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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十四節 ルベリオン王国の攻略

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幕間 伝説は今

 



 レジャーとはとても思えない激戦と英雄譚の目撃者となり、通された情熱の太陽亭(インテンス・サン)と言う名のレストランで余韻に浸る。


 よもや、アレ程の規模の魔物が遊戯の為に供されるなどと……事実戦い、その行く末を見なければ、到底信じられない事だ。



「はぁ……」



 まるで世界が違う。


 もといた大迷宮ですら、この規模の襲撃を受ければ滅びかねない。


 桁違いの物量。桁違いの戦力。常軌を逸している。


 彼の賢神の試練とも比肩するコレが、たかが遊戯でしかないと言うのだから……。



 受け止めきれぬ現実を受け止めるべく、深く物思いにふけっていると、それはいつの間にか前に座っていた。



「ドラゴンステーキとプリンお願いしまーす」

「……同じ」

「……っ」



 青白い狼人とエルフの女。その顔には、はっきりと見覚えがある。



「あ、お久しぶりですノーレルさん」

「……久しぶり」

「あ、あぁ……」

「お変わりない様で安心しました」

「……お変わりない……?」



 ゴトッと重い音を立て、料理が並べられる。いや、今注文したばかりで……いや、今のは黒霧殿では……?



「あれ? ノーレルさんは注文しないんですか? 今ならただですよ?」

「……折角だから会ってこいとユキに言われた」

「あ、あぁ、うむ…………同じ物を頼む」



 そうだ。いる事は聞いていた。どの様な顛末を辿り、如何にして此処にいるのかも聞いた。


 しかし、実際に顔を合わせると、これほど懐かしいと思う物なのか。



「……」



 ゴトッと大きな肉が置かれる間も、言葉は出て来なかった。


 そう長い旅ではなかったが、確かに、後に七聖賢と呼ばれる我々は仲間であったらしい。

 ……と言うよりも俺が仲間だと思っていたか。


 王国に仕えた時……否、民の盾となると決めた時から、死ぬ覚悟は出来ていた。


 あの日、ナリファンと名乗る山羊頭の悪魔王と相対した時も、俺は此処で死ぬだろうと分かっていた。



 まるで夢を見ている様だった。


 見知らぬ薄暗闇で目覚め、周囲の魔物を蹴散らし己も魔物となった事を知り、そのまま闇を彷徨い、時折会う人から得た情報で長き時が経過した事を知って、それから……。


 ……そう、暗闇からふらりと、蒼銀の輝きが現れるその瞬間まで。



「冷めますよ?」

「……もぐもぐ?」

「あ、あぁ、頂こう」



 今はまた別の夢を見ている様な心持ちだが、それも押し込まれた情報を咀嚼して行く内に収まるだろう。


 今はただ、遥か遠い昔と同じ様に、仲間と共に夕餉を囲もう。





 なんだこれ、美味すぎる。



「だから伝承なんて当てにならないんですよ」

「そうか」

「……そう、1番酷いのはティカ」

「1番酷いのはラドさんですよ。セブムス出身のバルドのラドさんなんですから」

「そうだったな」

「……符号はする。ティカのミスはイミフ」

「それ言ったら私なんてミュイア・リーズベルトですからね? 別の誰かと混ざってますよ絶対」

「そうだな」



 竜がこれ程美味い物なのか……下処理やソースも相当に手間と金が掛かっている筈だ。

 例え王家でもこの様な品は出て来まい。


 敢えて言うならば少し量が少ないが……大して腹は減っていないし十分ではある。



「そう言えばノーレルさんは何の産まれですか? 甲殻持つ生物からの進化に見えますが」

「そうだな」

「……私はエルフ」

「エルは死んでないんだからそりゃあエルフですよ。因みに私は狼です。ユキさんに拾われなかったら普通に狼のまま生きて死んでいたでしょうね」

「そうか」



 プリンと言ったか、この滑らかな食感とじわりと広がる香ばしい甘み。

 満ちる力と微かな万能感。これも竜の素材を使っているな?



「聞いてます? ノーレルさーん?」

「勿論だ」

「……ノーレルは否定しているが美食家。美味しい物を食べる時は集中力がダンチ」

「受け応えはほぼ完璧なんですけどね? 心此処に無いですね?」



 茶もまた高価な代物だ。

 抜ける様な芳しい香りに仄かな苦味。淹れ方も微に入り細を穿つ様に完璧なのだろう。


 一息ついて、顔を上げる。



「……ようやく此方を向きましたか」

「いや、勿論聞いていた」

「……聞いてはいる。聞いては」

「名が上手く伝わっていないのは致し方あるまい。人がどれほど力を合わせて防備を固めようと、凡ゆる災禍その全てを退けられる訳では無い。書物が失われれば後に残るのは人の記憶のみ。歴史から立ち消えた英雄もさぞ多い事だろう」



