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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十五節 先達の攻略

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第16話 vs.勇猛なる戦乙女

第八位階下位

 



 召喚されたアッセリアは、早速とばかりにプロメテウスを構える。


 対してサツキは、銘の知れぬ名剣を構えた。


 プロメテウスがヒヒイロカネなのに対し、相手は聖属性の神霊金属、セルケディアと光のシャスティアの合金。

 質はレベル相応であり、互角と言える。


 一見してサツキの剣に特殊性はない為、勝利の神性を宿すプロメテウスの方が少し上だ。


 魔力量は、アッセリアの方がレベル的に優る一方、サツキは防具の保持容量が多めでほぼ同等。


 素体の性能はアッセリアの方が上だが、重要な技量は間違いなくサツキの方が上だ。



 即ち——マリアvs.リオンと同じ状況と言える。


 違うのは、属性が相克している為、消耗が激しくなると予測される事。



 さぁ、アッセリア、サツキを越えて、強くなってね?





「胸を借りるっ!」

「来なさいっ!」



 一言交わし、戦いは始まった。


 正面から飛び掛かるアッセリアの袈裟懸けを、サツキは軽く受け、鍔迫り合いをする。

 しかし、肉体スペックに差がある為、単純な力比べが続けばその分だけサツキは不利となって行く。


 それが分かっているが故か、お互い剣を弾き合い、剣戟の音が鳴り響く。


 方や剣士として順当に、方や格上から技を学ぶ為。



「へぇ、やる気ねっ」

「当然っ!」



 激しい鉄の嵐の中で、両者は口端を持ち上げる。


 上段、袈裟、薙ぎ、逆袈裟、それに類する細かな動作。単純な剣術だけでなく立ち回り、位置取り、デコイ等による不意の突き方、体術の折り込み。

 僅か数瞬の攻防で、凡ゆる技術が衝突し、然ながら訓示する様に丁寧に振るわれるそれらを、アッセリアは実直に、着実に習得して行く。



「これはどうっ?」

「っ!」



 言うや、同時に5つの刃がアッセリアを襲う。


 デコイと隠密を駆使した攻撃だ。どれも本物に見えるが為に、サツキが複数重なって見える。

 唐竹割りしているサツキが本物だが、幻影に本物を乗せたり、わざと強い気をデコイに宿してミスリードをしたり、何だったら不可知化して意識の外を狙ったりと、様々な手札が考えられる。


 瞬間の判断力が物を言う近接戦闘では、極めて高精度な看破能力が求められる。

 一方で、ここまで精巧な幻影を見せるには相応の属性力を練らなければならないし、それを同時並行で展開、操作するには相応の消耗を強いられるだろう。


 アッセリアは即座の判断で袈裟懸け、逆袈裟、横薙ぎのデコイにギリギリ対処出来る場所に剣を置き、喉を狙った突きのデコイを避け、上段からの振り下ろしで首から胸部に掛けてをバッサリやられた。

 ……完全に誘導された結果である。


 なまじ一瞬に思考出来る能力があったが為だ。アッセリアも戦闘経験はそれなりにあるから、直感に従っていれば防げただろう。

 もしくはもっと思考し、相手の考えまで至れれば、唐竹割りが本命であると見抜けた筈だ。


 ……お手本みたいな攻撃だしね。



「これが常盤剣術奥の技、三の型、気先剣。それから裏の技、三の型、鬼千剣……の応用技よ」

「常盤って人の名前?」

「……前の苗字」



 戦闘中に照れるな。


 アッセリアは即座に傷を再生させ、サツキへ薙ぎ払いを放った。


 その剣は死属性と陽炎を纏い、3つに分裂して見える。

 精度が低いし来る方向が同じだから大した事ないが。


 サツキはそれを受け流し、するりと軽くアッセリアの腕を切り落とす。


 直ぐ様返す刃で袈裟懸けと逆袈裟を放ち、アッセリアは袈裟懸けを刃先で対応、逆袈裟は柄で受け止めた。


 そのままサツキの剣を掴んで止め、プロメテウスを振り下ろす。


 刹那——サツキの腕とプロメテウスが切り結んだ。



「……奥の技、一の型、破硬剣。もしくは裏の技、一の型、覇光剣。の応用。単純な強化付与ね」



 そんな事を言いつつサツキは剣を捨てて一振り腕刃を振るう。

 対してアッセリアは、急遽腕に斬気を通し、その腕刃を受け止めた。


 サツキはそのまま両腕を使い、アッセリアの首目掛けて抱き締める様に、または挟み込む様に腕刃を振るう。


 そのガラ空きの胴へアッセリアの刃が迫り——



「っ!」



 ——弾かれる。



「単純な強化付与と言ったわ」



 体の何処であろうと刃化くらい出来るぞと種明かししつつ、その両指がアッセリアの首に沈み——



「ふふ」

「なんのっ……!」



 ——半ばで止まる。


 ギリギリで強化を間に合わせたからだ。


 まぁ、なんだかんだ言って強化付与なんかは濃度を濃くする分再利用不可な魔力を多くなってコストが掛かるし、連用は出来ない。

 部位によってはくっつけ直したり再構築する方が楽だったりするし、受けに使う分には選択肢の一つとしてあって良いだろう。


 ……その点サンディアは再生力や能力的に部位毎の差異が極めて少ないから、受けてしまった方が良いパターンも多く、一方で再生速度の都合上強化して受け止めてからの虚を突く一撃も出来る。強い訳である。





