第26話 未熟とは伸び代がある事
第八位階下位
その後、少しだけ他愛もない話をして夢現帝とはお別れと相なった。
新たな情報は、ヒナの持つ大罪の力が、遊技神群の遺産であると言う事。
魂に装備するタイプの武器、もといスキルで、鏡面の性質を持つ神剣、水月と同じ様な物だった。
灰に消え行く六角プレートを見送り、得られたモノを纏める。
最も大きな収穫は、亜神が信仰を必要とする理由と神核ひいては宝珠類の根源が垣間見えた事。
以前過去の世界で、ディアリードが宝珠の事を神威の霊徴と呼んでいたが、正しく神の力の一端であった訳だ。
——神核をもって神格とし、そこで初めて神となる。
俄然遊技神に貰った神核の解放をしたく無くなったな。
でも報酬が美味いし、勝手に解放されるのはもう仕方ない。
クエストクリアで入手したのは、スキルポイントがシャルロッテのおかげで40P。
武器、月下美人。刀型の武器で、水月とはまた違った様相だが同様に月を降ろす事が出来る。
ただまぁ、能力がウルルとダブってるから、少なくともウルルの影響範囲外じゃないと能力が競合してしまう。
持たせるとしたら……サンディアかな。
次に防具、八咫之帝。高質の隠密と空間遮断の力を持つ軽鎧だ。
シンプルに強いが、ちょうど良い相手はいない。
総評は、報酬美味し、戦闘上々。
リオンもアッセリアもルムもシャルロッテも倒れるまで戦えたし、白夜、ルカナ、クラウ、レスタ、桃花も十分な経験を得た。
◇
おやつを桃して再度ログイン。
細かい情報共有でリアルタイムで現場の状況を確認しつつ、貰った装備を弄り回し、各員に合わせて調律した。
次に向けての情報伝達も終えているし、準備は万端だ。
早速時間潰しも兼ねて、大罪神権のスキル構築を試してみよう。
物が物故、器は強大でなければならない。
使うのは神結晶だ。
場所も大切だ。神権を降ろす都合上、周辺精霊を通してどの様な影響が伝播するかは、まぁ予想が付く。
放置すれば碌な事にならないし、その対処自体は可能だろうが、事前に対策しておく方が良いだろう。
影響下にあっても差支えないパフィ子キングダムに移動。精霊は彼女等のおもちゃであり、パフィ子キングダムでは精霊達は極めて厳正に管理されている。
念の為、パフィ子達には神気の漏出を抑える為の壁になって貰おう。
「ゆぃ〜?」
「ふにゅん〜」
「よしよし」
わらわら集まって来たミニ僕もどき達を撫でつつ、情報パックを送信、行動に移させる。
さてさて……大罪神性、如何程の物かな?
◇
神権を呼び寄せるには、神権スキルだけでは出力不足だ。これに僕の地力を付け加えたとて、神権を引き下ろして維持するにはやや手間だ。
そこで使うのが、ヒナに貰ったアイテム、罪悪滔天。
ざっと考えられる製法は、神権と接続出来る罪悪滔天を用いて降ろした神気を形成。属性質に見合った構造を神結晶魂魄の一部に作り出し、物理的にも魂魄的にも切り離す。
神気操作が可能な構造体作成における最大の問題点は、正しく神気操作。
神権を引き寄せる構造は勿論の事、神気を誰にでも利用可能レベルまで中和分解したり、直接操作する構造、それらを支える基部等々、実戦レベルにするだけでも相当な労力だ。
そんな訳で、差し当たり暴食の神気を利用し、神結晶内に暴食因子による吸収、保持、分解、貯蓄の構造を作成。それに加え神気の貯蓄場所も作成した。
後者は現状どうしようもない部分の代替案である。
次に、神結晶の強固な魂魄を切り取り、同時に神結晶自体も分割して、小指の爪程度の小さな結晶体に暴食の力を持つ魂魄を封入した。
切除時点でほんの僅かに神気が漏れたが、そこは流石の神結晶。強固な構造は易々と崩れる事は無く、エネルギーの流出は直ぐに収まった。
尚、漏れた神気は僕を通してから近場のパフィ子に入れておいた。
続けて、神結晶自体を暴食の因子で塗り替える。
時間を掛ければやがて変わるだろうが、何より基部となるこの部分を先に変換しておく事で、他の出力が段違いに変わってくるからだ。
何せ神気全てを変換するなりする訳で、ここは相応に消耗を強いられた。
そして最後に、最も重要な神気と神権に関わる部分の構築だ。
そも、神気の操作に必要な事は、基礎演算力と魂魄内部構造、即ちスキルの2つだ。
その点、強大な神気を宿せる時点で、神結晶には並々ならぬ演算能力が秘められている。
問題はスキルである。
では、そもそもスキルとは何なのか?
簡単に言えば、記憶。そしてそれをベースに魂魄のエネルギーを使い、世界知に導かれて作成される、演算力の消耗を抑える為の便利ツールと言える。
もっと言うと、魔法が記憶とそれに紐付く意思、及び精霊によって術式補完されるのと同じだ。
魂と言う魔法陣に、世界知と言う精霊の補助を受け、意思と記憶を持って術式補完される。それがスキルだ。
通常、補完される術式は魔法文字で描かれるが、それは魔法文字が文字の中で最も強大な信仰を秘めているからと言える。
よって、特定の神気を操作出来る力を少しでも持ったスキルを構築するには、特定の属性に関わる莫大な記憶、即ち情報が必要になる。
好例は神血。あれは極小記憶媒体に限界まで一つの属性に関わる情報を織り込む事で、魔法を発動させている。
それと同じ様に、真理に至る程の情報、記憶をひたすら織り込み、ただそれだけの記憶媒体を作成、これにより得られた神権のパーセンテージが、およそ8%。
……とても貧弱。
あまりに稚拙。
最近何故か僕の母神権受容量が30%まで跳ね上がっているが、それより低い始末である。
理由は罪悪滔天を見れば一目で分かる。
やはり言葉や意味、事例を事細かに詰め込んだ所で、血の通った渇望の記憶がなければ高が知れている。
罪悪滔天の深淵には、世界知から降ろされたと思われる様々な記憶を伴う渇望が秘められていた。
致し方ないので、桃が無い時の僕の記憶から渇望のみを抽出して投入した。
それでも受容力は20%までしか上がらなかったので、やはり僕には暴食の才能は無いのだろう。
何せ1番渇望している部分のみでも十数%なのだから。
そんな訳で、可能な限りパーセンテージを上げるべく、神結晶自体の属性変換やら、常態で少しずつ回収される神気を貯めておく構造を作ったりと、せせこましい小細工を仕込んだのであった。
完成したのは、純度高めの暴食神結晶。補給速度は小細工に小細工を重ねて30%まで引き上げたが、罪悪滔天にはまるで劣る。
夢現帝は僕を凄いと言っていたが、所詮はこんな物だ。
増してや、30%まで引き上げた所で、支配領域や支配魂魄が増えて受容力が据え置きならパーセンテージは下がって行くからね。ダメダメだね。
……とは言え一応構造は纏まったし、不備もない。
適性に沿って魂に植え付ければしっかり根付いてくれるだろうし、そこからは自前の才能で育てれば良いだけの話。
取り急ぎ作成した暴食のスキル結晶もどきには、更に小細工……もとい強大な悪魔に肖り、ベルゼブブの爪と名付けておく。
これを後6種類作る。
わざわざ神結晶一つから作れる様に調節したのだし、今一気にやるぞ。




