第13話 戦場へ
第八位階下位
昼食を摂り、十分な休憩を経て、鍛錬島のクエストクリアに向かった。
今回の目標は、夢現の帝王。
何が待っているやら楽しみだ。
◇
街から離れた山の展望台。
街を一望出来るそこにあった古いベンチの模様の中に、迷宮の入り口はあった。
陽炎を纏う誰かの背が描かれた六角プレートに触れると、世界はパッと切り替わる。
現れたのは夜空。
満天の星に一際輝く金の月。視線を下ろせば星々に劣らない電気の灯りが地上を彩っていた。
知らない街だ。周囲の木々や展望台、ベンチこそ何も変わらないが、鍛錬島を模した物ではなく、未知の異界を模した世界である。
そんな世界に、燦々と輝くあまりに大きな金の明月と、天へ向かって伸びる半透明な階段がある。
これがこの迷宮の正規ルートだろう。
じゃあ街に行ってみようかなと思いこそすれ、フィールド制限で行けない事もないが行けないし、良く見ると街はミニチュアのハリボテで、なんなら遠くの木々や山や海なんかも上手く作られたミニチュアだ。
一から作れるとなると、労力よりも必要魔力が少ない方が良いのだろう。
その点環境迷宮は外部までしっかり作られてるから、ある意味無駄とも言える。
取り敢えず階段に足を踏み入れる。
少し進むと、月からキラキラと光の粒子が舞い降りて、道の先に小さな広間が出来た。
中央には六角プレートがあり、描かれているのは先と同じ後ろ姿。
そこから分かるのは、機械的な鎧を纏っている事と長い髪を一つに纏めている事だけだ。
先に進む道も無いし、これを先にクリアしろと言う事なのだろう。
早速触れてみる。
先と同じ様にパッと世界が切り替わり、視界に広がったのは真っ暗で黒い空間。
巨大な円筒状の広間で、天井は高いが光源は無い。
特に何かがある訳でも無いだだっ広い空間の真ん中に、1人の女が立っていた。
見た目は20に行ってないくらいか、様々な機構が取り付けられた機械的な鎧に身を包み、髪は長い茶髪を一纏めにしている。
一見エヴァっぽい装備の相手に対し誰をだそうかと考えつつ様子を伺っていると、唐突に地面が発光した。
青白い光が円環を描き、波紋の様に広がって行く。
それらの光は円筒の全体に行き渡った後、広間が見通せる程度の青と白の光源を残して停止した。
女はバイザーによって口元しか見えない為、どんな表情をしているかは窺い知れない。
しかし、にこりと微笑んだのは分かった。
「こんにちは、はじめまして」
「うん、はじめまして」
「やがて義母様となる方、私の名前はマリアと言います。どうぞよろしく」
「うむ、よろしく」
……義母様となる方……? ……金の神は誰かと子供を作った訳では無いらしいし、多分ダイヤの王みたいな分裂体が転生した個体の妻と言う事か?
「因みに金の因子を継ぐ者は私の姉に当たります」
「ふむ?」
それはまた……珍しい、のかな?
「……ナンパなの?」
「そうですね……人垂らしと言うのが正しいかと」
「ふんむ……」
因子は薄いのかな?
「今回は会える?」
「見るだけと言っていました」
マリアは指で天を指す。そこにはいつのまにか黄金の月が輝いていた。
然もありなん、正しく目であろう。僕は月に向かって手を振った。
すると月から金色の粒子が発生し、キラキラと僕に降り掛かる。
仄温かいそれを取り込んだ所で、マリアと向き合う。
藤堂 真里亞の幻影 LV650
レベルこそ600代だが、おそらく亜神級である事と装備を考慮し、主に神気系統に制限があるであろう事も考えると、実質戦闘力は700代。
機神級は……レベルこそ750だったけど実質800クラスなので、機神級とは言えないがその手前ぐらいの戦闘力はあるだろう。
武装は、エヴァの持つ麗震、振動するタイプの剣とは違った、刀身形成型の触れる物を蒸発させるタイプの剣に、体の各所に同仕込み刀。瞬間的に加速させるブースターもあちこちに付いており、銃身も多数仕込まれている。
拳や足、肘、頭部などは強固且つ衝撃耐性のある装備で、一見した所超近距離戦闘型と言える。
ブースターで接近戦に持ち込み、体術で隙を作り、射程が短いが必殺の威力を持つ剣で弱点を突き仕留めるスタイルだろう。
これを一方的に倒すには、速度で勝るだろうウルルや逃げ切れるだろうエヴァを出して消耗させるか、必殺の剣の射程では弱点に届かない巨獣型を出せば良い。
だが、それだと大した試練にならないので、超近接型には超近接型を出すべきだろう。
では誰を出すのか?
メロットは……多分一方的に勝つ。同じくシャルロッテも勝つだろう。レイ君は体術型じゃない上にまだ慣らし運転もしてないから勝てない。紅花はまだ修行が足りない。キース君も同じく。
良い感じなのは……ラース、ルーベル、リオン、ルム、アニス……と言った所か。
……ラース君は……速度的に多分勝てない。ルーベルは……速度で追い付くが技量が劣る。ルムは……良い経験にはなりそうだし成長はするだろうが……それよりもリオンやアニスの方が適正だろう。
そしてアニスとリオンを比べると……アニスは太陽神話からユース神の名を継承しており、日々体術を鍛えているが神性方面の修行は体術よりもユース神よりなので、リオンの方が適正だ。
リオンを召喚した。
「ねーちゃん!」
ぴょいんと抱き付いて来たそれを受け止め、もしゃもしゃと頭を撫でる。
「それじゃあマリア、この子と戦って欲しいな」
「はい、全力で行きますね」
「リオンも頑張って」
「うん! 頑張る!」
向日葵の笑顔を向けてくるリオン。
……一応自分で考えて行動出来る様に教育はしている筈だけど……ちょっとアホっぽいのは僕が側にいる所為だろうな。多分。