 その点間違えているとは言え、成した偉業も名も残っているのだから、我々は幸運と言って良いだろう。

 ……それよりもこうして生きている事の方が幸運なのだろうが。



「後、俺は甲虫の産まれだ。どうやら迷宮の支配を受けていたらしいが、気付かぬ内に支配を脱していたらしい……人を手にかけなくて良かったと思った物だが……」

「分かります分かります。ここにいると人も獣も竜も精霊も悪魔も天使も全部同じ物だと思いますよね〜」

「……そう、ユキを前にしては全て赤子に等しい。パナイ」



 彼のお方にとって重要なのは働きのみであり、根本的に“誰か“と言う個人を必要としていない。

 それはあの方がただ御一人で全てを成せるからに他ならない。


 無限の世界に1人立つその姿は、しかし孤独では無く、ひたすらに孤高。


 然ながら大山と相対しているかの如き強固な信念、それを擁するのが小さな幼子の姿と言うのだから驚きだ。



「……あのお方は実際幾つなんだ?」

「ん? …………10歳くらいじゃないですか?」

「……エルフなら25くらい」



 聞いた話が確かなら、一応は人間の筈だ。



「……まぁ、俺程度が転生出来るのだ、彼のお方も偉大な何者かの転生者に違いあるまい」

「そうですねぇ……そう考えるとユキさんは……合法?」

「……?」



 何を問うているのかは分からないが、またぞろ色に塗れたくだらぬ事だとは分かる。


 ミュリアは相変わらずだな。



「……! ……変態?」

「え? ありがとうございます?」

「……頭打ち抜く?」

「ありがとうございます。出来れば手で」



 いや……随分と……未知の領域に堕ちている様だ。



「……助けて欲しい」

「……無茶を言ってくれる」



 許せ、エルミェージュ。俺にも守れぬ者はある。


 ミュリアに抱きつかれ、死んだ様な目で此方を見るエルミェージュから視線を逸らした。


 ……女子に対して行き過ぎてはいるが、これでミュリアは俺達の中でも1番情が深い。

 人の死に最も涙を流し、安寧の為に死に物狂いで修行する彼女だからこそ、俺は命をかけられた。


 他の者も同じだろう。


 いつかの様に馬鹿をやる2人を見て、皆が揃っていた昔を思い出す。

 今更どうしようもない郷愁の念……しかし、そうだな……2人も転生を果たしているのだ。



「案外……皆と再会出来るかも知れないな」



 いっそ相談してみるか?





「うん、それに関しては問題ない。強大な魂を持つ者は直ぐに分かるし、微小であってもなるべく魂魄は回収し精査する様に指示を出しているからね」



 ユキ様は微笑み、なんでも無い事の様にそう仰った。



「とは言え一応支配領域内の魂魄と配下全員の魂魄を再調査しておこう」

「手間をかける」

「構わないさ、ちょうど良い機会だからね。修行も兼ねて黒霧にやらせよう」

「承りました」



 さらっと言っているが、俺には想像もつかない程の労力があるに違いない。

 だが、彼女等にとってはさらっと言える程の瑣末事なのだろう。


 ユキ様は立ち上がると、執務机を迂回して俺の前に来る。



「ふむ」

「……なにか?」



 全身をくまなく見詰めるその視線に、居心地が悪いと言うか……何なのだ?



「試験的に防御系の術式を刻んでみたけど、その後どう?」

「あぁ、そうだな……魔道具や魔剣の類いを介さず、冗長な詠唱も不要。それでいて即座に大規模魔術が発動する。極めて使い勝手が良く優秀だ」

「うん。それなら続けて幾つかの術式の追加と貯蓄器官の設置を行おうか。武装はちょうどいいのがあるし、それをベースに強化した物を使おう。盾以外に欲しい武器は?」

「あ、あぁ、うむ……剣が欲しい。刃は長くなくて良い」

「ふむ。肉体的に単純な剣だと取り回しが難しいだろうし、疑似心器を作る式を魂の方に刻むか……黒霧、出来る?」

「愚問ですマイマスター」



 何やら俺にとって重要そうな事が次々に決まって行く。


 俺に分かる事は2つ。体と魂に手を入れられる事と、より強くなる事。

 言い知れぬ恐怖にも似た感覚は、俺がまだ彼女等を信じ切れていないからなのだろう。



「善は急げだ」

「直ぐに取り掛かりましょう」



 刹那、ぐにゃりと視界が歪んだ。


 何の抵抗も出来ぬまま、意識が闇に沈み行く。



 ……唐突過ぎる。もっと何か間隙と言うかだな。



「そう言うタマじゃないでしょ?」



 それもそうだが……。



 それを最後に、俺の意識は途絶えた。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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