがよい!」
「守護は俺の務め。今度こそ責を果たそう」
ユキさんに与えられた剣に手を添え、オルメルさんに手を振る。
「行ってきます」
「はい、御武運を」
本当に、笑顔の素敵な方だなぁ。




