第22話 小手調べに斬
第八位階下位
愛を込められ機嫌を良くしたヒナと別れ、皆を同じ様に労ってから送還した。
天の階段に戻り、現れた道を進みながら、アイテムの確認をする。
入手したのは、スキルポイント22、王冠型の武器、罪悪滔天。それから、メダル型でそれぞれのデフォルメされた動物が描かれたアイテム、傲慢の罪証。嫉妬の罪証。強欲の罪証。暴食の罪証。色欲の罪証。
罪悪滔天は青と白に赤の宝石で彩られた綺麗な王冠。換装するとティアラ型に変わり、角が7本生えている様に見える。
能力は、それぞれの角に大罪の力が宿っていると言う物で、戦ってないが怠惰と憤怒の力も備わっている。
怠惰は防御系の力だ。チヨネズミは結界の術を使っていたので、本来は怠惰を使いたかっただろうが……コンセプト的にヒナが不得意な力は使わせて貰えなかったのだろう。
能力は、単純に結界を張るのに加え、広範囲に怠惰の神性をばら撒くと言う代物。
怠惰の神性は凡ゆるモノを弱体化させ、減衰させる。そして強固な結界に到達する頃にはもうそれを破る力は無いと言う寸法だ。
その性質上中にいるモノは籠城しか出来ない……かと思えば、まるで汚染を広げるかの様に怠惰の神性をじわじわ放出し続けると言う極めて堅実な攻撃手段を持っている。
怠惰の領域に留まれば徐々に力が漏出し、最後には粒子に分解される事となるだろう。
一方憤怒は攻撃系。
溜め込み凝縮した力を一気に爆発させる簡単な構造のスキルだ。
単純だが強力であり、瞬発力は他の追随を許さない。鬼札と言うに相応しい能力である。
罪悪滔天はそれらのスキルの内1つを選択して発動可能で、強度は適性の無い者でも650程度が保証されている。
効果を並行して発動するには自前の演算力が必要だが、何も無いよりは簡単に行使可能だ。
罪証のメダルは、生命創造系のアイテムだった。
メダルをコアに、該当の力を持つ該当のデフォルメ生命体を生成すると言うアイテムで、想定戦闘力はレベル650程。
ただしエネルギーがほぼ空なので、生成分の魔力は此方で用意しないと行けない。
大罪神性は強力な神権なので、実に良い好例を貰えた。
さぁどの様に皆に改造を施そうか、そう考えている内に、階段を登り切る。
おそらく最後と目されるその広間にあったのは、最初に見た物と似た、しかし陽炎が薄まり、はっきりと男の背であると分かる様になった六角プレート。
早速それに触れると、パッと“上”に転送された。
◇
何処までも広がる金の平原。
大地からは仄かな金色の粒子が溢れ、世界を明るく照らしている。
上を見上げると、遠くに一部ミニチュアの街と天の階段があった。
ローコストぶりを隠すつもりは毛頭無いらしい。
そんな戦場で、ふいに首に刃が触れた。
「っ!」
「っ!?」
交錯は一瞬。
即座に僕は後方へ跳ね、それと同時に練っておいた防性魔力で防御力を上げると共に表皮内に結界を展開、皮膚で受け流して刃の腹に滑り込み、そして何かを蹴り飛ばした。
不確かな衝撃。
刹那、明後日の方で空間が微かに揺らぎ、男が現れ膝を付いた。
「……奇襲のつもりだったんだがな」
「ブラフのつもりかな?」
「むむ」
僕の問いに、男は押さえていた腹部から手を離し、肩を竦めて平気そうに立ち上がる。
ーー ーーの幻影 LV700
改めて男をよく見てみる。
歳の頃はおおよそ20に行かないくらいか、黒い髪は少し長めで、幾つかの髪飾りによって綺麗に纏められている。
髪飾りや服には高質なエネルギーを秘めた幾つかの宝石が付いており、それぞれから別々の因子を感じられた。
中にはマリアやサツキ、ヒナ、他ぬいぐるみ達の因子もあり、役割としては単なる魔力貯蓄装置なだけではなく、縁を繋ぐ意味合いの方が大きいだろう。
服装は所謂和装に近い鎧姿で、然程防御力は高くない軽鎧装備。
武器は腰に佩いた刀一本で、材質はおそらく刃がハクムコウ、刀身自体は神珍鐡、それとナイオーネが少し混ざっているか、珍しいタイプの剣だ。
例によって水は循環の性質を持ち、清浄と縁が深くまた天に登っては落ちるを繰り返し深化して行く。その性質を引き入れる為のナイオーネだろう。
名工が鍛え、永きに渡って使われて来た、まごう事なき業物だ。
その鋼の深淵にまで刀匠の意思は響き、その刀には確かな信仰、神性が秘められている。
……まぁ、そのデチューン品だろうが。
「……これが気になるのか?」
そう言いながら、男は刀を掲げ、刀身を見せてくれた。
「銘は水月。旧神時代の神族、月涙種の遺物とやらを打ち直した代物……のレプリカだ」
「ふぅむ」
神が関わるのならば強力なのも納得と言う物だ。旧神時代がどんな物なのかはよく分からないが。
銘が水月と言う事は、その刀身に金の月を降ろす事も出来るのだろう。
男は微笑みながら刀を腰に佩いた。
「なんでも末裔が国宝として祀っていた物らしくてな、ヒナと戦った時にいただろ? 兎人。ミコってのは日本名で、まぁそのまま巫女なんだが」
「ふむ? 兎人はいなかったな、兎はいたけど」
「ん? …………ヒナか……」
やっぱりヒナなのか。
「見ないでねなんて言うから、何かやるだろうなとは思ったが……」
眉根を寄せて頭を掻く彼に、僕は肩を竦めた。
まぁ、見るなと言うからにはね、悪い事してるんだろうなー。
暫し渋面をしていた男はしかし、するりと気を改め、此方へ視線を向けた。
「まぁいいか……それで、誰が俺の相手をしてくれるんだ?」
早速とばかりにそう言う彼の視線が、僕から外れ、やや後ろへと向いた。
僕もそれに逆らわず、後ろを指し示す。
……彼の能力は、不可知天帝竜を一回り超える程の隠密と、空間操作能力、そして剣術。
レベル700と言えどその実力足るや優に800を超えるだろう。
そんな相手に適正なのは……探知系では剣技にやられ、空間支配系は隠密と剣技にやられ、武術系では隠密と空間支配に敗れるだろうから、これぞと言うちょうどいい駒がない。
それが故に、選択はベストでは無いがベター。彼女が良いだろう。
そう、いつのまにか勝手に僕の背後に現れたのは——
シャルロッテ・アリオーニェ・シャンズ LV750
——シャルロッテ。




