第21話 混じり気ない原罪
第八位階下位
《【運命クエスト】『夢現帝の花嫁:原罪の魔女』をクリアしました》
あちこちの激しい激闘は、どれもがほぼ引き分けと言っても良いギリギリの勝利だった。
白夜、レスタは倒れて目を瞑り回復に専念、ルカナは2人より余裕があって転がったまま考え事、クラウは座り込んで倒れる3人を無言で見下ろし、桃花は片膝を付いて意地でも倒れんと言わんばかり。
見た感じクラウは……真面目なんだよねぇ。神血は確かに強力な演算補助装置だし、与えられた力である事は相違ないのだけども、白夜もレスタもこれから強化するので、後は与えられた力を己が物に出来るか否かでしかない。
幾ら2人が並大抵とは言え、環境と支援は万全だから、悩んでいる暇など無いのだ。
一方、頭一つ以上抜きん出ているルム。
強欲によるエネルギーの強奪、傲慢による能力の制限、嫉妬による模倣遠距離攻撃、それ等を受けつつゴーレムを殲滅した時点で、消耗は半分を切っており、対するヒナの消耗は精々3割程度。
趨勢が決まったかとも思われたが、ここでルムが一気呵成に突撃を敢行。
どうやら原罪の力の概要を把握出来た様で、過負荷を掛けるべく攻勢に出た様だった。
そこから、罵詈雑言が立ち消える程の激突。打撃と魔法が幾度も弾け、僅かに体術で劣るヒナが原罪の連用を余儀なくされた。
2人は正しく花火が打ち上がる様に一瞬に全てを賭け、力尽きたのであった。
「ち゛っ、ち゛っ、ち゛っ」
「……」
倒れ、クエストクリアを認め、元の小さなヒナに戻りつつも、彼女は激しい舌打ちを繰り返している。
ルムは近くでそれを聞かされ、若干怯えつつも、ヒナが何に対してキレているのか分かっている様子である。
暫し舌打ち、後、無言。
僅かな時が流れ、ヒナは口を開いた。
「……テメェ覚えたかんな?」
「……こっちこそ覚えたのです」
「ぜってぇ強くなれよ? そしたらヒナがぶっ潰してやるッ」
「上等なのですっ! ルムがぶっ潰すのですっ!」
どうやらヒナはルムが神域に至ったら、遊んでくれるらしい。
それまでに体術を磨き、大罪神権を更に自在にコントロール出来る様にするのだろう。
そんな事を思いながら近付くと、ヒナがキュルンと変貌した。
「御義母様ぁ、ヒナ、凄かったでしょぉ?」
「うんうん、凄かったよ」
凄い良かった。おかげで大罪神権の良いサンプルが取れた。
ユニークスキルを作成する要領で神権とスキルを接続して、神気の放出口として整備したスキルを作成、それを魂の装備品として構築して……まぁ、後ででいっか。
取り急ぎ近い場所にあるルムとヒナの頭を両膝に乗せて、撫でつつ話を聞く。
「……ヒナはなんでそんなに僕を慕うのかな?」
現状では、神々における僕の立ち位置、もとい価値は不明だ。
ある強大な神の所有物ではある様だが、立ち位置から見てヒナは義娘の義妹。である以上、僕とは無縁と言っても過言ではない。
と言う事は、ヒナにとって縁を繋ぎたいだけの価値があるのだ。
果たして、ヒナはニコニコ無邪気に微笑んだ。
「それは〜、美人で可愛くて〜、ライバルにはならなくて〜、成功が約束されてて〜、甘えたらいっぱい甘い汁が啜れそうだからでーす」
「成る程〜」
素直に言うヒナを、よしよしと撫でる。
然もありなん。銀や金の因子持ちや魔眼持ちは少ない様だし、その点から見ても僕は神々の中では成功が約束されているのだろう。
僕はさながらカブトムシでも捕まえる様に、甘い蜜に誘われた神々を捕まえれば良い。正しくwin-win。
「……けっ、脛齧りなのです」
「テメェがな」
「ぐっ……」
セルフダメージを負うルムも撫でる。確かに今のところルムの方が脛齧りだ。
ただまぁこれらの迷宮は亜神たる神々からしてみれば、単に下々に試練を与えるだけでなく、認識と言う形の信仰を得る為でもある。
そう考えると、僕を除いた僕の配下の中で最もヒナを信仰しているのは、実際に戦いその脅威を身に染みて理解しているルムと言う事になる。逆もまた然りではあるが。
「……そう言えば、他のメンバーはアレで良かったの?」
「…………勿論。むしろアレが良いって言ってました〜」
「はっ、お前がぐちぐち言ってむりや——」
「——黙ってろチビカス。ヒナは御義母様と話してんだよッ」
……まぁ、名前的に見て人だろうし……序列とかはあるんだろうなとは思った。他所様の家庭の事だし、上手くやってるだろうから何も言わないが。
最後に一つ聞いておこう。
「次の相手について教えてくれる?」
「うーん……まぁ、御義母様なら……うーん……でも、やっぱり、内緒で!」
「そっか、じゃあ楽しみにしておくね」
「ーー君はねっ、ヒナよりもずぅっとすっごいんだよっ! ……好きになっちゃダメだよ?」
「ならないよ」
言い切る僕に、ヒナは暫しブスッと頬を膨らませた。
「……そうとは限らないですけどッ?」
「ふふ」
ヒナの顔をぐにぐに揉みほぐしてやった。




