第6話 楽園へ一歩
第八位階下位
やる事は多々あるが、取り敢えずアム達が戦闘の真っ只中と言う事で、僕は城内を彷徨く事にした。
戦場が見える様な場所はないかと思っての事だ。
暫しあっちこっちに移動し、ちょうどいい窓から外の様子を伺う。
気配とか音とかをまるで感じないが、見えて来たのは激戦の痕跡。
地面はあちこちが捲れ上がり、円形や線状に露出した大地の様相から、多彩な攻撃に晒されたのだと分かる。
その一方で、此方に背を向けるエイミーとアンジュは無傷であり、アンジュより後ろに戦いの爪痕は無く、そして相対する敵達は疲弊仕切った様子であった。
レベル500クラスの群れの攻撃にあってこの程度の被害で済んでいるのだから、多分エイミーが攻撃の殆どを空に受け流したり、アンジュが防いだり修復したりした後なのだろう。
そんな圧倒的な差が目に見える状況にあって、敵60人の戦意は衰えてこそいるが、武器を捨てる者も背を向ける者もいなかった。
何が彼等をこうも駆り立てているのだろうか? ……仕様と言われたら終いだが。
そんな戦場へ、リュカとアムがやって来た。
いよいよ終わりかと怯む敵方を他所に、これ見よがしに始まる檻の建設。
形が定まるに連れ、俄かに騒めきだす戦場。
逃げるべきか、死が迎えに来る最後の時まで戦うべきかを悩んでいたらしき彼等が逃走へ舵を切ろうと動いた刹那——エイミーが動いた。
地面が少し弾け、巻き上がる砂埃をアンジュが払う。そうやってる内に最前線にて敵の大将と思わしき若い槍持ちの男とエイミーが交錯した。
エイミーの瞬発力に辛うじて反応出来た彼は、咄嗟に槍を突き込む。
そんなヒョロ槍をエイミーは丁寧に裏拳で空へと受け流し、逆の手でガラ空きの鳩尾へボディブロー。
それだけでは飽き足らず、心臓部を平手で弾き、顎を薙ぐ様に払い、側頭部を蹴り飛ばした。
容赦の無い連撃に男が意識を飛ばす前に、エイミーは反応出来ていない他のアダムスへ向けて突撃。1人につき2箇所、的確に弱点を突き、コンマ秒の内に60人を殲滅した。
その勢いのままエイミーは非戦闘員の前へ突撃し、停止。何をするでもなくそれを見下ろす。
ある者はへたり込み、ある者は守る様に前に出る中、しかしエイミーは何のアクションも見せない。仁王立ちしたまま非戦闘員を見下ろしていた。
此処からではエイミーが何を見ているのか分からないが、確か目の前には赤子を抱えた女がいた筈だ。
◇
檻と家屋の仮建設は見る見る進み、木材や石材で檻と平家が建っていく。
また一方で壁の建設も始まり、エイミーを除いたアム達は忙しげだ。
件のエイミーは、檻の前で仁王立ちする仕事をしている。それ以外に出来ないとも言う。
非戦闘員はアンジュの説明を受け、作り立ての町の案内をされている。
守るべきモノが既に奪われてしまったとのだと気付いた時、檻に閉じ込められた戦士達の心中たるや哀れでならない。これがうちのやり方です。
そんなこんなであれこれ遠隔で作業を進め、待つ事暫く。アムが報告にやって来た。
「……我が主。新しく人手が80人分増えた」
「その内まともに運用出来るのは?」
「……70人前後」
赤子や老人を除いた数だ、まぁそんな物だろう。
「どの様な用途に使える?」
「……城以外の凡ゆる事に運用可能。城にはアダムカドモンになれたら入れる」
「ふむ……じゃあ方向性は僕が決めるから運用はアムがやってくれる?」
「……分かった」
さてさて、ならばどうしようか? 差し当たり農業は進めるとして、後は狩りと修行……と探索か?
「……家畜の確保は可能?」
「……森に家畜化出来そうな獣がいるらしい。よって可能」
「ふむ……なら農業の準備をするとして、丁度いい種に当てはある?」
「……平原では薬草、森では野菜が取れる」
「それらを僕が持ち込む事は可能?」
「……それも可」
まぁ取り敢えず此方で出来るのなら此方でやって貰おうかな。
あまりに不便な様なら持ち込む事としよう。
「城下の整備、外壁の設置、農業の準備、牧畜の準備、周辺の探索、実力不足であれば修行を付ける事。以上」
「…………我が主の御心のままに」
ちまちま指示を出して貰うという言い訳で僕とあっていたアムは、部下を持った以上それもままならず、少し寂しげである。
取り敢えず撫で回した。
全て任せられるからと言って様子見に来ない訳ではないからね。
……と言うか、分身を置いておきたいくらいなんだけどね。
ともあれ、前途多難だった楽園も人手を得、今後は素早く大きく発展していく……と良いな。
……仕様だから遅いと言われたらそれまでで、期待している僕としてはとっても悲しいのだが……暫くは注視しておこうか。




