第20話 双子と試合
第四位階上位
任務を遂行し、バルコニーに戻る。
アヤはケイの介抱に残った。
バルコニーでは、マガネがクリアに基本の動きを教え、センリがマヤに発展的な立ち回りを教えている。
一方では、ユリちゃんとミユウちゃんとユウミの三人が代わる代わる模擬戦をしており、もう一方ではタクがセイトとミサキを相手に、二対一で戦っていた。
「さて、キョウカ、リッカ、やろうか?」
「「ひゃひっ!?」」
僕は、半ば本気でぶつかり合いをしている双子に声を掛け、その間に割り込んだ。
惚けて動きが鈍った二人に先ずは一撃、容赦の無いデコピンをくらわせる。
「「あう!?」」
「ほら、やるよ?」
続け様にキョウカに足払いをかけ転がし、その上にリッカを投げ飛ばす。
身長が近いので、何かとやりやすい。
「きゃん!?」
「ふぎゅう」
そのまま飛び跳ねると、二人に目掛け床を踏み抜く様な勢いの踏み付けを放つ。
実戦となると不用意に地面から離れるのは悪手だが、今回の場合は武器も無いし、そもそも二人をその気にさせるのが目的なので問題ない。
双子は影が差すと同時に互いに足を押し合って左右に離脱した。
僕の踏み付けはバルコニーの床を踏み抜くにとどまる。
リッドには、事前に謝ってあるので問題無い。
因みに、決闘では無いので、当たれば普通に死ぬ一撃でもある。
キョウカとリッカは離脱後直ぐに跳ね起きると即座に攻勢に回った。
コンタクト一つ取らず、阿吽の呼吸で同時に襲いくる上段と下段の回し蹴りを、姿勢を低くして飛び跳ねる事で回避する。
この体の耐久力を考えると、両方当たっても何の問題も無いので、有効打を一撃でも貰ったら僕の負けである。
「「っ!」」
二人は着地直後の僕へ、回転の勢いを乗せ左右から挟み込む様に中段蹴りを放つ。
事前に予期していなければ直撃していたかもしれないその攻撃は、床にピタリと張り付く事で、長い髪を巻き込み空を切るに留まった。
足一本で立つ二人へ、両腕を伸ばし一回転する事で足払いをかける。
勿論、ただ倒れる程に二人は柔では無い。
「はぁっ!」
「せぇっ!」
地面に手をつき、独楽のように回転する二人。その足技に勢いが乗る前に、リッカの方へと組みつく。
「はわっ!?」
「ああっ!!」
体勢を崩されたリッカは、そのままであれば転倒し、僕が離脱する機会が生まれる筈だった。だが——
「む?」
——倒れるだけの筈だったリッカはしかし、思わぬ超反応を見せ、組みつく僕に全身で絡み付いて来た。
「ふへへ」
「ずるいっ!」
死なば諸共と言わんばかりに全力でしがみ付くリッカ。大腿筋が僕の首を抑えつけ、両腕は僕の腰をロックしている。
グッと押し付けられて呼吸が出来ない僕に対し、リッカはスカートに顔を押し付けているのでアソビがある。
リッカが大きく息を吸った。呼吸法の応用だろう、この後の絞め技で一気に僕の首を圧し折る為の前段階だ。
対処法は、力を入れる瞬間の、一瞬の緩みをついて離脱する事。
リッカの攻撃に備えていると、キョウカが飛び跳ねる音が聞こえた。
双子の事だから、僕が離脱した瞬間を狙って来るものと思ったのだが……。
何が原因か不明だが、開始早々に双子の連携が狂い始めたらしい。
何かに焦ったのか、キョウカの狙い自体も妙だ。
このままの軌道だと、リッカを掠めて着地するだけである。
悪いがこの隙は突かせて貰おう。
リッカが緩んだ瞬間にキョウカの攻撃軌道上にリッカをずらした。
「はへ、良いにお——げふぅっ!!?」
「あ」
吸い込んだ息を強制的に吐き出されるリッカ、これで戦闘不能だろう。
キョウカは普段ならこの後も難なく受け身を取れる筈なのに、酷く動揺している様だ。このままでは後頭部を強打、死に戻りの危機である。
「ほっ」
「はも?!」
仕方ないのでリッカの頭を両足で挟み込み、そこを起点に力を込める事で、一気にキョウカと地面の間に滑り込む。
キョウカを胴体で受け止めた、次の瞬間——
——今度はキョウカが超反応を見せ僕の上で一回転した。
下手に追撃されても僕の負けになるのでさっさと終わらせる事にする。
胸元にある頭を抑えつけ、一気に圧し折る!
……事はせず、ただそれが出来ますよ、と言えるだけの力を込める。
キョウカとリッカの両方を締め、これで僕の勝ちである。
「「すぅ、はぁ、すぅぅ〜〜!」」
「これで僕の勝ち、だね」
「「はぁ、……ま、まだ負けてない!」」
「むむ」
往生際悪くジタバタともがく二人を、今度はさらにきつく締める。
折る様な形では無いので、ただ強く圧迫しているだけだが。
折ろうとすればいつでも折れる。それが分からない双子では無い筈だ。
呼吸が苦しいのか大きく息を吸ったり吐いたりを繰り返す二人。確実にメニューのHPバーは減少している筈だが、見上げた根性である。
「すぅ〜、はぁ〜、ま、まだ負けてないから!」
「すぅ〜、はぁ〜、ま、まだ動けるから!」
「むぅ、じゃあ後五秒で脱出出来なかったら僕の勝ち、ね?」
「「すぅぅーーー、はぁ、すぅぅーーー!!」」
後五秒だと言うのに、もがくでもなく大きく呼吸を繰り返し始めた二人。どうした?
「ーー2、1、0! はい、僕の勝ち」
「「も、もう少し!」」
「……」
二人を解放すると、ポイッと転がした。
双子の連携が乱れなければ、もっと長く続いただろうに。
◇
極短い戦闘だったが、その中で一番問題だったのは、キョウカだろう。
折角リッカが類を見ない程の超反応で僕を捕まえたのに、キョウカがそれを台無しにしてしまった。
「——と言う訳、わかるかな? キョウカ」
「うっ、で、でも……」
僕の前に正座した二人に、今の戦いの良い点と悪い点を伝える。
褒められた筈のリッカも、やはり双子だからか、責められる形になって落ち込むキョウカを見て、困った顔をしている。
「……まぁでも、最後の反応はなかなか良かったよ」
「うぐっ」
双子のあの超反応。はたから見れば、僕の動き方と同じ様に見えた事だろう。
筋肉の動き方から予測したのか思考をトレースしたのかは知らないが、あの反応速度は中々の物だ。
ちゃんとフォローしたので落ち込んだ様子は無いが、何故か二人共バツが悪そうである。
まぁ、きっと、最後の最後で見せた往生際の悪さ。みっともないとも言えるそれを思っているのだろう。
さて、次は誰と試合おうか?




