第22話 情報収集
第四位階上位
さて、次は誰とやろうかと周りを見渡すと、ちょうどリッドが森を抜けたのがわかった。
どうやらもう直ぐ到着らしい。
バルコニーの手摺から乗り出して前方を見ると、王都にある外壁の半分くらいの大きさの壁が見えて来た。
その上にいる兵士さんに手を振っておく。
「皆、もう直ぐ到着だよ」
◇
リッドを壁の横に停車させ、全員が降りたのを確認してから小型化させる。
皆は完全武装済み、洞窟に進む気満々である。
門番のおじさんに挨拶してから街の中に入る。
「ふーん、広いね」
鉱山街は街の規模に比べて空き地が多く、何処と無く閑散として見える。
事前情報によると、山の麓に鍛冶屋が多く、王都側には宿屋が多い、後は食事処や一部の商店が中央付近にあり、地図から見て西側に共同墓地とスラムがあるらしい。
領主館はその真逆。
鉱山攻略の為に予定している日取りは、今日と明日。
明後日は王城で祝宴なので、明日の夕食時には王都へ帰るつもりだ。
取り敢えず今日の夕食時に集合して、それぞれが得た情報を報告する。
「ここからは各自解散、時間になったら僕が連絡するから、それまでは自由に行動してね?」
そう声をかけると、洞窟がある方へと進んで行く皆。
妹組にはうさーずを。
タク達にはメロットとレイエル、リッドを。
セイトとアランのパーティーにはネロとスノーウルフロード、そして白雪をつけた。
白雪は最後まで渋っていたが、撫でると、ちゃんとわかってくれた。
僕はウルルと一緒に街の探索である。
尚、他の配下は大きさが大きさなので本の中でお留守番である。
◇
先ず最初に向かうのは、ギルド。
先の大戦で壊滅しかけたとは言え、やはり一定の信頼は残っている様なので、ある程度の情報が集積されている事は間違いない。
場所は土地が安い西区、その中では比較的マシな街の真ん中に近い所らしい。
早速ウルルに騎乗、出発する。
「ウルル、ゴー」
「ウォン!」
ギルドに到着した。
王都のギルドはみすぼらしかったが、ここのギルドは比較的綺麗に掃除されている。
雑草も生えていないし、何より退廃的な空気が無い。
ギルドが儲かってるって事かな?
内装は、左手側に酒場、右手側に依頼板、奥にカウンターがあり、左手奥に階段、右手奥に外へ繋がる門がある。
酒場では、二人の女性がパンケーキの様な物を食べており、ウエイトレスの女性と楽しそうに談笑している。
カウンターには、王都の本部の人と違ってフサフサの目付きが悪いおじさんとニコニコと微笑んでいるお姉さんがいて、お姉さんの方に何人かの冒険者が列をなしている。担当が違うのかな?
取り敢えず、ウルルを連れて人の少ない依頼板の方へ行く。
依頼板の近くでは、ギルドの正装みたいなのを着た少女が箒を片手に依頼書の整理をしていた。
僕より小さいその少女は、依頼書を整理するには絶望的に身長が足りていない。
それはそうと、手前側にある、上にEFと書かれた掲示板を見てみる。
「ふむ」
どうやら、EFの掲示板は街の中でやる様な依頼が貼られているらしい。
廃墟の解体や荷物の運搬、孤児院の修繕の依頼があり、一番報酬が多いのは採掘の依頼だった。
僕がそれを見ていると、幼女が慌てた様に採掘依頼を掻っ攫って行った。
……身長が足りないので何度も跳躍してからだが。
続いて、その隣にあったCDの掲示板を見ると、獣の肉を納品する依頼や護衛の依頼があった。
それらの一番下には坑道に現れた魔物の調査・討伐の依頼がある。
さっきの幼女の奇行はこれが理由らしい。
張り替えの途中だったのだろう。
調査・討伐の依頼人は領主、クリュス・シュタール子爵。
中々の高額である。やはり鉱山街と言われるだけあり、鉱石が採掘出来なければ領主としては大打撃なのだろう。
兵士を派遣すれば良いのでは? とも思ったが、大戦の影響で戦える人材が殆ど居なくなってしまったせいで、ギルドに頼るしか無いのだろう。
