第20話 vs.ぬいぐるみ?
第八位階下位
イノリペンギンと白夜の戦場では、激しい爆炎とブリザートが衝突していた。
お互い距離を取っての戦闘であり、しかして白夜には傲慢の枷が既に付けられている。
見た所傲慢を付与した魔法でチクチク付けられた様で、白夜は傲慢の高質な魔力を少しでも分解しようと奮闘している。
傲慢の質はヒナのそれと同等であり、使い手によって変わるとか分散して弱くなるとかでは無いらしい。
魔弾や火、氷の牽制を打ち合い、大きな術を構築したり、その邪魔をする中規模の爆炎や吹雪をぶつけ合わせたりと派手な戦闘だ。
傲慢による戦闘力の低下と強化でレベル差は埋まっており、上手い具合に技と技がぶつかっている。
実力は、多少弱体化している筈のイノリと白夜で互角。傲慢の力を分解している分白夜が後塵を拝している。
白夜もなんだかんだ強くなった物で、ぴーぴー言ってたのが遥か昔の事の様に感じる。
レベル上昇に伴う精神耐性向上による演算能力の間接的上昇を利用した基礎演算力の強化修行。
そして演算力向上による常人の何百倍にも加速された思考速度と、それを使って魂に刻んだ演算補助の公式、スキルを酷使して尚足りない修行。
更にそれ等全ての疲労を万全に癒す休息を持ってして、皆は爆発的に強くなっている。
強制強化は施していない為苦戦は免れ得ないだろうが、それでも勝ってくれると信じている。
アヤカネコとルカナの戦場では、光と闇が激しく衝突していた。
アヤカは聖なる波動で周辺の闇に属する物を阻害しつつ、光の閃光で攻撃。光の膜で防御。傷を負ったら回復を努めて堅実に繰り返している。
一方ルカナも、闇の膜を纏う事で聖属性から身を守りつつ、攻撃と防御で堅実に攻め、阻害されながらも多数の魔法を展開、隙を突いてはアヤカに傷を負わせていた。
ルカナが攻め切れていないのは、偏に嫉妬の力の所為だ。
実力は伯仲しており、僅かにルカナが勝っている。
白夜は煮ても焼いても凡夫だが、ルカナは一応天才の部類。ただルムとか桃花とかが鬼才なだけで、一応ルカナは凄いのだ。
……シャルロッテとかアトラとか異常な天凛を持つ者もいるけどね。
そんな天才のルカナが手こずっているのが、嫉妬により模倣された自分の魔法だ。
光が主に防御に使われる中、間隙を突く様に闇が突き抜ける。
発動こそ手動だが、構築がほぼ自動な為に、嫉妬を行使されればされる程総合演算力的に不利になっていく。
……だが、大罪系の力はどうやら連発出来ないらしい。
おそらくだが、強過ぎるが故に連用すると魂魄内の構造体がオーバーヒートしてしまうのだろう。
それに、各属性は神性を持ち、神域に接続されている。
あまり使い過ぎると、意志の弱い者は引き込まれる可能性も考えられるな。
……だからヒナはああなのかな?
続けてチヨネズミもといハリネズミとクラウ。
此方は、チヨが強靭な岩壁に結界を付与した鉄壁に引き篭もり、強欲を行使してクラウの保有エネルギーを強奪する形で戦場が展開されていた。
クラウはそれに対し、強固に織り上げた糸による兵器を作成、維持している。
強欲で構造の一部でも力を奪われたら崩壊するので、極めて高質なエネルギー膜を張って守っている。
構築されるバリスタの様な兵器は、術式と織り合わせられた魔導兵器の類いであり、単発式であろうその兵器は等級で言うならば覇級を超えて禁忌級の魔法に匹敵するだろう。
レベルに換算すると……当たれば750をほぼ確殺出来る。正しく必殺技。
織り上げるのに時間は掛かるが、そこは慣れと訓練次第なので鍛えれば良い話。
単純な命中精度は、血中に神血がある時点でお察しのほぼ必中。後は相手の妨害アクションと矢に備えた術式の鬩ぎ合い。
中々に僕好みの成長をしていると言えるだろう。
……こんな事を言うと大元であるエヴァが繁殖を仕掛けて来るので口を閉ざすが。
次に、ツクヨリスとレスタ。
暴食の力を持つツクヨは、もそもそと気怠げに進軍しつつ、周囲の魔力を吸収。風を使いレスタへ向けて高速で魔力弾の激流を射出し続けている。
その魔力弾には竜属性が宿り、その内幾らかは宙で小さな竜へと変貌しながら、ある者はひたすらに突っ込み、ある者はぐるりと弧を描いて回り込み、またある者は囲む様に鬱陶しいだけの魔弾をポコポコと放っている。さりげなく魔弾に戻って突っ込んで来たりするのがいやらしいポイントだ。
対するレスタは、それ等をミルちゃんの様に殴ったり蹴ったりして破壊し、時にブレスで一掃している。
だが、流石に数が多過ぎる為か、処理こそギリギリで間に合っている物の、間に合わせる為にブレスを吐けば拡散エネルギーを暴食に喰われ、防戦一方の様相を呈している。
流石のレスタと言えども暴食の働きには気付いている様で、極力ブレスは使わない様にしているが、このままではツクヨには勝てないだろう。
暴食は勿論消耗少なく、また竜化にしても、元々竜には竜属性の侵食による眷属の増加、即ち増殖系の力に適性がある為、大きな消耗にはなっていない。
唯一救いがあるとすれば、他同様に暴食の力を強く作動させる事はあまり出来ない様で、常態では極低レベルの吸収に留まっている事か。
その真髄が分解能力である為、吸収力自体が元々低いのもあるだろう。
まぁ、ひたすら処理し続けるのも大切な経験である。
最後に、ミコウサギと桃花。
ミコの持つ水、月、色欲の属性はどれも軍団生成に適した特性を持つ。
それによって生まれたのが、水の体を持つウサギの大群だ。
雑兵と言うにはやや強い、レベル200に迫る雑魚兎の群れ。その中に混じるのは、レベル500相当の大物兎である。
大きな槌を持つムキムキなウサギの様なナニカや、細身でウサギの耳らしき物が付いたナニカや、ローブの様な物をはためかせた大鎌を持つウサギの様なナニカ。
そんなウサギとナニカの群れに、桃花は怯む事なく刀を振るう。
縦横無尽に振るわれる刃、時に拳打、蹴撃。
舞い散る血桜もとい水飛沫はしっかり処理して再利用出来ない様にしているし、囲まれれば下り、誘導し、突進し、戦場全体をよく見えているのが分かる巧みな立ち回りを見せている。
グンハのおかげだ。或いはわざと立ち回りを必要とするシナリオを作ったと思わしきヒメのおかげ。
総エネルギー的にも技量的にも、大体適正な相手を采配出来たと言えよう。




