第5話 失楽園に敵
第八位階下位
朝飯前にレイ君を落とし、ノーレルやミュリア、エルミェージュ達との食事会をセッティングしてから僕も朝食を頂いた。
そんなこんなをしつつ、幾つかの報告を処理した。
ヴァルハラは順調に強めの魔物や迷宮を倒して回っている。
他の子等も上位迷宮で狩りをする者や、自己鍛錬に励む者と僅かずつでも確かに成長している。
少し大きな動きがあったのが、プレイヤー達だ。
具体的にはコウキ達である。
イベントの構成に慣れた彼等は、イベントの帰還機能を利用して鍛錬島に戻り、2つの迷宮を踏破した。
クリアされたのは、山と湖の迷宮。
新たに開放されたのは、大山脈と大清水。
得られた物は、スキルポイント40P。ロジックポイント28P。1,100,000MC。聖銀の鎚矛。金剛鋼の大盾。
付与結晶で魔の障壁。絶護の光輝。スキル結晶は練魔耐性。仙耐性。所謂高濃度魔力への耐性スキルである。
どうやらコウキ達は、EPでポーション類を補給。そのブーストを受けて迷宮を攻略し、チケットとスキルポイントを確保して軍勢の強化をしつつ、よりEPも稼げる様にハイペースでレベリングと攻略を進めている様だ。
このまま行くと、今日中に後2つは迷宮を踏破出来るだろう。
稼ぎも微増である。
◇
獣人3人組がスライムの様に蕩けているのを見て来たり、仕事をバリバリ進める元王家や文官達を見て来たり、落ち着き始めた竜寝殿の情報を整理したり。
その他、新しい迷宮の様子見や、初期プレイヤー達の進行状況、新規プレイヤー達のレベリング状況、オムニメイガスの生徒達の様子見、フブキの報告、食事会を終えたノーレルやレイの訓練状況、タク達の進捗等、彼方此方に顔を出して来た。
余る演算力は、とある目的の為に純結晶作成に費やし、昼を回った所で、失楽園に赴いた。
玉座に降り立つや、直ぐにリアムがやって来る。
「……我が主。報告がある」
「そう、聞こうか」
やって来たアムを撫で、報告する気になるまで待つ。
暫し静かな時間が流れ、ふいにアムがピタリとくっ付いて来た所で、扉が開いた。
入って来たのは、リュカ。
「我等が主。アムが報告しない様だから僕が報告に来たよ」
「……帰れ」
「酷いなぁアムは」
「……これから我が主とお勤めをする所。リュカは邪魔」
仲良く言い合いを始める2人。僕は微笑み、張り付いてくるアムを抱きしめた。
「それじゃあ、今回はリュカから報告を聞こうかな?」
「わぁ……流石我等が主」
アムを片手で抱きしめ、頭や頬を撫でたりして甘やかす。
ただでさえ仕事に時間が掛かる仕様なのだから、効率的に進める為にも早く話をして欲しい物である。
「えーと……先ず、城の大体の整備が終わったよ。後はアップグレードとか壁を作ったりとかかな?」
「備えておくに越した事はない。壁は作っておこう」
「次に、エイミーが草原のボスを倒した事で探索出来る範囲が広がって、敵対氏族が城へ攻撃を仕掛けているよ」
「ふむ」
…………。
「今?」
「うん」
「おい」
「ふぎゅ」
甘えている場合かッ。
アムにヘッドロックをかましつつ、リュカに報告を促す。
「規模は?」
「老若男女ちょうど80人のアダムス。その内主に攻撃しているのは60人程で、子供や老人が後方に控えていたね」
「状況は?」
「今はエイミーが前に出てアンジュが援護をしているけど……まぁ敵じゃないかな? 取り敢えず敷地内に入れない様に突っぱねてる所だよ」
ふむ……アダムスって事は推定レベルが500〜600って所かな。
60人の攻撃をほぼエイミー単独で跳ね返せてるらしいし、多分500ちょっとがボリュームゾーンだろう。
つまり、いつでも制圧出来る状況だ。
「敵の目的は?」
「安住地を求めての事じゃないかな?」
「それはまた……どうして?」
出現する魔物なんて精々レベル100くらいの雑魚ばかりで、上がっても200くらいだろうに。
「……この世界のえぬぴーしー達は神が去ってから長いから、レベルが代を経る毎に下がる一方。と言う仕様」
「後はまぁ……普通はレベル100とは言え積極的に攻撃を仕掛けて来る敵が毎日の様に湧いて出ると疲弊すると思うよ」
「それもそうか」
まぁ、仕様だから攻めて来たのだろうが。
……もしそうじゃなかったら、この世界はなんなんだろうね?
「……殺害するなら簡単。捕虜にするなら牢屋が必要。捕虜を国民にするなら城下町が必要」
「じゃあ取り急ぎ牢屋と城下町を作って、その後に捕獲しよう」
戦力の拡充は何処でも必要な事だ。
「……飼うなら餌が必要。農業を行う為に貯水池と畑の作成を提案」
「当座はエイミーが持って来た肉で凌げるだろうし、人手があれば野生の果実や野菜を集める事も可能だよ」
「暫くはそれで凌ぎつつ、農業をやる方面で進めよう」
何か勝手に繁殖するとか言ってた気もするし。
「それじゃあ我等が主。行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
「……頑張ると良い」
「アムも来るんだよ」
「……我が主」
「行ってらっしゃい」
半端に甘えさせたからかもっと欲しいと言った様子のアムを、無慈悲な微笑みで送り出した。