しかし、ギルドの中を見回すが、強そうなのは受付のおじさんだけ、それも、良く見ると隻腕である。
それ以外の冒険者の人は、40代くらいのおじさん三人のパーティーが少し強そうだがそれ以外は全員若手、言うなれば弱そうである。
更に分かりやすく言うと、若手の弱そうな連中の中にいるおじさんパーティーは『あぁ、他より少し強いな』とわかる程度だ。つまり弱そう。
鉱山攻略の一助になるかもしれないので、この依頼は受けるべきだろう。
依頼書を掲示板から剥がし、空いているおじさんの所に行く。
「こんにちは」
「あ? ああ、領主の坊主の依頼か。良し、行ってこい」
「こら! お父さん! ちゃんと手続きしないと駄目でしょ!!」
適当な事を言う隻腕おじさんに隣の受付の美人さんが物申した。どうやら親子で受付してるらしい。
「ちっ、良いじゃねぇか。ちょうど使えそうな人材が来たんだぜ?」
「ちっ、じゃないわよ! 領主様の御依頼なんだから! ちゃんと信頼出来る人に任せないと駄目でしょ!! ……あ、べ、別に貴方が信頼出来ないって言ってる訳じゃ無いのよ?」
「言ってるじゃねぇか」
「あ゛あ゛?」
「……」
親子漫才かな?
この軽い騒動が、ギルド内の注目を集めてしまった様で、ウルルを見た若手の冒険者達が悲鳴を上げて、あろう事か抜剣しよった。
それに触発された他の冒険者達も各々の得物を構え、ギルド内に緊張が走った。
「信頼を証明するにはどうすれば良いのかな?」
「ああ、ギルドカード、持ってないのか?」
「あぁ、そう言う感じの……持ってないよ」
依頼板の幼女が慌てて受付の中に走って行き、それをウルルに気付いて後退った受付のお姉さんが抱き締める。
酒場でパンケーキを食べていたお姉さん達も、片方は弓を背負ってナイフを抜いているし、もう片方は長めの直剣を抜いてウエイトレスさんを守る様に前に出ている。
「持ってねぇのかよ……じゃあ登録料、銀貨一枚だ」
「はい」
「あいよ。じゃあこの紙に、なんだ、色々書け」
「はーい」
冒険者達は、武器を抜いた物の、ウルルに襲い掛かる様な事はせず、ウルルも気付いているけど素知らぬ顔だ。
出された羽ペンを持ち、記入内容を確認する。
内容は、名前、主な使用武器、その他。随分と記入欄が少ないが、まぁ良いだろう。
取り敢えずスノーモードで行こう。
「はい、終わりました」
「おう。えぇ、名前はスノー、武器は鎚、短剣か。良し、じゃあ最後にこれだ、一応規則なんでな」
そう言って隻腕おじさんが受付の下から取り出したのは、水晶玉。
手を乗せる様に顎をしゃくって指し示して来たので、魔力の気配を探りつつ、手を乗せて見た。
少々魔力を吸われた後、何かの魔法が発動した様だ。
水晶玉に特に変化は無いが、この魔法の根本的な所が、清浄なる武器の封印と似通っていて、何やら一定の魔力の質を持つ者に反応する様になっているらしい。
「良し、それじゃあこれがお前のギルドカードだ」
「はい、ありがとうございます」
隻腕おじさんはまたもや受付の下から木製のカードを取り出し、水晶玉にちょん、と当てた後に僕に手渡して来た。
カードには大きく、スノー、F、と書かれている。
「ギルドの規則の説明をするぞ?」
「拝聴します」
「お、おう……えー、なんだ、ギルド員同士の私闘の禁止。えー…………迷惑行為の禁止、破ったら罰金、最悪除名。良く覚えとけよ?」
「はい、分かりました。自らの正義に従って行動せよ。と、言う事ですね?」
「おう、良くわかってんじゃねぇか」
まぁ、取り敢えず、問題行動をしなければ良いと言う事だろう。
僕としても、特に問題を起こすつもりは無いので、問題なかろう。
「次に依頼の説明をするぜ!」
「はい」
何やら乗ってきたらしい隻腕おじさん。
未だに緊張状態が続くギルド内で、ギルド講座《簡略版》が始まった。