 そんなこんなで、順当な切り合い、時折訓示する様な常盤剣術、様々な技を織り交ぜた剣技の衝突。激しい戦闘が続き、激突の衝撃波や受け流しによる斬撃が荒野に斬痕を刻む。


 戦いは時を追う毎にヒートアップし、それと同時により精巧になって、2人は然ながら剣舞を踊るが如し。

 和澄で言う幻剣や迅斬術、ヴァルトラの使った甲刃剣の様な防御術、各種属性剣等々、技の見本市とも言える剣技をぶつけ合い、アッセリアは技量をメキメキと上げた。


 辺りを吹き荒れる暴風は、この閉ざされた荒野でいつしか螺旋を描き、竜巻となって砂塵を巻き上げる。


 そんな激闘は、唐突に終わりを迎えた。


 両者剣を構え、彼女等にとってはほんの微かな距離を空け、ピタリと静止する。



「……」

「……」



 言葉は無い。


 最早語り尽くしたと言わんばかりに、まるで示し合わせたかの様に、2人は剣を掲げた。


 研ぎ澄まされた斬気が剣に宿り、陽炎の様に空間が歪む。



 果たして——二対の閃光は放たれた。



 射出と同時に衝突した閃光、それは剣技の果て、断絶斬なる名ばかりが残る絶技の斬撃。


 ヴァルトラの放ったそれよりも更に強大な質を内包する2つの斬撃は、衝突と同時に質で劣るアッセリアの斬撃が消え、直撃。


 アッセリアは防御も何も出来なかったが、プロメテウスが庇った様で、辛くも両断は免れた。

 弾き飛ばされたアッセリアは、荒野を何度も跳ねて転がり、暫くして停止した。


 死んではいないだろうが、マリア閃光剣とは質が違う。再生には多少時間が掛かるだろう。


 それよりも、問題は2つの斬撃の衝突地点にあった。



「ふむ」

「あらら」



 剣を支えに立っているサツキは、それを見てほんの少しだけ眉根を寄せた。


 斬撃の衝突地点、そこには——夜空と黄金の月が見えていた。


 正確には、菱形に近い楕円の形で空間が切れている。



「思ってたより壁が薄かったみたい。設計ミスね」

「ふむふむ」



 つまり、スペック的には断絶斬1発だったら問題なかったが、2発分が交錯した事でハサミで切る様に空間が切れてしまったと。

 即ち、断絶斬とはそのものズバリ空間を断ち切る斬撃であり、そしておそらくその斬撃は例の狭間に到達するのではないだろうが?


 そんな事が起きれば高濃度魔力が流入し世界そのものが変質するし、何だったら断絶地点周辺の物質、生命が膨大且つ高質の魔力を浴びて崩壊、暴走するだろう。


 近付いて良く見ると、反対側で乱気流が発生しているのが分かった。

 空間が裂けるに際して、幾らかの斬気が流出したのだろう。


 また、空間の裂け目は極ゆっくりと塞がり始めている。


 空間と空間には微かに間が空いている



「放っておけば塞がる……筈よ」

「ふむ?」



 先が見通せない隙間だ。何処までも繋がっているが故に何も無い様に見えるのだろう。

 厚紙程度の隙間に爪を差し込んでみると、確かな弾力、もとい斥力。


 これが壁とやらだろう。濃密且つ高質な空間属性で構成されている。

 空間魔法の空間拡張と原理上は同じだが、質がまるで異なる。真気ないし神気で構成されている様だ。


 斥力は壁がくっ付こうとする力であると思われ、この壁が厚ければ厚い程その再生速度は早まると考えられる。


 空間跳躍はこの何処にでもあり、何処にでも繋がる壁を歪ませる事で起こせる事象だ。

 ただしその歪みは極表面的な物で、世界と世界の壁を貫く程では無い。


 一方で、魔界や天界を隔てている壁は、おそらく世界間を隔てている壁よりも薄いと考えられる。


 世界間転移を視野に入れて、魔界や天界から見る世界の壁の研究をタスクに入れておこう。



 あっち側の月がキラキラと輝いて、降りてきた粒子が壁の再生を助ける。



「……」



 見る見る内に塞がっていくそれを見て、僕ははたと思い至り、閉まる直前に腕を突っ込んだ。


 刹那——腕が弾かれる。



「っ……あんたっ……!」

「ふむふむ」

「……幾ら興味があるからってそんな事……良くやるわね……? せめて道具使おうって思わない訳っ?」

「いやなに、せっかくだから肌で感じようと思って」

「ふぅん……」



 弾かれると言うか……押し出される様に弾かれた感じだ。

 この感覚には覚えがある。フィールド制限に押し出された時だ。


 押し出された理由は、さて…………魂がある方に引き戻したと考えるべきか?

 壁が何処にでもあるとして、魂があればその部分には微かでも歪みが生じている筈だ。


 転生の原理上、魂が歪みを引き起こさないと、開かれていない厚い壁の中を移動する事は出来ない。

 魂が壁を越えられるなら、魂のある方に僕の魂と繋がる腕が引き戻されるのは極自然な事だ。でないと魂がその形を保ったまま壁を越える事は出来ない。


 歪みがある方へ、即ち魂がある方へ腕は引き戻されたのだろう。


 問題は……魂がどう言う原理で空間に歪みを引き起こすのか分からない事だ。

 魔力が歪みを起こすなら、狭間の魔力はそれを引き起こすのに十分な筈だ。


 そもそも……狭間とは一体……? 何故魂はそこに引き寄せられる? 何故魂はそこから世界へ落ちる? その挙動から見て狭間と壁が異なる性質を持つのは明らかだ。狭間には神気が満ちていると聞く、だが本当に狭間にあるのはそれだけか? もっと別の——



《【運命(ディスティニー)クエスト】『夢現帝の花嫁:勇猛なる戦乙女』をクリアしました》



 ——ん?


 振り返った先には、倒れ伏すアッセリアと、半ばまで袈裟に切り裂かれ、プロメテウスが刺さったままのサツキがいた。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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