第19話 vs.原罪の魔女
第八位階下位
ルムは不死鳥の様に、もといゾンビの様に蘇った。
「……ス」
「アァン?」
「……ス……ロス……コロスコロスコロスコロスコロス」
「っ、やってみやがれカスがぁぁぁッ!!」
寧ろ増した憎しみにも似た何かにヒナは一瞬たじろぐも、咆哮を上げて殴り掛かった。
……思わぬ方向から思ったよりダメージを与えてしまって怯んだのだろう。
悪魔種なんて精霊の近似種だから、サイズ変更ぐらい本来自在だしね。
ルムは形に囚われてる所があるね。
闇属性を宿したヒナの一撃に対し、ルムは光と闇を重ね合わせ、その拳を受け止めると同時に握り潰さんと魔力を操る。
刹那——ヒナの手から光の属性が溢れ出した。
片手に宿されたそれは無調整で、相反する属性が衝突、勢いの劣る光属性がヒナとルム双方の闇と相克して消滅し、その代わりに量こそ減少したが質が微かに上昇した闇が、均衡を崩したルムの光を打ち消した。
今のは嫉妬の力が働いた様だ。能力は見た感じだと力のコピー。
「くっ」
「はんッ」
即座に放たれた蹴りを蹴りで受け止め、魔弾を魔弾で弾くも、ルムは少し劣勢だ。体格のせいだろう。
次の瞬間、組み合う手と足を通じてヒナから絡み付く様な闇が噴き出し、ルムを襲った。
「なんっ——ぐっ!?」
「おせぇんだよザコが!」
急速に押し負けたルムが蹴り飛ばされる。
今のは傲慢の力の様だ。
絡み付いた闇はルムの操魔力を妨害し、一方でヒナの能力をブーストしていた。
サンプルは未だ2つだが、ここまでで分かったのは、各種大罪の力が大罪の特性に沿ってプリセットされた物であると言う点。
要は、大罪属性の魔力を使って適性のある魔法を発動させているだけだ。
もっと言えば、単純な魔力で代替可能な部分もしっかり属性変換されているだけ。
その分、術式強度が高く、それ等を阻害するには相応の質が必要になる。
効果を限定する事で魂魄内にそれ専用の構造が構築されている為、ヒナの消耗は極めて少ない筈だ。
続けてヒナは、強欲と暴食の力を行使して大気中の魔力を搔き集めると共に、ハートと星のクッションを魔力分解した。
そっちより人形分解しろ。人形に気付いたうちの子やぬいぐるみ達が近付かない様にしてるのに気付け。
強欲の方はエネルギーの強制徴収。暴食はその分解と保存と見られる。
強欲に限っては、強度とその動きから見て、おそらくシドウ君の様に魂魄からスキルを強奪する事も可能だろう。
暴食の方は、分解能力が極めて高い為、並大抵のモノなら瞬時にエネルギー変換が可能だと思われる。
そんな大罪の力を用いて補充したエネルギーを使い——ヒナは僕を見上げた。
「……ちぇー、やっぱりだめかぁ」
「……そりゃね」
嫉妬によって模倣された銀の力は、配合こそそれに近しい物であったが、やはり似て非なる何かだった。
様々な属性で肉付けされた銀を構成する微粒因子の中核部分、その質がまるで足りていない様だ。
まぁ、簡単に模倣されてしまうなら、銀や金がそこまで神々に重要視される様な事は無いだろう。
……因子培養による増殖は可能だがね。
ヒナは生成した銀を操り、色欲を発動させて、周囲の人形を……何かした。
いや何かは分かってる。ただくっ付いてるそれを融合させてゴーレム化しただけだ。赤い糸で括り付けられてる人形を融合しただけだ。
発生したのは、身長の低い黒髪だったりピンクだったりの人型。性別は色々。やりたい放題だな。
それ等ゴーレムは、ルムがいる方へ一斉に駆け出した。
これで、ヒナの手札は全部だろう。
手札が知れた所でルムにはどうしようも無い物も多いけどね。
宙で体勢を整えたルムへ、無数のあまり強く無いゴーレムが踊り掛かる。
即座にルムは光の波動系魔法を放ち、ゴーレムの動きを止めた。
追撃にアロー系魔法を連射する。
ルムにしては連射速度が遅いが、1発1発の矢尻が直接光と闇の属性魔力を接続させた高度な代物で、威力が高い反面生成に手間が掛かる。
そしてゴーレム達は、それをする必要がある程度には強い。レベルにして400程度と言ったところか。
108体いるそれを時に射抜き、時に切断し、合間に飛来する魔弾を処理する。
どうやらヒナは、わざわざ危険に近付く愚を犯さず、堅実に魔力を削る作戦で行く様だ。
然もありなん。
ゴーレムが全滅すれば自然と近接戦闘になるだろうし、こっちは放っておこう。
僕はぬいぐるみ達の戦場へ視線を移した。




