第25話 信仰と神核
第八位階下位
《【運命クエスト】『夢現の帝王』をクリアしました》
夜空に輝く星々の様に鋭い剣戟を舞い、大気中の僅かな魔力を奪い合って、より相手に消耗を強いる為の激戦は、シャルロッテが自力で戻って来れなくなるまで続いた。
くたばったシャルロッテは丁寧に癒す為に保護しておき、取り急ぎ膝を付いている夢現帝と話をする。
「やぁ、お疲れ様」
「おう……いや、ほんとに……」
本体からエネルギー供給をすれば回復など容易だろうが、していないと言う事は非効率なのか余韻に浸っているのか。
ともあれ、例の話を聞かせて貰おうじゃないか。
「質問、良いかな?」
「あぁ、勿論……星辰炉についてだろ?」
僕は微笑みながら頷く。
一聞するにアルカディアを指すかの様に思えるが、響いて来る言葉の意味は神秘と神霊に関連している。
即ち、楽園の事では無い。
「呼び方は様々だな、神気炉とか神秘炉とか。簡単に言えば神気を作成する支配領域かもしくは影響領域の事だ」
「ふむ」
つまり、僕が持つ支配領域や、その名が轟いているエリアの事を星辰炉と言うのか。
それにしてはやたらと仰々しい気もするが。
「最小単位は国規模で、信仰炉。次が惑星規模で星炉。それ以上で世炉。それらの総称を星辰炉と呼ぶ訳だ」
「ふむふむ」
シャルロッテに星辰炉があると言うのは、シャルロッテが最低でも一国分の神気を自力生成しているって事かな?
……でもそれだと、驚く程の物では無いと思うのだけど。
「星辰炉はβコアの作成に必要不可欠な——」
「——βコア?」
「……あぁ……そっちは神珠とか神核とか言われるもんだな。信仰を受けて第二のコアが生成されるんだと」
「成る程」
前に聞いた話だと、亜神が神に至るには自前の実力と信仰を得る必要があるらしい。
おそらくだが、神核は信仰により生じる神域をその魂に取り込み、凝縮して物質化した物なのだろう。
実際に稼働している神核を見た事は無いが、それが神域そのものであるならば、それは法則を保有しているに等しい。
なれば確かに、神核を持つ者は神だ。
「それでだな、星辰炉って言うのは信仰を得る為の支配領域を指す訳だが、もう一つ、こっちの方が正式って言う様な意味があって、それが支配領域の究極系……単一の構造により神核を形成出来るモノ。なんだよ」
「ふむふむ」
つまり元々は単一で形成出来るモノを指していたのに、時の流れの中で神核形成の助けになるモノも含む様になったと言う事か。
前に夢の国で見た巨大な砂時計、あれも星辰炉の一種なのだろう。
「あんたの話を聞いた限りだが……そもそもの大前提として、神気を操作するのは凄く消耗する。精々10種扱えれば良い方で、それにしたって指向性を持たせられんのは数個有れば優秀、1個でもまともに扱えれば神の領域ってもんだ。あんたみたいに何でもかんでも指向性を持たせられるのは異常なんだよな」
「ふむ?」
神降ろしで能力を強化するのと直接神気を操作するのとでは、確かに大きな違いがある。
身体強化を適切に運用するのと大雑把に全体を強化するのとでは、効率が段違いだ。
それが神気の領域となれば、それこそ星と砂粒程の差となるだろう。
僕の配下では現状精々神権に作用して神気を降ろし、付与する事が出来る程度で、まともに指向性を持たせられるのは一握り。
星々の光の性質を操って神速で駆ける事が出来るウルルや、切断の性質を操って凡ゆるモノを断ち切る白羅とか、そんな程度である。
「神気をーーーー出来れば最低でもーーークラスって話だし、あんたがαコアを完全形成出来たらもうそこらの神じゃ相手にならないだろうな」
「ふぅむ……完全形成とはどの様な状態を指すのかな?」
αコアは、βコアが信仰により生じた神核を指すならば間違いなく魂そのものの事だろう。果たして。
「αコアの完全形成はーーーがーーーーになった時点を指すらしいぞ。ーーの形成に際してーーーーーがーーにーーした時点でαコアは完全形成される。まぁ実際そうなった時点ではまだ亜神クラスって話だけどな。本来は」
「ふむふむ」
一部聞き取れないが、αコア、即ち魂魄に今後起こる事を考えると……レベルが一定値から上がらなくなるんじゃないかな?
魂はレベル上昇に伴ってその濃度を上げている。レベルの指標は年輪の様に魂魄に刻まれた、より濃度が高い外皮部分だ。
その理屈で言うなら、やがて魂魄真奥の濃度がレベルを分ける外皮を上回り、魂魄に一体化すると考えられる。
それでも所謂レベル、魂魄濃度自体は上がっていくだろうが、計測方法的に数値は上がらなくなるだろう。
その上がらなくなったタイミングを、神々は亜神と定めたのではないだろうか?
「要するに、星辰炉は神核を形成出来るモノを指し、そして神気を操作出来る神核を完全に支配、使役出来る者は星辰炉だ。よって神核無しで神気を完全に操作出来る者は星辰炉と言える。筈だ」
「確かに。理に適っている」
となると……神核が司るのは一つないし形成された神格一種のみ。
であれば、所謂神の成り立てが操作出来るのは、基本的に一種の神気のみと言う事……?
「……じゃあ、複数の神気を操作出来る僕とかシャルロッテは……?」
「稀に見る天凛。未だ神成らぬが故に——幼神……っつう訳だな。まさかあんたの部下に幼神がもう1人いるなんて思わなかったが。これは俺もうかうかしてられないな」
その幼神を打倒した神は、やれやれと肩を竦め、不敵に笑ってみせた。
得心が行った。
僕は神々にとっても珍しい青と銀の因子を持っているが、神気操作なんてのは神になれば当たり前の事で、神々からしてみれば大した事では無い。それ故に、ただレアなだけだと思っていた。
しかし、少なくとも下位の神々にとっては神気操作は当たり前の事では無いのだ。
原因は不明だが、基礎演算力で僕やシャルロッテが神々に優っているとは思えない。
そうである以上、何らかの見えざる要素、または記憶等を含む魂の内部構造が異なるのだろう。
僕は僕が思っていたよりも、優秀な様である。流石僕。




